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【昇り鯉を背負った女】

上半期も今日で終わり、2021年も後半に片足を突っ込み掛けた、 上半期に終わりを告げるのが愛おしいかのように、しとりしとりと雨が降る。
タカシは、バス待ちの間にふいと、
スマホの画面を覗きこむ、、【ニュー○○】
それが、タカシと昇り鯉を背負った女との出会いの切符であるなどど、まだ誰も知る由がない。

昼休憩時、恐る恐るスマホを手に取る、
待ち構えてたかの如く、スマホの画面は、
ぬきナビのページを開いている。
タカシは、類稀な肩幅の持ち主である、
悲運というか、運命というか、
まるで、襟巻きトカゲが敵を威嚇するように、タカシは深く息を吸い込み、大きな肩幅をさらに拡張する。
『よし、これで背後からはスマホの画面を見られない』
タカシの異常とまで言える肩幅の拡張に周囲は気付かない筈はない。
職場の休憩室では空気がより一層重たくなるのを感じる。
だが、誰も声を掛ける事は出来ないのである。 
話を元に戻そう。

タカシは、検索でヒットした【ニュー○○】という店をチェックした。
【フリー¥5000】(*⁰▿⁰*)
ただし、これはあくまで入泉料である。
わかりやすく言えば、お風呂に入るだけの値段である。
今日は、職場のコーヒー会の会費でお金を徴収された為、少し寂しい財布が悲鳴をあげる。 
『ちっ、コーヒー豆を買うくらいなら女の豆をつまみたいぜっ』
タカシは、荒れていた。

そんなこんなで、休憩時間が終わり
チャイムが鳴るのであった。

16:30 これが今のタカシの定時時間である。
16:31 無言でタイムカードをタッチする。
無駄という、無駄を省いたタカシの行動には、周囲も驚きを隠せない。
タカシは入社以来、心に決めている事がある。
それは【去り際の美学】である。
いかに、スムーズに去るのか、はたまた、散らかして去るのか
それは、また別の機会に話をする事としよう。

16:46 目指すバス停に向けて定刻通りのバスに乗り込む。
ここで、問題発生。
タカシが普段乗るバスでは無いため、
先輩社員とバスが被ってしまったのである。
このままでは、計画が全て水泡と化してしまう。
タカシは、息を潜めバスに乗り込む。
このとき、偶然乗り合わせたA子は鮮明に状況を証言する。
『初めは肩幅が大きい男性がバスに乗ったとおもったんですけど、気付いたら、凄い小さく丸まっていて、人間って、こんなに身体をコンパクトにまとめる事ができるんだって、感心したのを覚えています。』
そう、タカシは類まれなアサシン能力も持ち合わせている。

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