「奈良教育大付属小いじめ事件」と「奈良教育大付属小不適切授業問題」
奈良教育大付属小不適切授業問題
また君が代問題かと思いきや…
2024年1月16日、「奈良教育大付属小の指導内容が不適切だった」というニュースが飛び込んできた。
【独自】必修の習字授業なく「君が代」指導もなし…国立奈良教育大付属小で不適切授業 検定教科書使われず学校教育法違反も Yahoo!ニュース FNNプライムオンライン (2024/1/16)
(これが初報、ニュース本体は掲載期間が終わっているようなのでアーカイブ)
上記記事のコメント欄もアーカイブが残っているようで…なかなか多様な意見が並んでいる。
奈良教育大学のWebサイトでも、2024-01-17 10:00に発表された調査報告を閲覧することができる。
かなり多岐にわたった指導要領からの逸脱、その他法規からの逸脱があった模様。
毛筆の指導をせず
道徳の授業をやらず「全校集会」でやったことに
年次違い指導が多発(理科で多い)
授業時数不足
君が代の指導不足
職員会議が最高議決機関状態
回復措置として補習等を…というが、これが長年続いていたとなると、過年度卒業生が心配になる話でもある。
奈良教育大付属小の過去文献を漁ってみると、「職員会議が最高議決機関状態」であることが記述されているものが発見できた。
この二つの資料からだけ考えても、「職員会議が最高議決機関状態」は数十年以上続いていた可能性は極めて高いと思われる。
全国の国立学校園に点検の指示が
そして2024年1月19日には、文部科学大臣から全国の国立学校園に対して点検の指示が出される。
校長の小谷氏の語る、調査に至るまでの経緯
問題になった経緯については2023年度いっぱいで移動になった小谷校長が、朝日新聞の取材に応える形で語っている。(下記:2024年4月4日の記事)
※「学習指導要領」と「学習指導要領解説」は別のものなので念のため。
「学習指導要領」と「学習指導要領解説」をまぜこぜにしてしまうと小谷氏の話がわけわからなくなる。小谷氏の言ってるのは「前者」だ。
「学習指導要領」も「学習指導要領解説」も、文科省のサイトに行けば公開されている。
平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)
https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_01.pdf
この記事の小谷氏の発言をすこし追っていこう。
これ、「知らされていない」というのであれば問題ではないだろうか?
義務教育を行う国公立の学校であれば「学習指導要領には沿っている」ことは期待されているだろう。
これも、子どもも親も気づきようはないだろう。
児童会ページに見える「集団主義教育」
これは、どうみても1960-70年代に一世を風靡し「吊し上げ学級会」をはびこらせた、全生研方式「集団主義教育」の焼き直しではないだろうか?
「要求」を「願い」に書き換えただけただけという気がする。
奈良教育大学付属小を責めるな言説
さまざまなロジックが飛び出す
もっとも早くに奈良教育大付属小を擁護する発言をしていたのは、教育学者の末冨芳氏ではないだろうか。初報から数時間である。
「道徳授業を廃して集会に振り替える」というのは、戦後の教育の動きでいえば、日教組の「特設道徳反対闘争」あたりにルーツを見ることができるのでとても政治的動きであるし、「職員会議が最高議決機関」というのも、「職場の民主化(職員室の教組分会化)」であり日教組の闘争方針のひとつであったので古典的な政治的動きである。
「子どもたちを政治的対立に巻き込むことは避けるべき」というのは、そもそも成立しえない論理だろう。
ともあれ、末冨氏の見解は短い中にいろいろ詰まっている。
昨今よく言われる
「社会(学校)の右傾化」
「学校・教師を追い詰めるな」
「教育課程編成の自由を」
「子どもたちにゆとりを」
「道徳や日の丸・君が代の押し付けは政治的」
などが詰まっている。
続いて出てきたのが東北大の学者先生からの「これ読め」である。
ヤフーエキスパート、前屋毅氏の大量の記事から
ずいぶんと熱心に取材され沢山書かれたものだ…、と思う。緊急出版でもできそうな勢いである。擁護側の論点はほぼ出尽くしているのではないだろうか?
