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私たちは50代の恋愛を、セックス&ザ・シティーからまた学べるのか?友人の恋バナを聞きながら、恋愛と同時に大事なのは友人関係だと悟った本。


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『セックス&ザ・シティ』を語らせたら右に出るものはいない!と断言できるほど、私はあの番組から多くのコト(!)を学んだ。

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ロンドンに住み始めて3年くらいたった頃、30歳を手前にして、人生の方向転換などを余儀なくされていた時に、チャンネル4で放送されていたのが『セックス&ザ・シティ』だった。ブラウン管に(14インチのブラウン管テレビだった!)映し出される、4人の華やかな生活は、私のそれとは似ても似つかないものだったけど、なんだか悩みの原点は同じような気がして、ずいぶん感情移入して観入った。どれくらいハマったかというと、放送を観ながらVHSビデオに録画し、再放送を観て、また録画を観る、という有様。同じエピソードを少なくとも4回は観ているので、セリフはほぼ暗記(どこかで使うかもしれないので)。たまにメモなんかも取ったりしてた。

放送が終わったときは、少し寂しくもあったけど、私生活では今の夫と安定したリレーションシップを築けていたし、もうマニュアルは必要ないと思ったのか、それほどロス感を感じることもなかったと記憶する。

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『25年後のセックス・アンド・ザ・シティ』を読了した。とは言っても、25年後のキャリー&Coのストーリーではなく、作者、キャンディス・ブシュネル自身のエッセイ。60歳になろうとする彼女とその友人たちの物語。

「女性で」、「独身で」、「自営業」、「50歳を超えている」ことから住宅ローンが組めない。アルゴリズムって本当に残酷。独立した女性を「個人」として見ていないわけで、これが大都会ニュー・ヨークのお話だから、絶望的に思える。

原題は『Is There Still Sex In The City?』。「ニューヨークにはまだ、私がセックスできるチャンスはあるの?」。ここでは、ただ性交としてのセックスではなく、出会いから恋愛、そしてリレーションシップのことを意味するものだと考えるとすると、そのチャンスは十分にある(と信じたい)。

とは言うものの、正直「カブ」のくだりでは、現在14歳の息子を持つ母の身からすると、シャレにならない感情は否めなかった。先日、イギリスでも女性教師が15歳の男子生徒と関係を持った(しかも学校の校庭内で)というニュースが新聞を賑わせた例もあり、必ずしもフィクションではない、という事実を突きつけられた。

私は今のところ、離婚の予定はないので(まあ、死別はありうるかもしれないが)、シングル・マーケットに戻ることを想定するのは現実的ではない。なので、友達のストーリーとして第三者的に読み進めた。というのも、私の友人の一人にも、2度の離婚を経験して現在新しいボーイフレンドと交際進行中の友人ソフィー(現在53歳)がいるからだ。

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ソフィーは若干20歳でドバイの裕福なファミリー・ビジネスの経営者の息子と結婚し、一男をもうけた。しかし、自分の人生に欠けているもの、物足りなさを感じ、夫と離婚。当時7歳だった息子を連れてイギリスに渡った。息子の教育費、養育費は元夫が払ってくれたので、経済的に苦労はなかったという。一方自分は学校に通い、博士号をとった。渡英当時から恋愛には前向きで、とあるマッチングサイトに登録し、何人かの男性とデートした。真剣に交際した3人目の男性が、2番目の夫となるマークで、当時PR会社に勤めていた。交際1年が過ぎた頃、ソフィーの妊娠が発覚。結婚前提のお付き合いだったため、正式に入籍し、ソフィーは2度目の結婚を果たした(マークは初婚)。無事に次男ハリーを出産し、最初の夫との息子、二人目の夫マークと理想的な結婚生活を送っていたが、2013年にマークが失業。以降、仕事を探すそぶりを見せることなく、ヒモ状態となった。私も、ソフィーと会うと「夢物語ばかりを語り、1円も稼いでこない夫」の悪口を聞かされることが多くなった。そして2018年、遂にソフィーは離婚を決意。やはり子供がいるので、離婚に踏み切るにはずいぶん悩み、迷い、苦しんだ。離婚手続きの困難さと仕事の多忙さなども相まって、一時期は殺気立った様子も見せていたが、私ともう一人の友人ルーシーは、なんとかソフィーを支えようと、ことあるごとに飲みの誘いをかけていた。様々な手続きを経て(イギリスでは、日本のように紙1枚で離婚はできない。離婚原因を明確することから始まり、お互いの資産をすべて提出し、名義を確認または変更し、どちらかが路頭に迷うことのないように、くまなく調査された上で離婚が成立する。そのため莫大な時間がかかる)、2019年5月に正式に離婚が成立した。


