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2022春アニメ感想まとめ

2022春アニメの感想をランキング形式でまとめています。


<28位> 理系が恋に落ちたので証明してみた。r=1-sinθ

評価:B-

お気に入りキャラ:棘田恵那

AがBを好きである条件とは、「A本人がBを好きであると認識している事」である。極めてシンプルかつ当たり前のような結論であるが、かのガリレオ先生も「無駄な実験など一つもない。もし成果が出なくてもその方法では駄目だと分かるのだから」(意訳)と仰っていた。よって、これまでの紆余曲折はけして無駄などではなく、幾多の仮説を削ぎ落としこの結論に達するために必要なプロセスだったのだ…とでも言うかと思ったかい?正直、肩透かし感は否めないが二人が幸せそうだしこれでいいのかもしれない。サッカーの戦術然り、突き詰めていくほどシンプルに収まるのは世の常なのだから。後半の奏パートは相手の男の本性がクソだったことはともかくとして、さすがに彼にちょっと同情しちゃうかな…。氷室も奏が雪村を好きだということを受け入れて普通に実験にしようとするなんてちょっとおかしいよ。視聴後のシンプルな感想→「何がなんだか分からない…」


<27位> 盾の勇者の成り上がり

評価:B-

お気に入りキャラ:ラフタリア

『本好きの下剋上』が原作終盤に至っても「下剋上」要素を保ち続けているのに対し、本作品は2期開始時点で「成り上がり」要素はほぼ無くなっており、作品としてのアイデンティティは希薄になったと言わざるを得ない。その分、通常の異世界ものとして特筆すべき点があればまだ良かったのだが、純粋にストーリーも盛り上がりに欠け無駄に世界観を広げてしまっただけに思えてしまったのは非常に残念。特に「霊亀」が四神の玄武を彷彿とさせることから、これがあと3回も続くかと思うと気が滅入る。正直、ラフタリアが「刀の勇者」に選ばれたことによって奴隷紋が消滅した件の方がよほど重大事項であり、尚文に対する心の拠り所としてきた隷属の絆を捨て去ること、同じ勇者として対等な立場で彼の隣に並ぶことは彼女にとっては一大決心だったはず。それが思いの外あっさりとした描写に留まったのは非常に惜しく、演出面への選択に疑問を感じずにはいられなかった。


<26位> 骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中

評価:B

お気に入りキャラ:アリアン

今期はいわゆる「なろう系」は無条件で断念と判断したくなるような作品数であったが、作画も丁寧だし骸骨騎士様もなかなか紳士的だしでこれは視聴すべきと思い直した次第。個人的には「なろう系」も別にそれだけで偏見を持つような存在ではないんだけど、その膨大な競争率の中から這い上がった作品にはやっぱり一目置きたくなる気持ちはあるわね。結果的にはその甲斐があったとまでは言えないのがちと残念ではあるのだが、アークの鎧姿にCG感が無かったのは数少ない評価点。こういう常に画面に見えている要素に違和感を感じないというのは地味に大事。ただ、やはり主人公が骸骨騎士であったのは表現の選択肢に進んで枷を掛けてしまっていた感は否めず、文章主体のラノベならともかくアニメとしては面白みに欠けたと言わざるを得ない。せめて呪いが解けた後のアークの素顔を見てみたかったけど、原作ではそういう展開になったのかな…?


<25位> まちカドまぞく 2丁目

評価:B

お気に入りキャラ:吉田優子(シャミ子)

「シャミ子が悪いんだよ」のインターネットミームを生み出すまでに至った1期の勢いは感じられなかったというのが2期の率直な感想。そもそも「シャドウミストレス優子→シャミ子」の流れが既にストーリーのギャグ描写として成立していて「シャミ子」という呼称で呼ばれるだけで楽しかった1期と比べるのも酷な気はするが、吉田家の極貧生活や機械への対応力の低さなど日常系作品としての魅力的な描写そのものがパワーダウンしてしまった感は否めない。ストーリーのシリアス面にしてもシャミ子と桃が既に魔族と魔法少女の枠を超えた友情を築いてしまっており、この二人なら心配しなくても大丈夫でしょとしか捉えられなくなってしまっているのは残念。これはまさしく原作の「危機管理」が足りていなかった可能性すらあり、強烈な個性を持つ新キャラのようなテコ入れはもはや必須なのでは。個人的には『ジャヒー様』の魔法少女がかなり好みだったんだけどなぁ…。


<24位> このヒーラー、めんどくさい

評価:B+

お気に入りキャラ:カーラ

これは作画が良すぎても逆にダメなやつやね(笑 ヒーラーのカーラの一挙手一投足がめんどくさくて絶妙に「イラッ☆」(←この☆がポイント)とさせてくるセンスが実にいい塩梅である。最初はツッコミ役を『このすば』のカズマに任せたら本気でお笑い界の頂点取れるんじゃと思ったけど、カズマは妙に頭の回転も早いから的確にカーラにやり返してしまいそう。さすがにそれは可哀そうなので、ちゃんとやられてあげるアルヴィンとのコンビがやはりベストやろね。そのアルヴィンであるが、鎧兜で顔を隠してしまっている点はちと気になった。カーラの絶妙に人を小馬鹿にしているような下がり眉しかり、表情はギャグ描写において非常に重要な代物。あえて枷をはめてしまうのは惜しい気がするのだが、作者にその真意を聞いてみたいところ。そして、今期の真の癒手ヒーラーを決するべく『ヒーラー・ガール』とエイプリルフールネタでまさかの共演。こういう悪ノリ、嫌いじゃない(笑