2024年1月20日
2024年3月6日 川地亜弥子氏(神戸大准教授)インタビュー
2024年3月11日 片岡洋子氏(千葉大名誉教授)インタビュー
2024年3月15日 「守る会」の中心メンバーである山﨑洋介氏(元教員)インタビュー
2024年3月22日 折出健二氏(愛知教育大学名誉教授)インタビュー
2024年3月30日3/30 中島哲彦氏(名古屋大名誉教授)インタビュー
2024年4月1日 教員Aさんへのインタビュー
2024年3月30日 保護者Bさんへのインタビュー
「奈良教育大学付属小を守る会(みんなのねがいでつくる学校 応援団)の活動と周辺
なんらかの抗議運動に繋げたいと思っていた方はいたようで「みんなのねがいでつくる学校応援団(奈良教育大付属小を守る会)」Webサイトが立ち上がた模様。
どういうわけだか一番最初の記事が「あいち民研」の緊急声明である。
そして2月14日には応援団の「呼びかけ人」が掲載されだす。
そして、出向人事の方向性が発表されるや反発も
どんな団体が反発しているのかと思ったので、調べてみた。
全教と日教組と9条平和系と歌声運動系と革新運動系の合体ですか?といった感じ。
子どもと教科書奈良ネット21 →紹介されていたページ(JCP奈良)
奈良市教職員組 (全教系のようである)
奈良市公立学校教職員組合(日教組奈良市)(日教組系の組合)
命と平和を考える会
奈良県労働者交流協議会
沖縄の高江・辺野古につながる奈良の会
プラットホーム奈良 →代表さんが登場していた(共同テーブル)
天理市憲法を生かす会
ℑ女性会議奈良
近代史を学ぶ会
生駒革新懇 →全国革新懇の生駒支部の模様
わかったとこだけリンクを貼るという形にしてあるので、直に確認していただければと思う。
他人様のお子さんを預かる学校でガバナンス不良…ということになれば致し方ないと思うのだが…、反発が急激に膨れ上がったようだ。
諸団体の声明
全生研常任委員会 声明(2024.3.6)
個人で書かれていた方もいた。
教育研究者有志の声明は教育オープンレター?
錚々たる呼びかけ人のお歴々である。
植田健男(名古屋大学名誉教授)折出健二(愛知教育大学名誉教授)鹿毛雅治(慶應義塾大学教授)勝野正章(東京大学教授)川地亜弥子(神戸大学准教授)片岡洋子(千葉大学名誉教授)小国喜弘(東京大学教授)小玉重夫(東京大学教授)子安潤(中部大学教授)澤田稔(上智大学教授)清水睦美(日本女子大学教授)高橋哲 (大阪大学准教授) 中嶋哲彦(愛知工業大学教授)中村雅子(桜美林大学教授)広田照幸(日本大学教授)本田伊克(宮城教育大学教授) 松下佳代(京都大学教授)
今の教育学の主流派が勢ぞろいといった様相だ。
そして500名もの賛同者(ほぼ研究者)が集まった模様である。
書いてあることは「冷静な議論・判断をもとめます」ではあるが、
「子ども達のためなんだから、大学の研究者も関わってる奈良教育大付属小のような自主編成にケチをつけるな」
にしかなってないように思える。
賛同者…全国にたくさんいらっしゃるようで…。
さて、こうなると全国の教育学部、教員養成課程で、この先生達の見解と対立するような研究は育まれうるのであろうか?
少し多様性の面において心配になってしまう。
共産党衆議院議員による国会質問もあったようだ。
まあ、この辺の経緯は明らかにしてほしいところであるが、『職員会議が最高議決機関』というのは、ガバナンス不良の元であるので、それが長年続いていたということであれば、全員変えるくらいの勢いで変革しないと無理ではないかとも思う。
結局のところ4月1日で出向になったのは3名にとどまったようだ。
3月下旬には奈良教育大付属小を応援する緊急出版も
「学級崩壊請負人」「ほめ言葉のシャワー」で有名な菊池省三氏と、教員向け書籍とプリント教材の会社を営む元教員、原田善造氏による「奈良教育大付属小の豊かな教育」を紹介する書籍が緊急出版された。
『ネットニュースだけではわからない 子どもを主人公にした奈良教育大学附属小学校の豊かな教育 菊池省三 原田善造 喜楽研 2024』
タイトルがやけに長い…のはまあともかく、どれだけネットニュースではわからない濃い内容か?と思って、購入して読んでみた。
これまで世間からはわかりにくかった「教員サークルと教材出版社」の関係が透けて見えたのは、確かに「ネットニュースではわからない」部分だったろう(知ってたけど)。
1960年代半ばには「職員会議が最高議決機関化」していた状態であったということがわかる記述もある。
感想はXの方に書いてあるが、2ポストだけ引用しておこう。
3月31日には市民集会も
朝日新聞でも報道されたようだが、集会画像を見るに、この市民様達、かなりお年を召した方が多いように見受けられる。
退職教員、退職研究者とかの集会?といった風情である。特に前の方…平均年齢がかなり高いように見えるが気のせいだろうか?
