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3月21日より放送が始まった『Line of Duty』のシリーズ6が明日、最終回を迎える。


3月21日より放送が始まった『Line of Duty』のシリーズ6が明日、最終回を迎える。今シーズンはコロナで制作が遅れ、前作から2年が経っていることもあり、ファンの期待と興奮も随分と高まっていたが、そこはさすがジェド・マーキュリオ。全てのエピソードがハラハラ・ドキドキで毎エピソード終了後は、ファンたちがソーシャルメディアなどで内容を復習すると共に、謎についての予測をたてるという現象まで巻き起こっている。そして先週日曜のエピソード6に至っては、視聴者数がなんと1100万人を上回り、明日の最終話に向けての国民の関心の深さが並大抵ではないことを知る。本日(5/1)付けの英新聞The Timesによると、推定1200万人もの人々が明日の最終話を視聴し、その行方を見守るだろうと予測されており、中にはこれまでの人間関係や証拠、手がかりをノートに書き出してまとめているスーパーファンまでいるという。自身も法心理学の学位を持つ、40代の女性は、自宅に巨大な相関図を作り、最終話を心待ちにしている。彼女はシリーズ6の全てのエピソードを最低5回は、全シリーズを通しても50回以上は視聴して、その度に発見した手がかりをボードに書き込んでいるというから驚きだ。また、ケンブリッジのパブ・オーナーは敷地内のガーデン・スペースに50インチのスクリーンを用意してファンが一堂に最終話を楽しめるように準備しているという。そして気になるのは、噂されている通り、これが本当に番組終了のラストになってしまうのか、というところなのだが、DCIスティーブ・ア―ノットを演じるマーティン・コンプストンは、内容に関して「継続的なストーリーラインはもう終わりに来ている」と述べ、シリーズ7の制作に関してはマーキュリオとその周りの何人かにしか知らされておらず、メイン・キャラクターの一人を演ずるコンプストンでさえも「本当に知らないんだよ」と答えている。

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私は明日の最終話は夫と二人でTVにかじりつくことになると思うが、パブで他のファンと一緒に観る、というのもすごくいいなあ。スポーツ観戦などはパブで観ることもたまにあるんだけど、ドラマでパブっていうのありだよな。臨場感ありそうだし、皆の反応とかも見てみたい気もするし。それにしても、これだけもつれた疑惑の数々をたった1時間の番組で、全て説明することができるのだろうか、という心配が杞憂であればいいと思う。ともあれ、人々の興味や嗜好が多様化する中で、こんなムーブメントを作り出した制作者にはあっぱれだな。

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推理小説やスリラーが書ける人って本当に凄いと思う。話の流れに起伏をつけるのも大変なのに、そこにプロットや策略を盛り込んで、最終的には辻褄を合わせ、しかも犯人の動機はある程度の納得、同情を必要とするから。特に「Whodunit」系は視聴者(読者)に与える犯人特定の糸口のさじ加減が本当に微妙になってくる。これが予期していなかった方に進めば視聴者はぐいぐい引き込まれていくが、あまりにも難解だと理解不可能になり、脱落していく人も出てくるからだ。

昨夜より始まった『Line of Duty(#ラインオブデューティ 汚職特捜班)』シリーズ6(エピソード1 の視聴は960万人!!)。いきなり訳が分からなくなって(「CHIS」って何!?)、まあこれも想定内というか、しかし予期していなかったというか。

先週のWAITROSE WEEKEND紙の『LoD』の製作総指揮・脚本を手掛けるジェド・マーキュリオのインタビューによると、『LoD』を書く際に鍵となるのは、まさに「予想可能な出来事と、予期していなかった展開のバランス」なのだそう。つまり「奇想天外になりすぎない程度の驚きでもって、辻褄の合うところへオーディエンスを導く」のだという。マーキュリオは、1966年、英ランカシャーにて、移民であったイタリア人の両親の元に生まれる。バーミンガム・メディカル大学で医療を専攻した後、RAF(英空軍)医療チームに所属。「英国医療ジャーナル」にあったTV医療ドラマのアドバイザー募集に申し込んだが、最終的には脚本全般を担当することになり、NHSの内側を描いたドラマ『Cardiac Arrest(1994-96)』が完成した。その後も『The Grimleys』や『Bodies』などのヒットを飛ばすが、実は『LoD』は一度BBC1に却下されており、製作は不可能かと思われた。しかし、幸いなことにBBC2から助け船を出され、製作を開始、放映されるとすぐに視聴者を虜にした。そして、より多くの視聴者を稼げるBBC1へ移行することになったという。シリーズ6では、DCI ジョアン・デヴィットソン役にケリー・マクドナルドを迎え「AC-12は、今までで一番難解な敵に直面することになる」という。「アーノット役のマーティン・コムストン、フレミング役のヴィッキー・マクルア、そしてヘイスティングス警視役のエイドリアン・ダンバーの3人は皆、自分の演じる役が必ずしも安全ではないことを理解している。彼らはストーリーラインをよりドラマティックにするために、何か大変なことが彼らの一人に、または二人に、もしくは全員に降りかかるかもしれない、ということを分かっているんだよ」とニヤリを笑う。回を追うごとに、犯罪の筋書きもより複雑で巧妙になる一方、誰を信じればいいのか分からなくなる、しかもそれが警察だから、視聴者である一般市民はフィクションであるにも関わらず不安な気持ちになったり、しめた!と思ったり、ハラハラドキドキが止まらない。