<23位> 可愛いだけじゃない式守さん

評価:B+

お気に入りキャラ:八満結はちみつゆい

式守さんが可愛いことに異論の余地は無いのだが、「可愛いだけじゃなくカッコいい」の萌えポイントのツボがイマイチ分からない気はした。ハマる人にはそこがいい!…となるのだろうか?もしかしたら、カッコいい系のヒロインが実は乙女チックな側面も持っていて…というのはド定番なので、それをひっくり返してみましたというのが本作品の狙いなのかもしれない。だとしたら、もう少し式守さんのキャラも普段はより守ってあげたくなるような方向性に寄せた方がギャップ演出としては面白かったかもしれない。そんな中、バレー部のエースの狼谷かみやさんのキャラが正にそのド定番のとおりであり、彼女のクールな外見に秘めた恋心にきちんと気付いてあげた上で優しく胸を貸してあげる屋上シーンでの式守さんこそが一番カッコよかった件。こうやって男顔負けのキリッとした顔で決めなくても、本質的な意味でのカッコよさを突き詰める路線の方が自分は好みだったかな…。


<22位> 本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません

評価:B+

お気に入りキャラ:マイン

原作勢なら誰しもが最終話のあの場面をどれだけ感動的に仕上げるかが最大の注目点であったであろう「神殿の巫女見習い編」の後半戦。マインにとって何よりも大事な存在であった家族と別れ、貴族として生きることとなる重要な分岐点であるが、原作ではバスタオル必至だったけどアニメはハンカチで間に合ったかなといった感じのややあっさり風味。作画もアニメ基準では随分綺麗になったが、ここまでが限界かなという頭打ち感は否めない。今期の『キングダム』然り、こうした長大な原作を持つ作品の場合、制作陣は全てをやり切ったという達成感も得にくいだろうし、完結までの果てしない道中のアニメ化は常にリアルタイムの原作よりは見劣りがちになる。そしてそれは、原作の挿絵があまりに美麗な本作品ならなおさらである。そういう意味で本作品のアニメ化は必須必勝の一手とは言い難く、どこまで続けるのかという判断を常に迫られることとなるだろう。


<21位> 処刑少女の生きる道バージンロード

評価:B+

お気に入りキャラ:マノン・リベール

異世界に召喚された無垢な迷い人の少女を殺す使命を背負った処刑人の少女の「彼女が彼女を殺すための物語」。設定だけなら中二感丸出しのようにも思えるが存外しっかりとシナリオは練られており、アカリが「時」の純粋概念を持つことによる視聴者にn周目の世界線を意識させる効果はなかなか侮れない。旅をきっかけにメノウの心にアカリが徐々に浸食していくことは既定路線といったところだが、(少なくともメノウの目線では)アカリの天真爛漫で心から自分を慕ってくれる様にほだされて…というのが若干見応えとしては弱かったかもしれない。この点、いっそメノウの立ち位置が男性であっても面白かったかなという思いも。それなら当然恋愛絡みの情も湧いてくるし、モモ(こちらは性別変更なし希望)の嫉妬の感情なんかもより美味しくいただけるものになっただろうし。総じて、減点法なら高得点だがどこか飛び抜けた要素には欠けた惜しい作品であった。


<20位> マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 Final SEASON -浅き夢の暁-

評価:A-

お気に入りキャラ:由比鶴乃

まどマギ外伝もこれにて完結。内容はまさしく、これまで(ちょっぴり我慢して)見てきたことは無駄じゃなかったと思えるものであり、物語の集大成としてきちんと落としどころを作った点は非常に良かった。また、灯花、ねむ、ういといろはの過去、そして「マギウスの翼」の結成に至るゼロの物語がようやく明らかになり、それが「僕たちは失敗した」という言葉に収束する展開も”終わりの始まり”への惹き込みとしては見事。しかし、ただでさえ視聴作品の選定に忙しいクール最序盤に全4話を一挙放送してしまうというのは「そりゃ悪手だろ」と言いたくなってしまったのも事実であり、放送後すぐ見ないと死んでしまう病に罹患している自分にとってはかなり負担が大きかった。しかるべきタイミングで劇場版として公開していればもっと満足感は高かったであろうし、それに耐えうるクオリティも十分にあったので余計に残念。あとは、原作ゲーム勢の評価が気になるところ…。