なんと、応援歌まで作られていた。
奈良教育大教授、今正秀氏の詩に曲を付けたのだそう。
歌で応援…というのはいかにも「市民様」的な気がするが、まあそこは好みなのだろう。
ちなみにこの近正秀氏、なかなか面白い講座を受け持たれている模様。
なかなかアクティブでもある。
前川喜平氏も登場
FLASHの記事である。
いや、多くは語らないでおこう。
奈良教育大学付属小いじめ事件が発覚(2024年4月)
沢山ニュースがあるがもう一本挙げておこう。
調査報告書(概要版)
https://www.nara-edu.ac.jp/news/pr-document20240409-1.pdf
保護者所見
https://www.nara-edu.ac.jp/news/pr-document20240409-2.pdf
保護者所見から見える教員の関与の可能性
いじめの手口自体は古典的なものである。
私が50年前に体験したものとあまり変わらない。常態化すれば、なかなかにメンタルダメージが起こりかねない。
しかも、担任が居合わせていた場面もいくつかありそうであり、そうなると担任教師が扇動あるいは黙認していた可能性もあるだろう。
奈良教育大学付属小は、2011年にも「いじめ→転校」案件を起こしていた
奈良教育大学付属小では「みんなのねがいでつくる学校」の活動には熱心であったが、いじめ抑制策やいじめが起きたときの組織対応等に関してはあまり熱心でなかった可能性も浮上する。
この記事で「学校の対応に大きな問題があった。おわびしかない」と語ったといわれる坂下伸一副校長は、2024年に発覚した不適切授業問題をうけての「奈良教育大付属小を守る会:みんなのねがいでつくる学校応援団」のメンバーである。
「奈良教育大学付属小の教育」を絶賛応援していた教育学者や教育実践家は頬かむり?
貝になる応援団
非常に活発に活動していた「みんなのねがいでつくる学校応援団」の先生方であるが、どういうわけか、いじめ事件が報道されたとたんに皆さん貝になってしまわれたようだ。
みんなのねがいでつくる学校応援団も、いじめ問題には全く触れていない。
「このような事態になり遺憾です」
くらいのことは言ってもいいんではないだろうか?
学者先生もまたご同様のようだ。
少なくとも教育科学研究会はいじめ問題にはなにも言及せぬまま、「みんなのねがいでつくる学校」の路線を応援するようである。
ああ、そういえば、おひとりだけ教育学者で、いじめニュース報道の当日に、危機感を表明されている方がいた。
従前からあった「子どもたちのために、まず教員にゆとりを!」言説はなんだったのか?
新婦人の会のWebサイトで署名を集めるフォーマットを見た。
この中には、「いじめ問題」になにがしかのご意見を垂れられている方がいる。
■尾木直樹氏
折角なので「教員集団がとても閉鎖的で、校長のガバナンスが効かず」というケースについても解説していただきたい。
教員が「いじめ」を「いじめ」と認識できないのであれば、発見は遅れる。
教員への罰則を強くしても解決につながらないのでは?
となると教員養成課程の問題ではと思ってしまう。
■内田良氏は著書も出されているようだ。
いったいどこを向いているのだろう?
いじめは複雑で教員は忙しくて対応に限界があるから世間は理解しろ、とでもいうのだろうか?
教育学者の職務放棄ではないだろうか?
まあ、東洋館出版社の本なので、教師向けなんだろうが、ふつうそんなことは知らないものだ。
しかも、SNSで宣伝してると、一般大衆の目にも当然触れる。
いじめの被害者or被害者保護者の視点で見たら、がっくりくることは請け合いだろう。サバイバーとしては…素直に腹が立つぞw。
そして、目次をチェックしたが、やっぱり外れているのは「教師扇動型いじめ」である。
「現場の苦悩を理解することが…」というのは幻想ではないだろうか?
■東大の小国義弘氏は『戦後教育史-貧困・校内暴力・いじめから、不登校・発達障害問題まで』という本を出している。
いやいや、帯がなかなか強烈である。『なぜ行き詰ったか80年の軌跡』
いや、いじめが世間で問題になるようになって40年以上たっている。
教育学がその間何も手をうてなかった、ということを堂々と告白されても困るのだ。
ちなみにこの本は、「民主的教育勢力はがんばってきたが、分断を煽る、管理主義的、保守的な勢力(文部省・自民党)につぶされてきた」が綿々とつづられており、「これからはインクルーシブ!」で締められていた。
いったいいつの時代に生きているのだろう?
教員のゆとりをふやしたら教育は豊かになるのか?
「教員のゆとりをふやしたら教育は豊かになる」
というのは、今回のいじめ案件が見事に否定してくれたようである。
奈良教育大付属小の教師集団のような価値観であれば、時間的ゆとりを増やしたら「職員会議の時間」に充てられてしまうだけだろう。
いや、もちろん学校教員が必要である以上、その労働には適正な賃金が支払われるべきだろうし、労働環境が劣悪なのはよろしくないと思う。
ただ「教員のゆとり」は「いじめの苛烈化を防ぐ教育環境」をつくることにはあまり連動しないように思う。
「授業研究」と「集団づくり」は持ちつ持たれつの関係あると思う。
奈良教育大付属小は、ポリコレカースト市民様製造所になっていなかったか?
「学校のいじめ」の問題がしばしば報道等にあがるようになって、すでに数十年がたつが、一向に減る気配はない。
最近は「学校のブラック職場化」もしばしば取沙汰され、教員不足といったことも相まって「まず教員にゆとりを」の言説も増えている。
教育実践研究に熱心な国立大付属小で「いじめ→不登校案件」が出たのである。そしてそれは奈良教育大付属小のみの話ではない。
指導研究、教育実践研究そのもののあり方も含めて、いじめとの関連について考えていくべき時なのではないだろうか?
そんなことを考える。
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