シンガポールの中国茶専門店・Pek Sin Choon(白新春茶莊)を訪ねて
先日訪問したのが、1952年にシンガポールで創業し、チャイナタウンに店を構える中国茶専門店「Pek Sin Choon(白新春茶莊)」。
シンガポールのローカルフード・肉骨茶(バクテー)には中国茶が欠かせないが、国内のバクテー店の8割がこの店から仕入れているとも言われている。
バクテーの有名店「Song Fa Bak Kut Teh」は、50年ほど取引きがあるそうだ。
※撮影許可をいただいております
店舗といっても雑多で、こじんまりとした空間。一見、気軽に入りづらい雰囲気だが、ご心配なく。話好きのオーナーが笑顔で迎えてくれる。
店に入るとまず目を引くのが、このテーブルーーーというよりは、さながら大きな「茶盤」。
茶盤とは、中国茶の世界では茶壷と呼ばれる急須や茶杯にお湯をかける際、こぼした湯を受けるトレイのことを指す。
棚田のような段々の構造がよくできていて、湯を下へ下へと流し、ホースを伝って排水する仕組みになっていた。
この「茶盤」の上に並ぶ茶器は、客の試飲用ではなく、オーナーが原料をテイスティングするためのものなのだそう。
ここだけの話、お言葉に甘えて少し飲ませていただいたのだが。
茶葉は店頭で一つひとつ紙に包んでいる。この日もアンティーが精を出していた。
さて、この日購入したのは、飲み比べできる「ティーギフトセット」48ドル。
6種類の茶葉と、セラミックの茶壷(急須)と茶杯がセットになっている。リーフレットによると、缶の蓋は茶盤として使うことができるとのこと。実際に使うのには少し抵抗があるが……。
急須にはチャイナタウン(牛車水)にちなみ、水牛と少年のモチーフがついている。それぞれ、店名の裏印入りだ。
最初に淹れたのは「PING PONG」。パッケージのイラストは、創業者の祖国である中国の卓球選手が大会で初めて決勝に進出したことを祝って作ったもの。癖がなく、すっきりとした味わいだった。
すべて飲んだら、次は好みの茶葉を購入しに行こう。
中国茶を買いに来たら、ぜひ立ち寄ってほしい店が右隣にある。「Thai Thong Cake Shop(大同餅家)」という昔ながらのペイストリーだ。
月餅を期待して覗いたが……中秋節だけなのかもしれない。代わりといってはなんだが、月餅にもよく使われている蓮の実の餡が入った「蓮容餅」を購入した。
言わずもがな、中国茶との相性は抜群である。
シンガポールは中国茶より「コピ(コーヒー)」や「テ(紅茶)」、「マイロ(ミロ)」といった甘い飲み物の方が親しまれているが、中国茶も負けてはいないなと思った。
シンガポールに来て、中国茶のことがますます好きになりそうな予感。