<19位> サマータイムレンダ

評価:A-

お気に入りキャラ:小舟澪

事件の真相の追求への道筋に「影」という不確定なSF要素が混じることには賛否両論あるだろうが、こうした予測不能もといなんでもありな要素は、瞬時に読者の考察が広まるネット社会において作品の自己防衛機能としては実はかなり効果的なのかもしれない。欲を言うなら『寄生獣』のように、不気味なだけでなく未知の生命体を通じて人間そのものの在り方を問うというような方向性に向かってくれたら見応えも増すのだが、それは後半クールに期待か。せっかくの本格的なサスペンスなので物語の最後までを描いてほしいのだが、原作は既に完結しているようなのでそこは一安心。各クールの膨大な作品数の中においては、このような時間を掛けて考察してこそ真価を発揮する作品は勝負がしづらいのかもしれないが、制作サイドにはそこは諦めて欲しくはない。ストーリー重視の作品が埋もれていかないような土壌を少なくとも自分は意識していくようにしたい。


<18位> 魔法使い黎明期

評価:A-

お気に入りキャラ:ホルト

B級の雰囲気を漂わせながら随所に光るものはある作品…と表現してしまうのはさすがに失礼か。しかし、序盤に視聴断念を踏みとどまらせた魔女ようじょのロス先生のクセになるキュートなダミ声、キャラデザが一級品のホルトなど、これを見られなくなるのは惜しいと思わせる要素が多くあるのでなんだかんだ視聴できてしまうという状況を最も適切に表現すればそうなるのだ(『ファルコン伝説』のルーシー然り(古い)、褐色肌に赤系統の髪って組合わせがすごく好みなのよね。)。ストーリーについても、セブ、ホルト、クドーの凸凹トリオのお互いに文句を言い合いながらも育まれていく友情は心に響き、ホルトのセブへの恋心などはもし報われていれば評価はあと一段階上がったことは想像に難くない。最後に、自分の推しヒロインに枠外からフラグを立てるのはホント勘弁な。ホルトと暴虐のカップリングなんて自分は認めない。まさか、ホントにそうなったりしないよな…(ゴクリ


<17位> CUE!

評価:A-

お気に入りキャラ:九条柚葉

総勢16名と相変わらず人数が多いのでなかなか名前が覚えられないまま最終話を迎えてしまったが、2クール放送だけあって尺も十分であり、特に後半クールは(締めに向かっているというメタ的な理由はあるだろうが)視聴後に爽やかな感動を覚える各チームやカップリングの掘り下げ回が中心となっていたのは非常に良かった。そして後半クールの見所といえば、やはり「産廃チーム」の躍進だろう。成り行きながらもリーダーを務めることとなった利恵を中心に、仕事も徐々に増え絆を深めていく様は、彼女たちのこれまでがけして間違っていなかったことを見事に証明してくれた。「はじまりのおわり」というタイトルが示すように、声優としての本当の勝負はさあこれからというところで最終話を迎えたわけであるが、原作ゲームがこのタイミングに及んでサービス停止中なのは本当に惜しい。総じて、「想定よりも」の域は出ないものの楽しく視聴ができた作品であった。


<16位> キングダム

評価:A

お気に入りキャラ:信

原作(コミックス)は最近は勢いが落ちてきたかなと感じることも多いのだが、こうして「あって当たり前」だったかつての熱気がアニメによって甦るのはやはり良いものである。「成蟜せいきょうの変」ではかつての不遜で傲慢な振舞いが嘘であったかのように人間的に大きく成長を遂げた成蟜の姿が描かれ、史実もこうあってほしいと願わずにはいられない見事な最期であった。魏国との「著雍ちょよう攻略戦」では信や王賁おうほんら若手の台頭と躍進が描かれ、他国にもその武勇が広がり彼らの時代が幕開けつつあるのが感じ取れる。史実では王賁や蒙恬もうてんよりも扱いは小さい信(李信りしん)であるが、今回の著雍においても王賁の才覚はやはり抜けており、あのとうを以てして作戦を一任される存在にまで成長している。信においても時には羌瘣きょうかい河了貂かりょうてんを戦術的に凌ぐ「本能型」としての勘所が冴える描写は増えてきており、単純な武勇のみでなくそうした風格も備えていく過程が今から待ち遠しい。


<15位> ラブオールプレー

評価:A

お気に入りキャラ:水嶋里佳

前期の『リーマンズクラブ』の方がバドミントンとしての躍動感の質は断然上だが、明らかにこちらの方が見やすくなにより面白い。奇をてらわない学生の部活動としての直球勝負、不自然なまでに女の子キャラを排除しすぎず青春要素として必要分だけを配置するバランス感覚も良き。男子同士の友情描写もホモォな雰囲気とは無縁でむしろ熱く、涙腺が積極的に刺激されるのはこういうのでいいんだよこういうので。このように全ての要素が一級品とまでは呼べなくとも、シンプルに余計なことをアレコレ考えすぎずに「俺たちができる最大限のプレーをする、今はそれだけ考えよう!」を地で行く堅実な作りには大いに好感が持てる。加えて、その美貌もさることながら要所要所で良い働きをしてくれる主人公の亮の姉である里佳の存在も非常に大きい。2クール放送にしては展開が早いと思ったら後半戦では新入生が入る予感もあるので、引き続き楽しみにしていきたい。


<14位> 恋は世界征服のあとで

評価:A

お気に入りキャラ:禍原デス美(死神王女)