その4か月後、2019年9月、私たち3人はいつものパブでロゼワインを飲んでいた。ソフィーが、出会い系サイトに登録したの、と言った。「シングルマーケットに戻るのも悪くないわ、様々な人たちのプロフィールを見るのも楽しいし」。正直私もルーシーもソフィーの離婚が正式に成立してから本人に会うのは初めてだったので、何から切り出せばよいか、話題をいろいろな方向に振っていたのだが、本人が離婚を決意するまでの葛藤や苦悩を(お酒の力もあって)話しだしてくれたので、私とルーシーはほぼ同意する形で相槌を打った。それにしても、「もう男なんて!」と来るのかと思いきや、前向きに次のリレーションシップに動こうとする、ソフィーのポジティブな態度にほっとしたと同時にその切り替えの早さに感嘆した夜だった(ちなみに3人でロゼを2本空けた)。

その後、今年に入って、2月の終わり、私たちはまたいつものパブで集まった。声を掛けてきたのはソフィー。私もルーシーも何かあったな、と女の直感。パブに到着すると(私はいつも約束の時間の5分前には到着するようにしている)、もうソフィーが奥のソファー席を確保し、なんとシャンパンをボトルで入れている。「なんかのお祝いみたい」とカマをかけつつ、グラスに冷たく冷えた泡を注いでもらう。ウフフと笑う彼女。とりあえず乾杯。10分ほど遅れてルーシー登場。彼女にもシャンパンを注ぐ。

子供たちや学校の話を一通りした後、ソフィーがもう待ちきれないといった様子で「ねえ、あなたたち秘密守れる?」と訊いてきた。「守れるけど、彼氏でもできた?」と訊き返すと、「そうなの!!」と予想通りの返答。「あんた分かりやすすぎるわ。またあの(マークと出会った)Mサイト?」と冷やかし気味に聞くと「違うのよ!今回はGサイトよ!」と。そうすると、ルーシーが「そのマッチングサイト知ってる!私の古い友達がそこでパートナー見つけたわ!」と。どうやら割と成功率(?)の高いマッチングサイトらしい。お相手は60歳の超インテリジェントで離婚歴あり。成人した娘がいるそう。フリーランスで出張も多いが、忙しい中都合をつけて会ったのは今まで3回。とてもいい感じだと言う。嬉々としてお相手の方の話をするソフィーは、まさに中学時代の女学生。恋愛の始まりが楽しくてたまらない、といった様子。でも、まだプラトニックなの、と少し迷い気味に打ち明ける彼女は、どうしたら彼を誘惑できるかしら、と本気で悩んでいる。正直60歳の独身男性のMojoがどの程度なのかは、想像もできないので、かなり当てずっぽうに「もしそういう関係がしばらくなかったら、彼も自信を取り戻すには時間が必要かもね。焦りは禁物じゃない?」と(少し無責任だとは知りつつも)言ってみると、「そうねマミ!その通りだわ!」と恐ろしく納得した様子。どうやら思考回路も中学生に戻っているようだ。

