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あの日、午前3時。中野のバーで知らない大人と夢を語った(2)

「じゃあ、自己紹介しましょうか!それぞれ、自分の昔のあだ名と、『夢』を語ってください」


銀行員だという小川くんことオリバーは、コラージュ作品を作るのが好きで、いずれ銀行員をやめて絵本作家になりたいと語った。

目をキラキラさせて夢を語る姿に、ほろ酔いのテンションも手伝って聞いてるほうまでワクワクが伝染してくる。



それまで10年間、本当にせまい世界で暮らしてきた私には、誰かの夢を聞く経験など初めてのこと。


田舎で子育てと家事に明け暮れていた主婦の私が、

今、午前3時に中野のカフェバーにいて、さっきまで他人だった人の夢を聞いている…。


そんな自分の状況が非現実のような、別の誰かの人生を体験しているような気さえしてくる。


それくらい、私にとっては新鮮で刺激的な出来事だった。




みんなが夢を語ったあと、いよいよ私の番。
自分の夢を10年以上、心に秘めたまま、誰にも話したことがなかった私は、自信なさそうに話しだした。

否定されたりバカにされたらどうしよう……こわい。


「メディアの編集とかライターやりたいんですけど……なにをどうしていいか分からなくて」


すると、そのなかの1人がすかさず
「ぼく、今、宣伝会議って会社に勤めてるんですけど、そこで『編集ライター講座』っていうのやってますよ」と。



その夜が、夢への手招きをしてくれた。 

小さな一歩だけど、そもそもどの方向に"一歩"を踏み出せばよいのかすらわからなかった私にとっては、大きな足がかりになった。

(今だったら秒速で「ライター 学校」とか検索してるけど、当時はそんな簡単なことすら頭になかった…)



それからWEB化が急速に進み、メディア業界への入り口が広くなってきた3年後、WEBメディアの編集・ライターとなり私の夢は叶った。

ただ、夢を追っていた頃はいつもいつも、折れそうな心と、孤独と、戦ってたのを思い出す。


時々、あの頃のどうしようもなく胸を焦がすような想いが蘇る。

「ただの専業主婦だった自分に、そんなの出来るわけない」


でも、、どうしても諦めるわけにはいかない。

自分が諦めてしまったら終わりだから。


「無理だ」という自分の声に負けないように、「できる」と何度も言い聞かせる。


いっそ諦められたらどんなにラクだろう。
そう思っても、寝ても冷めてもそのことが頭から離れない。


ひとりで夢を追うのは、孤独との戦いだった。


夢を夢のままにしておくなら、それもいい。

でも、叶えると決めたら

それなりの覚悟が必要だと知った。

夢を追うのは、楽しいこと美しいことばかりじゃない。


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