個人的今期の贔屓枠。ヒーロー戦隊のリーダー(当然のようにレッド)と悪の組織の戦闘員リーダー(≒女幹部)の禁断のお付き合いというありそうでなかった設定は個人的に大いにツボであり、とにもかくにもヒロインのデス美がしっかりと可愛いのが一番大事。その点、本作品はそこを存分に心得ている。二人の関係性に関する(作中世界の)世間の反応が鈍すぎたり、お互いに一向にとどめを刺そうとしなかったりとツッコミどころは満載なのだが、もうこれは皆がお約束みたいな感覚で微笑ましく「ジェラート5」と「ゲッコー」の闘いぶりをお茶の間で楽しんでいるに違いない。この他、個人的にツボだったのがOPでのお色気が眼福な美咲姉さんことイエロージェラートのしなやかかつシュールな謎決めポーズ。自分は女性的ですごくカッコいいと思うのだが少数派だろうか?ヒーロー戦隊ものには詳しくないのが惜しいのだが、きっと「分かっている感」もあったと思うのよね。


<13位> パリピ孔明

評価:A

お気に入りキャラ:久遠七海

今期の作品の中で最もアニメ化による伸びしろを感じた作品。音楽の世界が舞台となっているので、単純に地力を備えた「歌い手」を抜擢することによる作品と彼女たち自身にとっての相乗効果は疑いようがなく、お互いにWin-Winの関係性が築けたといえるのではないだろうか。あの諸葛亮孔明が現代の日本に転生したらというまさかの設定も面白く、三国志ファンからするとあまりに「パリピ」感を出されても戸惑いの方が大きくなってしまうことが憂慮されたが、思いの外孔明は孔明であり、多くの日本人の抱くイメージどおり生真面目で一度助力を惜しまないと決めた相手にはとことん一途に誠実に接するという根幹の魅力は損なわれていないのが非常に良かった。英子や七海の「民草」の心に響く歌唱力、唐澤の手腕など説得力のあるビジネス要素もあり、これもある意味P.A.WORKSお家芸の「お仕事シリーズ」の一環であったともいえるのではないだろうか(笑


<12位> ダンス・ダンス・ダンスール

評価:A

お気に入りキャラ:生川おいかわ夏姫

クラシックバレエを題材としながらも男子高校生が主人公である本作品。とはいえ、女性も普通に登場するのでスポ根的な観点からはむしろ王道系のシナリオといえるか。さすがのMAPPAだけあって、(少なくとも素人目には)バレエの動きに違和感を持つことなく視聴することができたのは僥倖である。そして、潤平が生まれ持った体の作りや物語を体現する感性などバレエに必要な素質には溢れ、足りないのは経験だけといういわゆる「桜木花道系」の最強の初心者であったのもストレスが溜まりにくく、その真っ直ぐかつ破天荒な振舞いにスカッとする場面もしばしば。案の定深刻な尺不足感は否めなかったものの、一応区切りの良いところまではやってくれたのでそれなりに見応えはあったが、潤平と夏姫のこれからに期待を寄せていた身としては2クール放送でなかったことが惜しくてならない。『ボールルームへようこそ』に続いて2期待ちの作品がまた増えたなあ…。


<11位> くノ一ツバキの胸の内

評価:A

お気に入りキャラ:丑班(シオン、スズラン、アジサイ)

『からかい上手の高木さん』の山本先生による“男子禁制”くノ一日常コメディ。全12班総勢36名のくノ一たちが一堂に会する様は実に賑やかだが、不思議と顔の見分けも付くようになってしまうのは不思議なものである。忍者キャラは一人だけ混じることでその世間ずれした特性が際立つ存在であるが、本作品は全員がくノ一であるのでその手法は通用しない。必然的に各キャラの個性そのもので差別化していくことになるのだが、一見無秩序に班分けされていたように思えた班員が伝統的な「班決め」の方法により決められていたというエピソードは実にエモく、作品自体の評価も急上昇した(方向音痴組が亥班であるのも大納得)。個人的なお気に入りは丑班のアジサイが猫可愛がりをしてくる上級生に不満を爆発させるエピソードで、関係性的には丑班が最も好き。あとは、上級生か下級生かの判断をしづらいキャラもいたので公式サイトに記載して欲しかったところ…。


<10位> ヒーラー・ガール

評価:A+

お気に入りキャラ:五城玲美

キービジュアルからはそこまでの吸引力は感じられなかったものの、美しい歌声を前面に押し出すミュージカル風の作風はそれを瞬時に覆させるだけの説得力を十分に持ち合わせていた。とにもかくにも声優陣の美声が耳に心地よく、視聴時はイヤホン大推奨。見習いヒーラー役の声優陣のアニメ出演歴は浅いようだが、その分本作品に対する意気込みはなおさら大きいものになったはず。毎週の放送でその歌声を聴く度に彼女たちのレコーディングまでの弛まぬ努力とレッスンの日々、この瞬間に込める思いみたいなものが伝わってきて、キャラとしての感情表現を通り越してなんだかひたすらにエモかった。こうやって劇中外の要素を意識しながら視聴するのって一長一短だとは思うけど、本作品については良い方向に転んだと言ってよいのではないだろうか。そして実は本アニメは「ヒーラーガールズ」プロジェクトの一環でもあるらしい。これは今後も要注目だな…。