とにかくその夜はソフィーの恋バナ(この言葉も死語かな)で幕を閉じた。

その後イギリスは、コロナ・パンデミックの爆発感染により3月24日よりロックダウンに入る。その時のソフィーの様子は、以前noteにも書いた。

ロックダウン中もZoomデートを繰り返し、「お付き合い」を続けている様子のソフィーを上記の記事で書いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーそして、2020年のコロナ禍中の夏のホリデーも終わり、息子たちの学校も再開。少し落ち着いたところで、再びソフィーからお誘いが。いつものパブで待ち合わせ。「今日はジン&トニックにするわ」とソフィー。私とルーシーはいつものロゼ。他愛のない近況報告から始まって、喫煙家のルーシーが煙草に火をつけた途端、ソフィーもバッグから煙草を取り出した。8年ほどの付き合いになるが、彼女が煙草を吸うのを見るのは初めてだった。最近また始めたの、と慣れた手つきで火を着ける。「ラブ・ライフの方はどうよ?」と訊くも、「まあまあよ」となんだか歯切れが悪い。煙草をくゆらせながら、「やっぱりスロウよね」と不満げだ。とくに結婚を考えているわけでもないけど、なかなか前進しない関係にジレンマを感じている、と言う。「出会ってちょうど1年になるのよ。でもまだ一緒に寝てないの」。不安もあるのだろう。「まあ、そのうちの半分はコロナ禍で、しかもロックダウンもあったしね」と私。「そうなのよ!あれがなければ(もっと進んでいたわ)!」と自分に言い聞かせるように、2本目の煙草を取り出した。一旦辞めたタバコを再び始めたのも、そのジレンマからだろうか。だが、この日ソフィーはあまり飲まなかった。

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話を本の内容に戻すと、「ミッドライフ・クライシス」もとい、「ミドルエイジ・マッドネス」とは、的を得ているな、と思う。いつまでも美しくありたいと思う反面、身体の衰えは否めないし、私の場合は遅く産んだので、子供たちが独立するまでにはまだまだ時間がかかる。年齢とともに変化していく自分をどのように外界と適応させていくかというのも課題だし、私はシングルではないが、年齢とともに夫との関係も少しずつ変わってきていると思う。

『25年後のセックス・アンド・ザ・シティ』というタイトルからだけだと、50代の恋愛事情のみを描いているように感じるのだが、ここで重要なのはそれだけではなく、50代からの友人関係だと思う。キャンディスも、過去を認め、現在を知ったうえで、未来を共有しようとする女友達に囲まれて生活を送る。時には喜び合い、時には慰め合い、同意できなければ叱咤しながら。ジャッジメンタルになることもあるだろう。しかし、それまでお互いに築いてきた信頼関係があってこそ、あたらしいチャレンジもできるし、その相談もできる。50代ともなれば、親友に悩みや相談を打ち明けても、解決してもらおうとはつゆにも思わないわけで、結局のところ、それが愚痴になろうとも、話を聞いてもらって、心の整理ができればいいのである。

先日友人の一人が「コロナ禍は自分にとって本当に大切な人が誰なのかを見極めるいい機会になったと思う」と言った。ロックダウン中、どうしているかな?と思いを馳せる友人、そして、話がしたいと思ってもらえたからか、逆に連絡をくれる友人。私は誰かにとって"話を聞いてもらいたい人"になっているだろうか。ソフィーは私たちと会って話をすることにより、心の平静が保てただろうか。


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『セックス&ザ・シティ』では、お決まりとなった4人のダイニング・シーン。結局誰の話も聞いてないじゃん!みたいな勢いで自分のことを語りまくる彼女たちだけど、これって男女問わず重要な時間だと思うのよ。言いたいことがちゃんと言える関係、そして言われたことに対して、「You are so judgemental today!!」と反論できる関係。


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『フレンズ』だったら、友達にしたいのはフィービーだけど、『SATC』だったら断然スタンフォード。優しすぎるので甘えてしまいそう。


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私はシャーロットの夫、ハリーが一番タイプ。そして私の夫は彼にかなり近い(真実)。


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私はミランダが一番好き。弁護士という職業柄、見解がはっきりしているし、判断能力が高すぎる。歯に衣着せぬ、忌憚無き意見を友人たちに浴びせ、「You are so judgemental!」と言われ、時には喧嘩になることも。

写真はミランダを演じたシンシア・ニクソン。15年間パートナーだったダニー・モーゼスとの間に子供を儲けるが、2003年に離婚。その後教育アクティビスト、クリスティーナ・マリノニと交際、2012年に同性婚。バイセクシャルをカミングアウトした。マリノニは男の子を出産している。2018年にはニューヨーク州知事選で民主党からの立候補を目指したが、アンドリュー・クオモ(現知事)に大差で敗れた。・・・・・・・と私生活も波瀾万丈。


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最後に、昨年、ロンドンのウォレス・コレクションで開催された、マロノ・ブラニクのコレクションをどうぞ(クリックして飛べます)。



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