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ティッシュ配りのプロが教えてくれた”仕事の価値”

昔、デパート内のイベントで呼び込みのバイトをしたときのこと。

顔に笑顔を貼り付けて、親子連れが通るたび「おねーさんと遊ぼうよ〜!」と声を張り上げる私。その横にはティッシュくばりのおねえさん(推定40なかばくらい?)。

その女性は、私の縄張りに侵略しないよう気遣いながら、ものすごい勢いでティッシュをさばいている。

お互いのテリトリーを侵さないよう数時間近距離で仕事をし、お互いの仕事ぶりをみていたわたしたち。

彼女は歩く人の進路を妨げないよう、軽やかな身のこなしで人混みをぬうように動き、

絶妙なタイミングで通行人の前にサッとティッシュを差し出す。

差し出された人は、受け取るかどうか考える前にパッと手がでてしまう、ように見えた。


「ティッシュを受け取るか否か」の判断の隙を与えない、その鮮やかで見事な仕事ぶりといったら。

「こんなティッシュ配り、みたことない!」

ただひたすら感嘆し、わたしは心の中で彼女のことを「ティッシュ配りのプロ」と名付けた。


「さっきから見てますけど、楽しそうに仕事してますね」
笑顔でそう話しかけてくれたのは彼女のほうだった。

「そちらこそ!!ティッシュ配り、すごく上手ですね!!」
彼女の仕事ぶりを感動とともに見ていたわたしが興奮ぎみに話すと


「この仕事、大好きなんです!!」
心から充実したような笑みをたたえ、にっこり。

ティッシュ配りのプロは、誰よりもティッシュ配りを愛してる、そんな事実にわたしは衝撃と興奮を覚えた。

それから、思った。


どんな仕事でもいい。
自分の仕事がどんなに些細なものだとしても
仕事を愛する努力をしよう。


「自分の仕事は価値があるもので、誰かの役に立っている」
そう思ってやる仕事は、何倍も価値のあるものになる。


「けど、本当にやりたかった仕事じゃないし」
そうつぶやきたくなるような
今の自分にとって不本意な仕事だったとしても
「こんな仕事」と思いながら働くのはもったいない。


もし他の人に「そんな仕事」と言われようとも
絶対にこの仕事は誰かのためになっていると信じよう。

仕事に心を添えてみよう。
騙されたと思って。実験だと思って。

トイレ掃除でも駐車場の案内係でも
コンビニのアルバイトでも
工場でもキャバクラでも。


人のために、と思って心を添えた仕事は
きっと誰かの心を潤すから。


そしてそれは自分の心も潤してくれるから。


仕事の価値は給料で決まるのでもなく
誰かに決めてもらうわけでもなく
自分の仕事への心持ちで決まると思うのだ。

それが、たとえティッシュ配りだとしても。

仕事の価値を決めるのは、自分だ。


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