<9位> 古見さんは、コミュ症です。

評価:A+

お気に入りキャラ:中々思春なかなかおもはる

なんだか間隔が狭かったような気がする2期。最も注目すべきは古見さんと只野くんのもはや否定できない恋愛感情になるんだろうけど、「もう」なのか「やっと」なのかは解釈が分かれるところだろうか。自分の中では「然り」という思いもある一方で「結局」という思いも並存しているあたり複雑な気持ちではあるのだが、二人のことは素直に応援したい。個性的なクラスメイトも新顔が増えたが、やはり村川ボイスが絶好調のなじみや相変わらずのイカレ具合の山井さんらの初期勢がド安定。特に中々さんは妄想に出てきた「そうであろう?」のシチュが破壊力ありすぎだった。これは妄想エピソードランキング圧倒的1位も大納得。そんな中、個人的に密かに注目しているのが山井さんグループのダクネス聖騎士っぽい子。名前は「岸姫子」というらしい。ボイスが付いてるのか怪しいレベルだけど、今後出番はあるのかなぁ…。クラス替えの結果も気になるので3期もはよ。


<8位> トモダチゲーム

評価:A+

お気に入りキャラ:片切友一

個人的今期のダークホース枠。「トモダチゲーム」という人間の醜い本性を暴き出そうとする底意地の悪い借金返済ゲームは、各作品で同様の展開はあれどこれをメインに据えるのはありそうでなかった試みである。こうした胸糞展開の連続は長期的なシナリオには不向きなのではと思っていたところ、「疑心暗鬼」という要素を軸に仲間への疑いを誘発しながらもそれを乗り越えた末の固い友情というカタルシス、そして運営サイドへと向けられるヘイトによる意趣返しの爽快感には唸らせられた。そして、その中核を担うのは片切友一というどこまでも底が見えない不気味かつ次は何を仕掛けてくるのかという期待を大いに煽られる主人公のおかげであるのは言うまでもない。主題そのものに中二感はあれど、それを長期的なシナリオに視聴者を飽きさせることなく落とし込む手腕は見事という他なく、リアルタイムで追うことが楽しみな作品であったといえるだろう。


<7位> ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

評価:A+

お気に入りキャラ:高咲侑 近江彼方 三船栞子

「スクスタ」未プレイ勢の自分でも噂には聞くメインストーリーの炎上騒動。その問題点の中核を担っていた3人が満を持して登場ということで相応の覚悟を持って視聴に臨んだのだが、蓋を開けてみれば甘口の普通に美味しいカレーだった件。「2周目の世界」という表現もあったそうだが、幾多の世界線を乗り越えて遂に大団円への道を突き進んでいるかのような安心感は、これこそが正史であると納得せざるを得ない出来映えである。果たして炎上騒動を知らずに純粋にアニメを楽しめた層がどれだけいたのかは定かでないが、「同好会」から「部」への昇格を拒否するシーンなどは、メタ的な意思を感じずにはいられなかった。既存メンバーのユニット活動などはメンバー選定にもきちんと意味が添えられていたのは好感が持て、新加入のメンバーも含めて1クールという尺を上手く使えていたのでは。自分はもう侑ちゃんがたくさん見られただけで割と満足だったわね。

【新メンバー総括コメント】

三船栞子
新加入の3人の中では一番のお気に入り。生真面目なキャラと野性味を感じさせる八重歯とのギャップが素晴らしい。スクスタストーリーでは暴政を敷いていたようだが、その信条は自分の中にだけ押し留めれば只のあと一歩自信が持てなかった可愛い女の子だった件。そして、安直に眼鏡キャラにしなかった英断を褒め称えたい。

鐘嵐珠ショウ・ランジュ
同好会メンバーは常にウェルカム状態だったにもかかわらず、勝手に孤高ぶって勝手に萎んで勝手にデレただけの一人相撲だった気がしないでもないが、「どこか寂しそう」というのは終始変わらない彼女の印象だったわね。ファンとの距離感も含め、個人を重んじる「同好会」の方向性とは最初からズレていなかったとは思う。

ミア・テイラー
彼女のソロ曲「stars we chase」は個人的に2期で最もお気に入りの曲。彼女のためにと希望を込めた想いは巡り巡って自分を照らす光になった、という歌詞は実に心に染みる。そうしたバッググラウンドが丁寧に描かれていたという意味では、新メンバーの中で最も完成度が高かったのは実は彼女だったのかもしれない。


<6位> アオアシ

評価:A+

お気に入りキャラ:一条花

大正義サッカーを題材とする長期連載の作品とあれば、そのハードルは否が応でも高いものになる。本作品においては「本格派」という言葉が相応しい戦術論に重きを置いた描写が強みであり、これは今後もストーリーの中核を担い続けるだろう。その点、主人公の葦人あしとがワンマンプレーに溺れ戦術論に無知であったが故に逆境に晒される様子がしばしば描かれており、それを秘めた才能と吸収力で自らのものにして乗り越えていくカタルシスが大きな見所となっている。高校サッカーではなくクラブのユースチームという特殊性もそれに拍車をかけており、「プロの世界」までの道筋を描くことに背水の陣で臨む作者の覚悟が見てとれる。今後の注目点としては逆境と成功体験のバランス感覚であり、その匙加減でリアリティの感じ方はまるで異なってくるだろう。葦人の成長と共にどんどん魅力が増しているのは間違いないので、引き続き本格派路線を大いに楽しみたい。


