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いつだって姫か猫でいたいんだ

もう遠い昔、付き合っていた人は、私をかわいいかわいいと、事あるごとに言ってくれた。
それはもう、息をするかのように、普通に、当たり前に、隙あれば…と言う感じで。
あるときは面と向かって、あるときは何気なく呟くように、またあるときはため息混じりに。
『かわいい』は私にとって、小さい子を寝かしつける時の『トントン』と同じような、安心できて幸せを感じられる魔法の言葉だった。

その魔法は、一緒にいるときだけでなく、電話での会話の中でも、メールの文章の中でも『かわいいなぁ』は、いつでもどんなときでも発動した。

女の人が何にでも、かわいいを連呼するのはわからないでもないが、男の人でこんなにも口にするのは珍しいのでは?と思っていた。

ひょっとして、誰にでもそうなのかと思った事もあるが、何となく普段の様子を見ていると、どちらかと言うと言葉少なで、女性にたいしてもクールで大人しいタイプのように見えた。

お世辞とか調子の良いことは口に出さないけど、愛情表現はストレートで、キチンとことばで伝えてくれる人だった。
車に乗っている時によく『わがままお姫さま』とか『わがまま子猫』とかいいながら、いろいろと私の世話をやいてくれた。

本当に、無条件に安心出来て、心地のよい関係だった。

私は特にわがままを言って困らせたりすることも、我を通すこともなかったし、そう言う事が出来ない性分だとわかっていたからこそ、あえて『わがままお姫さま』のような言葉を使って、わがままを言いやすいようにしてくれたのかもしれない。

自分から甘えたり、頼ったり出来ない性格の、可愛いげのない私は、彼のように甘やかしてくれる人がいい。
ただわがままを聞くのではなく、相手がどうしたら喜んでくれるか?どうしたら笑顔でいてくれるか?それを考えつつ、お互いの目指す目的が一致することを与えてくれた彼は、最高の人だった。
彼氏としても、友人としても。

いつだって、自分の事を『お姫さま』や『仔猫』のように優しく大切に扱って欲しいんだ。
単なるわがままで、夢物語だとしても、そんな風に扱ってくれる存在に出会えたら、オンナノコは最高に輝いて幸せな気分になれるんだ。

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