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イギリスのカツカレーブームにモノ申す


日本人である私はもちろん、英人の夫も、子供たちも大好きなカツカレー。家族全員皆大好きなのだが、自宅では、カレーを作り、カツを揚げないといけないので、手間がかかる。だが、出来上がっていただく時の、あのカツのサクサクとカレーのこってりが絶妙に口の中で交わる感覚は極上だ。

今や、そのカツカレーがイギリスでは空前の大ブームなのだ。

カツカレーブームの火付け役となったのは、1992年創業の日本食レストラン「Wagamama」だと言われる。香港系イギリス人のアラン・ヤウ氏(有名高級中華レストラン「Hakkasan(ハッカサン)」や「Yauatcha(ヤウアチャ)」のオーナー)が手がけたカジュアルかつスタイリッシュなこの日本食レストランがラーメンとともにメニューに載せて以来、若者を中心にカツカレーが瞬く間に人気になったのだ。

だがしかし・・・・。

日本人の私としては、物申しておきたいことがある。

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上の写真を見ていただきたい。これが「Wagamama」の人気メニュー「カツカレー」なのだが、カレールーの色が黄色すぎやしないか?そう、ここのカツカレールーにはココナッツミルクが入っているのだ。これはこれでおいしいのだろう、だから人気があるのだろうが、やはりカツにはバーモントカレー風の日本のカレーが一番合うと思う。

ちなみに、イギリスで「Katsu」というと、たいていの場合「チキンカツ」を指す。これは、ユダヤ人やムスリム(イスラム教)のように豚肉を食することが宗教上禁止されている人たちがいるので、万人が食することのできるよう、鶏肉が使われる事が多い。

カツカレーブームはレストランだけにとどまらない。

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スーパーマーケットで売っているレディミール(Ready meal、電子レンジやオーブンで温めるだけの、出来合いのおかず)にもカツカレーは存在する。


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こちらは、ヴィーガン・ブームの需要に応えて、スイートポテト(サツマイモ)カツカレー。



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地下鉄駅のホームにまでカツカレーを使った広告が。しかし、これは揚げ茄子にやはりココナッツカレーがかかったもので、もはや日本のカツカレーの微塵も存在していない。


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レディミールに抵抗があるなら、自分で作ってみてもよい。スーパーで買える「カツカレーキット」に入っているものは、瓶詰のカレーソース(もちろんココナッツ入り)、パン粉(Pankoはもはや英単語となっている)、そして極めつけはなぜかコチジャン(!、っていうか、もう日本も韓国も混ぜこぜ?)。チキンでもサツマイモでも好きなものを加えてカレーを作ってね、と書いてある(そうか、カツカレーなのに具はカツでなくいいのか)。ここまでくると発明品だ。


とまあ、ここまでは、見よう見まねで何とかカツカレーらしいものを提供しようとしている。

しかし、カツカレーはおかずに限らずスナック菓子にも登場した。

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「チキン・カツカレー・ポテトチップス」だ。「クリスピーチキンとココナッツカレーのアロマティックな香りの融合」と書かれているが、カツは一体どこ!?

ここまでくると、カツカレーにカツが入っている必要はもはやなく、日本風カレールーをカツカレーと呼んでいたが、今ではカツも入っていなければ、日本のバーモントカレーでもないものが「カツカレー(または、カツカレー風味)」と一人歩きをしているようだ。

この事態に物申したい日本人は、私だけではないらしく、今では#katsucurrypolice(カツカレーポリス)という、なんとも頓智の利いた粋なタグ名で、在英の日本人の方たちが「こんなの見つけました」と写真付きでSNS上でカツカレー商品の情報を交換し合っている(筆者も是非通報したい案件がいくつかあるが、気が小さいためまだその仲間に入る勇気がない)。

現在、イギリスでカツカレーなるものを食べている人たちが日本に行って「本物の」カツカレーを食べたら、どう思うだろう。その美味しさに悲鳴をあげるに違いない。


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