<5位> SPY×FAMILY

評価:S-

お気に入りキャラ:アーニャ・フォージャー

制作側・視聴者側双方からの期待感…もとい使命感がヒシヒシと感じられる今期の大本命。これからのアニメ業界を担っていくであろうWIT STUDIO×CloverWorksという制作環境も計算通りの回答を示し、まずは一安心といったところだろうか。本作品においてはロイドのコミカルなハードボイルド、ヨルのポンコツな美しさもさることながら「一にアーニャ、二にアーニャ、三、四がなくて五にアーニャ」と言っても過言ではないぐらい彼女の魅力が飛び抜けており、そのロリっ娘として完成されたキャラデザや表情の豊かさは基より、これまでの寂しさを埋め合わせるかのように歪ながらも貪欲に「家族」の愛情を求める姿には心を打たれずにはいられない。種﨑敦美さんの演技も人選の意外さからは想像もできないぐらいハマっており、キャラとしての完成度はさらに盤石なものに。個人的にはアーニャの学校生活パートが一番の楽しみなので、後半戦の放送が大いに待ち遠しい。


<4位> かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-

評価:S-

お気に入りキャラ:白銀圭

2期のタイトルロゴにおいて取り消し線が引かれたことに象徴されるように、「天才たちの恋愛頭脳戦」要素の希薄化によりラブコメ作品としての秘めた実力が開花した本作品。3期では「ウルトラロマンティック」と称されたようにこの路線で突き進むかと思われたが、終盤の「奉心祭編」においてまさかの原点回帰。鳴りを潜めていた御行とかぐやの純愛路線まっしぐらの「告らせたい」がここまでの覇気を蓄えていたのには驚かされた。尊すぎて気を抜くと意識を失うところだったぜ…。かといって、序盤のLINEの駆け引きなどに代表される通常回も十分すぎるぐらい面白く、作品としてのポテンシャルは正にSクラスに相応しい風格を備えるに至っている。そして、最後の決着は曖昧にしながらも綺麗に締めたなと思わせながらなんと新作アニメ-ション制作決定だとか。石上の恋路の決着は見たいような見たくないようなだが、自分はミコ派。これは絶対譲れないところ…!


<3位> であいもん

評価:S-

お気に入りキャラ:堀河美弦みつる

10歳の一果いつかと三十路ののぞむという凸凹コンビがなんとも微笑ましい今期の良心枠。最近こういう主人公周りの年齢設定が高めの作品も増えてるけど、トレンドの移り変わりを肌で感じるわね…。それはいかにもハートフルな展開を想起させるが、京都という土地柄のフレーバーも加わり期待には存分に応えてくれた模様。和の温厚で少しお調子者な人柄によって作品自体の空気感としては色々と中和されてはいるが、結構現実的でグサリと来る描写も多いのは人間模様を描くに当たってきちんと影の描写も怠らないようにしたいという作者の気持ちの表れだろう。一果の母親に対する評価や接し方などはその最たるものであり、「親子」という関係の難しさを多方面から感じさせられる。恋愛方面も期待以上であり、佳乃子と美弦の舌戦に板挟みになる一果の描写などは本当に上手かった。こうした日本の漫画文化もしばらくは安泰だと思わせられる作品は大事にしていきたい。


<2位> 阿波連さんははかれない

評価:S-

お気に入りキャラ:阿波連れいな

物理・精神両面における人との距離感始め、色んな意味で“はかれない”阿波連さんをひたすら愛でるだけの時間がこんなにも愛おしいとは。「古見さん」もそうだけど、こういう声が小さい系のヒロインは『To Heart』の来栖川先輩を彷彿とさせると説明したくなるのが常だが、例えが古すぎてなかなか分かってもらえないのがツライところ…笑 一旦気を許せば物理的な距離感も異常に近くてきちんと行動で示してくれる阿波連さんは古見さんよりも分かりやすく萌えポイントが付加されているので、個人的にはこちらに軍配が上がるわね。こういう作品はヒロインと主人公の特別な信頼関係が非常に大事なので、二人だけの世界を堪能できる序盤がピークになりがちな傾向はあるけど、最後までそこはブレさせずに阿波連さんらしい感情の機微を色々見せてくれたのは非常に良かった。原作はまだ続いているみたいだけど、個人的にはここで最終話でも大納得だったかな。


<1位> カッコウの許嫁

評価:S

お気に入りキャラ:海野幸

『山田くんと7人の魔女』でお馴染みの吉河美希先生による赤ん坊の取り違えによる運命交錯ラブコメディ。主人公のフツメン度とヒロインズの美少女度は、よくもまあここまで振り切ったなと思えるような潔さだがこれで作者が女性なのが逆にすごいな…。ストーリーは『ラブひな』と同時期に連載していても違和感がなかったぐらいには王道かつ古典的な内容だが、そこがイイ!…と言えるぐらいには自分のツボにハマった模様(SNSへの絡みとかは現代風な作りになってるし)。最近のハーレム系ラブコメの風潮として、最終的には誰か一人を選ぶのが主流になってきているし、本作品にもそれは当然期待したい所存。一応、エリカがメインヒロインではあるのだろうが、ひろや幸にもワンチャン以上のチャンスはありそうなので、そこは存分に盛り上げてほしい。なお、本作品のOPは近年稀に見る一級品。思わず単独で別記事にしてしまったほどなので、そちらも是非ご覧を…!

