私が生まれたお家のおはなし。
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日本の雪が降る地域の中の1つ。
そんなところの山奥も山奥で私は生まれた。
ここは母方の実家で、現在は祖父母が2人で暮らしている。
田んぼがあって、畑があって、季節折々の花が咲く。
時間の流れがとてもゆっくりな私の大切な第2の実家。
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母は私を身篭って早々に帰省していた。
当時、父は出張が多く、家にあまりいない人だったこともあって、私は幼少期をこのお家で過ごした。
記憶はあまりないけど、ここの空気に触れ、木々を見て過ごした時間は私にとってかけがえのない思い出。
アルバムがある。
生まれたばかりの写真、じいじばあばに抱っこされている写真、沐浴の写真、猫が寄り添って一緒に眠っている写真、軽トラックの荷台で遊ぶ写真。
居間の香りも、仏間の涼しさも、雪が積もるとゴゴゴゴと音を立てる屋根も、全部全部だいすきな私たちのお家。
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小学生になってからも長期休暇は決まって帰省して、何かにつまづいてどうしようもなくなったときも、決まって私はここに帰ってくる。
のんびりと日向ぼっこをしたり、流れる雲を見つめたり、お話したり美味しいごはんを食べたりして英気を養う。
それなりの都会で育ち生活していると、インターネットが通っているのは当たり前だし、季節の花なんて小学校とか公園とかに立ち寄らない限り目に留めない。
そうやって忙しなく過ごして、五感で感じることを忘れ、忙殺されていくのだ。
それはなんだか寂しい。
感じたことを言葉にしてもいいし、写真に収めて記憶の欠片にしてもいい。
この感じていることを、私の感情すべてを、無視したり受け流したりしたくない。
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今回の帰省は3泊4日で、前回の帰省で行けなかったラーメン屋に行く以外に予定という予定はない。
実家ではあるもので勝手に食べるスタイルなので、あれ食べるかこれ食べるか、とごはんがたくさん出てくるのはなんだかむず痒い。
この感覚も帰ってきたんだなあと実感できる感覚の1つ。
3食しっかり目でも美味しいごはんが並び、ティータイムがあり、お菓子もたくさんある。
幸福感とともに脂肪も手に入れるのだが、もうこればかりは仕方ない、ね。
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そんなこんなで、私は今、第2の実家にいる。
家の前で大げさに音を立てる川を眺めながら煙草を吸っている。
街灯もほとんどなく、目につく灯りは近所の家の明かりと星や月の明かり。
なんにもないけど、私の大切なものがたくさんある場所。
全力でここにいることを感じ、私は日常へと帰っていく。
ありがとう。これからもよろしくね。
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