もし脚本家にならずにNHSで今も働いていたとしたらという質問に、「上手くやっていれば、循環器か呼吸器専門医になっていたかな」と答えるマーキュリオだが、私がこのインタビューを読んで感じたのは、このような頭脳の持ち主って、それがどんなに複雑なプロットであれ、アイデアをひねり出すというよりも、自然に沸き上がってくるものなんだろうなあ、ということ。脚本家としてこのような作品を創作して視聴者を楽しませてくれても、医者としてNHSに残ったとしても、社会に還元できる人というか。そういえば、『すこし痛みますよ』のアダム・ケイも医者出身のライターだったな。ともあれ、私としては日曜夜9時はまたTVにかぶりつくことになりそうです。

〈追記〉先週まで3話に渡ってBBC1で放送された北アイルランドが舞台の「ブラッドランド」(3月15日付の私のインスタに作品を紹介しています)もマーキュリオの新しい制作会社による作品。こちら高視聴率を博し、シリーズ2の制作が決定している。

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うーん、、なんだか歯切れの悪いというか、モヤモヤの残る終わり方だったなあ。『ライン・オブ・デューティ』や『ボディガード---守るべきもの』のジェド・マキューリオがプロデューサーということで(脚本はクリス・ブランドン)、期待も高まり、Ep2までは、凄い!これは予期していなかった!な驚きの連続だったんだけど、最後は、ああ、そんな終わり方?と言う感じだった。BBCドラマ『ブラッドランド』、舞台は北アイルランド、ストランフォード湾。元IRAメンバーで、悪名高いビジネスマンが誘拐された事件をきっかけに、20年前の未解決失踪事件が再捜査されることになる。未解決事件とは、1998年に4人が次々と姿を消したというものであるが、その中の一人は主人公トム・ブラニック警部(ジェームス・ネスビット)の妻だった。妻の失踪後、トムは一人で当時1歳だった娘を育て上げ、事件は既に忘れ去られようとしていた。しかし、被害者家族からの情報提供もあり、事件を再び掘り返すことになるのだが、トムが捜査再開に必死になったのは妻に何が起こったのかを知る為ではなかった…。失踪者にはIRA側、ユニオニスト側、双方が含まれていたことから、犯人特定が困難で、まさに失踪事件が起こったの1998年はベルファスト合意がもたらされた時であったことから、これ以上の捜査は和平合意を不必要に翻してしまう恐れがあったので、警察も真実追及には弱腰になっていたという背景があった。ドラマはフィクションであるが、北アイルランドの辿ってきた政治的背景と警察の役目(濡れ衣を着せられた警察署長ジャッキーが取り調べで、「私はカトリックだ。RUC(王立アルスター警察隊、当時)内には私の事を敵視している同僚もいた。警察署内では皆同じユニフォームを着ているが、彼らは私を信用していなかったし、私も彼らを信用していなかった」と言う)、がどれほど複雑で、状況が一触即発であったかを物語っている。
捜査員の一人、ニアが犯人は他にいる、とにらんでジャッキーに事情を聴くため取調室に入るのだが、会話は常に録画されているため、二人は英語ではなくゲイル語で話をする。プライムタイムTVでゲイル語が聞けるのは滅多にないので、ここも貴重なシーンだ。

シリーズ1は全4話で最終話はまさに820万人の視聴があったというが、少し拍子抜けな感じもあり、説明不足の問題も多く、辻褄の合わないところもある終わり方だったのでメディアの批評は良くなかった。と、思っていたら、終了後すぐにBBCよりシリーズ2がアナウンスされたので、ああ、そういうことか、と。犯人がすでに特定されているので、次シリーズでは、その裏の背景と誰が何を知っているのかを明確にしていくのであろうと思うが、それを知るだけでも続きを見る価値はありそうだ。


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