【各ヒロインのここまでの印象】(10話時点)

天野エリカ【運命交錯指数70%】
赤ん坊の取り違えの件による驚きや戸惑いはもちろん大きいだろうが、今更両親が実は本当の親じゃなかったと知らされても、それ自体はありのままに受け止めているように思える。そういう意味で、強引に凪と許嫁にされてしまったとしても後は当人同士の気持ちに委ねられているため、普通の恋愛の範疇には収まりそう(「カッコウ」の本当の意味によっては波乱が起きる可能性はあるが…)。これは、メタ的な意味で凪とくっ付ける絶対的な必然性もないという意味でもあり、メインは彼女自身の魅力の掘り下げに注力していく方向性になりそうか。ただ、もしこの先彼女が凪に惹かれていくのなら、「許嫁」という既成事実を武器にして積極的に迫っていく展開もあるかも。そしてそれは、ヒロインの在り方としては何とも魅力的なのだがムーブとしては完全に負けヒロインルートなんよな…。その当たりのバランスが今後は注目されるところである。

瀬川ひろ【運命交錯指数30%】
本作品の四角関係の中で、唯一赤ん坊の取り違えの件に全く関係のないヒロイン。彼女自身にも許嫁がいるのだが、それはまた別の話である。よって、彼女の最大の武器は「主人公が最初から好意を寄せているヒロイン」であることである。メタ的には後はもう下がるだけなので、もうその時点で負けヒロインの匂いが充満しているのだが、別にセオリーに寄せなければいけないルールがあるわけでもないし、予想外の展開は大いに期待したいところ。ただ、エリカや幸に比べると魅力度的には一歩劣るのかなというのは正直な感想であり、凪が惚れているというのも今のところ「ああそうなんだね」以上でも以下でもないというのが本音。おそらくではあるが読者人気的な観点からも強烈な後押しがあるとは考えにくいので、ヒロインレース的には一番大穴と言わざるを得ないのが現実だろう。あとは、作者がどれだけ思い入れがあるのかが鍵かな…。

海野幸【運命交錯指数100%】
本作品の「赤ん坊の取り違え」というギミックを100%生かすことのできるヒロイン。一言で言って「強い」。それは、彼女にとっては運命が180度変わってしまうような大事件であり、ここまでは出番が比較的限られているのが逆に不気味なぐらいである。彼女の恋心については、その出来事をきっかけにという解釈と元から好意は抱いていたという解釈が考えられるが、本作品の場合は後者寄りか。もう抑えなくていいんだという静かな喜びの描写はど真ん中の剛速球で我々のハートをも鷲掴みにしてくることは想像に難くなく、その時が今から待ち遠しい。ツンデレに見せかけて実態は重度のブラコンかつデレデレなので、もう既に可愛くて仕方がない。しばらくはヤキモチの描写だけでも十分ご飯が食べられそうなので、存分に出し惜しんでくれてもこちらは一向に構わんよ?読者人気も高そうだし、これからの作者の手腕に大いに期待だわね。



<劇場版5位> 劇場版 異世界かるてっと ~あなざーわーるど~

評価:B+

お気に入りキャラ:カズマ

異世界キャラがこれまた別の異世界に飛ばされるというもはや何段オチかも分からない本劇場版。原作のストーリーの進捗を反映しているためか、ベアトリスがスバルにベッタリだったのはここだけ見たら完全に彼女がメインヒロインよな…笑 ストーリーは適度にギャグ描写を混ぜつつもシリアス度は高めのいい話ではあったものの、話の本筋をオリジナルのゲストキャラでやってしまっているのはやはりどうなのか(大人の事情もあるのかもしれないが…)。また、同系統の作品ともいえる『かぎなど』はメタ表現満載のエッジの利いた内容が持ち味になっており、ファンにとってはより深くて濃い笑いが得られている。色々版権が絡む作品であるだけに不遇いじりなどのブラック表現はなかなか難しいだろうが、他作品のキャラ同士がわちゃわちゃと絡むという当初のインパクトは確実に薄まっているので、もし今後も展開を続けるならさらに攻めの一手は欲しいところである。


