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玉響の逢瀬

私の知っている夏と彼女の知っている夏はおそらく違うだろう。
だけど今晩だけはきっと同じ世界だ。そんな夜がある。

横たわって目を閉じてみて。

背がひやり。
嫋々と枝垂柳。
代わり代わりに虫の声。

ああ。あの時と何も変わっていないんだ。
彼女に近づけたような気がしてどうしてか嬉しいんだ。

ひとつ。ひとつ。
それらを丁寧に私に染み渡らせていく。
そのうちに……ぐにゃりと、世界。

そうしたら、
私も、貴方も、たったひとり。


私とお話してくれるかな。
昔話をしよう。
嫌な、嫌な昔話を。



少しずつ、気持ちが固まってきて。
少しずつだけど、言葉を話せるようになってきたかもしれない。

はじめたきっかけ。続けている理由。
広く言ってしまえば模倣である。そして近づいていくため。

それは貴女のためではなくてすべて私のため。
でもそんなこと分かっていたよね、きっと。

正しい人間になりたくなってしまったの。
私や貴女のためではなく、他人のために。

貴女を見つめ直す必要があるの。
土足で踏み入ってごめんなさいという気持ちはあるけれど、今にも千切れそうな細い糸が私たちの唯一の繋がりであると思うから。

姿は見せなくてもいいから、私と一緒に貴女をなぞらせて。



ああ。そう。
結局あなたもみんなと同じなんだ。
結局みんな同じ道を進んでいくってことなんだ。

別に平気だよ。
どうせ私はひとり。はじめからそうだった。
改めてそれを実感しただけ。

味方なんて最初から誰もいなかったんだ。
ちょっとでも信じようとした私が馬鹿だったんだもんね。

どうせ、結局。




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