『悪女』

なんの話だという感じであるが、本の題名である。
『悪女(わる)』と読み、深見じゅん先生(『ぽっかぽか』など)が書かれた、私がいちばん好きな単行本だ。

この物語は、全37巻ある。
出会いは、母親がフリーマーケットで数冊買ってきたところからはじまる。

題名だけみると、なんだかどきどきしてしまうが、内容は、短大を卒業し、コネで大手商社に入社した田中麻理鈴(まりりん)が、憧れのT・Oさんを探す話だ。

このT・Oさんとは、まりりんと同じ会社で、ひょんなことから知り合い、まりりんがひとめぼれをした相手だ。

早く次がよみたい、早く次がよみたいと強く思っていた。
何が私をそうさせるのかよくわからなかったが、逆行にもたくましくむかっていくまりりんの底力と、個性が強すぎる登場人物が、まりりんとの交流を通じて人間臭くなっていく姿に、毎度胸がアツくなった。

まりりんは決して優秀でもなく学歴があるわけでもないのだが、とにかく愛嬌がある。
それでいて、一生懸命で、なんだか応援したくなるのだ。

ただ、その社内で生き抜いていくにも不器用なまりりんには苦難の連続で、こちらもはらはらしてくる。
しかしながら、いつでも手をさしのべてくれる人がいるのだ。

わたしがいちばんこのマンガで好きなシーンは、まりりんにどんどん出世欲がわいてくるところだ。

出世欲といっても、まりりんはお金持ちになりたいわけでも、名誉がほしいわけでもない。
ただ、T・Oさんに見合う人間になりたい一心で出世しようとしているのだ。

泣ける。

さすが大手商社だけあり、優秀な人間がたくさんいる中で、自分が出世すればより早くT・Oさんに会えると信じ、日々格闘している。

実は、このマンガが好きだといいながら、全巻読み終えたのはつい最近の話である。
メルカリで全巻セットを購入し、おとなになったとしみじみしたものだ。

読みたいと思いながらも、他のマンガに浮気したり、日々の生活に追われたりして、つい忘れてしまっていた。
それでいて、定価で買うのはなんだか悔しくて、それでいて30年くらい前の漫画であるため、本屋の棚にすべての巻があることはなく、古本屋では巻がとびとびであったりした。

メルカリ、売ってくださった方、本当にありがとう。

当時読んでいた印象と、ある程度年を重ねてから読むそれとではかなり違うように思えるが、巻がすすんでも、まりりんはまっすぐでいつも一生懸命であった。

こんなことを書いていたら、また読み返したくなってしまった。
読み出すと止まらなくなってしまうため、クローゼットの中に閉まってあるが、ちょっと今夜は開けてみようと思う。
(開くべき資格の本はいっこうに閉じたまま…)

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