情死
春は死んだ。
わたしがころした。
春に殺された。
出会いと別れ。
死んでは生まれ。
草木は息絶え、
玉火が芽吹く。
春心はとうに枯れた。
きみは春に似ている。
-----
きみをころせばきみに逢えるだろうか。
わたし?
わたしはいきるよ。
だってわたしがいきていなくちゃあ
どうやってきみを捜すのさ。
ああ、こんなところにいたんだ。
そりゃなかなか見つからないわけだ。
-----
咳が止まらない。
記憶の再燃が止まらない。
花なんて吐けないのに、
あなたのこと、もう思い出せないのに、
-----
「そんなもの地獄以外の何物でもない」
残した言葉をなぞり私は唖然失笑した。
まさに言い得て妙、いつだってすごいのは過去の自分だ。今の私には到底追いつけない。
そうか地獄か。地獄だな。
どうやら地獄にいるらしいんだ。
これは私の推測だけど。
彼女はずっとここにいたのかな。
たまに抜け出して私に会いに来ていたのかな。
初めて彼女に出会った夜。
あれは彼女なりの精一杯の存在証明だったのかもしれない。
あの日のあの世界は、やたらと不安定だったから。
そうだ。きみはそんなふうには笑わないよね。
私にですら身構えさせてしまったのだね。
本当にごめんね。
私がずるい人間だから。私が悪い人間だから。
いいように扱っていたね。ごめんなさい。
忘れないようにするよ。
したいよ。
できるだけ。
ごめん。
ごめんなさい。
-----
意気地なしと言われたその言葉の意味がようやく分かりつつある。
きみって誰よりもじぶんとわたしのことを分かっている。
あのね、ようやく勇気が持てたんだ。
大丈夫、怖くないよ。
私がいつだってそばにいる。
ずっと抱きしめてあげるから。
私はずっとあなたを愛すから。
生まれ変わりなんていらないね。
新しい人生なんていらないよね。
私は生きてきた。
あなたも生きていた。
それ以上のことはないよ。
もう怯えなくていいんだ。
やっときみに触れられる。
どうなるかなんて分からないけど
まあなるようになるさ!
私達そうやって生きてきたね。
私は変わってしまうかもしれないけど
あなたは変わらないけど
私達ならきっと大丈夫。
さあ、足を前に出すだけ。
どうなるのかな。
やっぱり変わるって怖いや。
そう思わない?
さあ、足を前に出すだけ……。
-----
どうか、私のエゴじゃありませんように。
読んでくださりありがとうございます!! ちなみにサポートは私の幸せに直接つながります(訳:おいしいもの食べます)