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衛星データによるCO2モニター

こんにちは豆蔵note編集室です!
今回は豆蔵技術情報より、【衛星データによるCO2モニター】をご紹介します。

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それではどうぞ!

AI技術チームの林(リン)です。今回は、二酸化炭素(CO2)の大気濃度とその変化を衛星データからマッピングする方法及びその活用について紹介します。

地球温暖化とCO2監視

国際社会において、脱炭素社会へ向けた取り組みが大きな課題となっています。CO2をはじめとする温室効果ガスによって地球温暖化が進行すると海面上昇や異常気象が引き起こされ、自然災害の発生リスクが高まり、私たちの生活にも大きな影響を与えると考えられています。SDGs (Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標) の目標13には「気候変動に具体的な対策を」という項目があり、人類が将来に渡って持続的に社会生活を営んでいくためには温暖化への対策が必要であることは世界的に共有されています。

CO2は人間のあらゆる社会活動に伴って放出されるため、国や公共団体だけでなく、民間の事業者も削減への貢献が求められています。「脱炭素経営」という言葉も使われ始めているように、すでに多くの事業者がカーボンニュートラルへの取り組みに関心を持っています。事業者はいち早くCO2削減に取り組むことで、エネルギー供給構造の変化にいち早く対応し、競争優位性が確保できると考えています。また、CO2削減に積極的な企業の株は「脱炭素銘柄」として注目を浴びているという事実もあります。

カーボンニュートラルに向けた取り組みを行うためには、まずCO2の放出と周辺環境への影響をモニタリングする必要があります。CO2は無色透明で臭いもなく、どこにどの程度あり、それがどのように変化しているかを人間が直接感じることは不可能です。

そこで、人工衛星の観測によるCO2の計測手法をご紹介いたします。衛星の利点は広範囲を一度に観測できること、定期的な観測により時間変化を知ることができることであり、またセンサーを設置する必要がなくデータが得られるというのも大きな特徴です。CO2は放出されてすぐに拡散してしまい、風の影響も受けやすいため、個別の事業所からのCO2放出量を衛星データから推定することは簡単ではありませんが、発電所からのCO2放出量を推定する研究はすでに多数行われており、大規模な事業所からのCO2放出量をモニタリングすることは原理的には可能だと考えられます。

CO2濃度の推定に必要なデータを取得している衛星は日本の「いぶき」衛星をはじめとして複数あり、公共機関により運用されてデータが無償公開されているものもあります。ここではそのような例の1つであるNASAが打ち上げた「Orbiting Carbon Observatory 2(OCO-2)」衛星のご紹介と、そのデータを使用し、我々の分析による東京周辺のCO2年間変化の監視例をご紹介いたします。

OCO-2:CO2濃度測定衛星

OCO-2衛星 (図(1))の目標は地球の大気中のCO2濃度を測定し、炭素循環や、CO2の分布に影響を与える自然のプロセスや人間の活動についての理解を深めることです。OCO-2は2014年に打ち上げられ、太陽同期軌道で16日に地球を一周回ります [3]。

衛星に搭載されている分光器は、地表で反射された太陽光を測定します。CO2分子はいろいろな波長の光を吸収するため、大気を通過した光のスペクトルには特徴的なスペクトル線が見えます。OCO-2は観測された光のスペクトルにより大気中のCO2成分を測定することができます。

OCO-2は、ナディア(Nadir)という観測モードで衛星の真下のCO2データを収集することができます。図(2)はナディアモードの観測方法を示しています(Nadir Viewの部分に対応しています)。ナディアモードでは、データは衛星の真下の地上軌跡に沿って収集されるため、地表の空間分解能が最も高く、雲が多い地域や地形の変化が大きい場所でも質の高いデータを得ることができます。衛星が通過した位置で観測された大気のCO2濃度データをある程度集めると、図(3)のように、地域ごとのCO2の濃度分布をマッピングすることができます。全ての場所で測定したCO2濃度を可視化するとグローバルなCO2分布が明らかになります。

図(1) OCO-2衛星。(引用元:NASA/JPL)
図(2) 二種類の衛星観測モード:ナディアビュー(Nadir View)とリムビュー (Limb View)。(引用元:NASA)
図(3) CO2濃度のグローバル分布。1ヶ月間にナディアモードにより収集したデータを地図上に投影しCO2濃度を可視化した結果(CO2濃度の単位はppm)。(引用元:GES DISC)

OCO-2データの活用:東京周辺のCO2年間変化

図(4)は、我々が分析を行ったOCO-2データによる首都圏範囲内のCO2濃度を可視化した結果です。左図の結果は2015年から2016まで2年間の収集したデータで、右の図は2019から2020まで2年間収集したデータの可視化結果です。この結果により、首都圏範囲内の2年間平均CO2濃度は明らかに上昇したことがわかります。

衛星データを活用することで、長期間・広範囲の時空間データを把握でき、将来的なCO2放出量の予測や、放出要因(工場、人類活動など)の分析に役立つと考えられます。CO2の監視モニターを活用することでCO2の濃度と経済活動の関連を表すことが期待されています。

図(4) 首都圏範囲内のCO2濃度を可視化した結果。

今回の情報発信記事では、衛星データの利活用事例として、衛星データに新たな価値を与えることを紹介しました。衛星データを使用することで様々な課題が解決できると期待されており、豆蔵ではCO2濃度モニタリングを含め、衛星データの利活用サービスを提供しております。また、CO2濃度モニタリング以外の衛星データの分析方法や応用も積極的に開発しています。

参考文献

[1]R. Nassar et al., “Advances in quantifying power plant CO2 emissions with OCO-2,” Remote Sens. Environ., 264, 112579, 2021.[2]Y. Hu and Y. Shi, “Estimating CO2 Emissions from Large Scale Coal-Fired Power Plants Using OCO-2 Observations and Emission Inventories,” Atmosphere, 12(7), 811, 2021.[3]D. Crisp, "Measuring atmospheric carbon dioxide from space with the Orbiting Carbon Observatory-2 (OCO-2)," Proc. SPIE 9607. 960702, 2015.

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