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季秋、月は消ゆ。

一巡した。


何が変わったかを考えるより、
何が変わっていないかを考えたほうが早い気がする。


彼女という概念に出会ったあの公園には
きっともう、行くことはできない。

それは近所の公園なんだけど、
方向音痴な私には到底たどり着けないから。

あの場所を案内してくれた人は
きっと多分、私が殺したようなものだろう。


何が変わったかを考えるより、
何を失ったかを考えたほうが早い気がする。


覚えてる。
私はちゃんと覚えてる。

他人の冷ややかな目。
寝そべった時の冷たい感触。
燦然と輝く大きな塊に、セイを主張する小さい命。

人は離れあの場所にも行けず、
秋も消えれば灯火は果てる。

それだけ、覚えてる。


彼女は私にとってすごく大きな存在だ。
彼女にならどんな情も抱けるような気がする。
それほどに強大で複雑な存在だ。

結局本当の彼女に出会えたのは
最初に出会ったあの瞬間だけなのだろうか。
いや、はじめから虚像であることも否定はできないし
時々すれ違う彼女の姿も実は本物である可能性だってある。

最近はもう彼女に縋る意義すら考えるようになってしまった。
彼女の存在なくしては、私は私ではいられない。
間違いないとまでは言えないけれど、多分そう。
だってそういう生き方しか知らないから。

彼女が消えてしまうことがあんなにも恐ろしかったのに
いざ消えかかるとあっさりしている自分がいる。
あまりにも薄情だ。


「人が変わったみたい」
そう言われるようになった。
そんなわけないだろうと思っていた。
そんなことあるはずないだろうと。

自分が自分であることに強い自信を持っていた。
いろいろなことがあって、いろいろな気持ちを抱えて
そのすべてが地続きとなって私を形成しているから。
私は私であることに自信を持っている。

少し前に、過去の自分の日常文章を目にした。
私は本当に変わってしまったのだろうか。
文章を読んだとき、
自分が書いたとは思えないほどの無機質さを感じてしまった。
思考プロセスがまるで理解できない。
それは他人の文字をなぞるのと同じ気分だった。

彼女が何者であるかを考えていたけれど
彼女から見た私もまた何者なのか分からないのかもしれない。


いよいよ、なにもかもが分からなくなってきた。
季節を一巡した結果この有り様である。

私と彼女。
行きつく先はどこへやら。


私も彼女も、藻掻いたままだ。

世界は変わらず、揺れたままだ。

読んでくださりありがとうございます!! ちなみにサポートは私の幸せに直接つながります(訳:おいしいもの食べます)