<劇場版4位> バブル

評価:A-

お気に入りキャラ:ウタ

突如として世界に降り注いだバブルにより壊滅状態となった東京で出会った少年と少女の物語。つまるところ『人魚姫』をモチーフとした出会いと別れの物語なのだが、それ以上に「きっとまた会えるさ、桜の季節にな…」的なKey全盛の時期に流行ったという(?)ラノベ大賞応募作品のようなノリを強く感じた。とはいえ、特に安っぽさは感じずむしろ王道展開としての美しさすら感じたのはさすがといったところか。また、全編通じて描かれる重力から解放されたようなアクロバティックで躍動感のあるジャンプアクションも劇場の大スクリーンで鑑賞することに大いに意義を感じさせてくれるものであった。このように全体の完成度としては悪くなかったものの、大きな驚きや目新しさも無かった印象であり、積極的に人にオススメしたくなるような要素には乏しかったというのが本音。総じて、小畑健先生原案のキャラデザに惹かれる人なら一見の価値アリといったところだろうか。


<劇場版3位> 劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編]君の列車は生存戦略

評価:A-

お気に入りキャラ:荻野目苹果りんご

実は未履修だった本作品。公開に先駆けて全話を一挙に視聴したのだが、めちゃくちゃ面白かったかと問われれば微妙なラインといったところであり、本劇場版についてもそれは大きく変わらなかった。しかし、TVシリーズのエピローグから繋がる総集編としての構成は何かの仕掛けも予感させるものであり、「知っている」ことに対する意味や意義はこの先も出てきそう(「RE:cycle」という表記も秀逸)。幾原監督作品としては”奇抜なセンス”という要素は相対的には薄くストーリーを純粋に楽しむことも可能ではあるが、その分ネタ度は下がるという二律背反に悩まされる作品であり、実は全編通じて全ての登場人物は大マジでギャグの要素って皆無じゃね?ということにも今更ながら気付いた。それを絶妙に和ませているのが奇抜なキーワードやペンギンたちであったりするわけで、天才の考えることはいつだって不可解であるというのが共通の収束点となった印象である。


<劇場版2位> 映画『五等分の花嫁』

評価:A+

お気に入りキャラ:中野二乃

前代未聞の五つ子ラブコメも遂に完結。「劇場版クオリティ」という言葉を期待するとやや物足りない部分もあったのだが、なによりも評価したいのは「ハーレムエンドに逃げなかった」という1点に尽きる。自分も原作未読勢であったのだが、情報を完全にシャットダウンするのは難しく四葉エンドであることは周りの観客含めほぼ周知の事実であったのでは。そして、それを制作側も承知なのかこれまでの伏線含め序盤から若干四葉が優遇気味に描かれつつも、あくまでも「五等分」の描写に強くこだわったのには作者の矜持が垣間見え、どの子が推しであっても感情の落としどころは全ての人に等しく与えられていたといえるだろう。「五等分の軌跡」という主題歌のタイトルにも表れていたように、例えこの恋が成就しなかったとしても、「彼」との出会いはけして無駄なんかじゃなかった。そう確信させてくれるような爽やかな後味を与えてくれたことにひたすら感謝したい。

【各ヒロイン総括コメント】

中野一花【推し順位5位】
長女&ショートカットという属性は個人的には訴求力に乏しかったと言わざるを得ない。2期での他の姉妹を出し抜こうとした姿勢も「下げ描写」に見えてしまった部分が大きく、腹黒さの描写が上手く働かなかった印象。こうした人間臭さの描写を試みた姿勢自体は素晴らしいので、ハマる人にはハマるのでは。

中野二乃【推し順位1位】
姉妹にはデレツン。風太郎にはツンデレ。「…だけど実は」のような掘り下げ方をしていけばどんどん魅力が増していくある意味お得な立ち位置のキャラ。2期で盛大に風太郎にデレたが、個人的にはそれまでのツン状態も好きだったので、むしろこれで人気が出てしまうであろうことがちょっと悔しかった記憶も…笑

中野三玖【推し順位4位】
「お前らこういうのが好きなんだろ?」といういかにもなキャラ設定を最後まで受け入れ切れなかった印象。まあそのとおりではあるんだけど、なんかこれに屈したら負けなような気がして…笑 風太郎との出会いにより一番変わったのはおそらく三玖。「自分を好きになる」までの軌跡は正に正妻ムーブであった。

中野四葉【推し順位3位】
天真爛漫に見える外見とは裏腹に誰よりも周りを気遣うことができ、敬語キャラに見えないのに敬語キャラなど見た目とのギャップが楽しいキャラ。結果論ではあるけど、一番丸く収まるのはたしかに四葉だよなあ…というのには感心しきり。「選ばれたこと」が素直に魅力に繋がっていたのはホントに素晴らしい。

中野五月【推し順位2位】
ビジュアル的には大正義であり、けっこう二乃と僅差に迫っていたのは内緒。唯一風太郎への恋心の自覚には至らなかったといえるが、逆にそれでも戦えるだけの戦力を有していたという証拠でもある。対外的にはメインヒロイン扱いされていたが、逆にそこからは最も遠くもある独自の立ち位置が新鮮であった。


<劇場版1位> 劇場版『からかい上手の高木さん』

評価:S

お気に入りキャラ:鷹川すみれ
 
西片と高木さんの中学最後の夏を描いた劇場版。これまでの集大成といってよい二人の距離感を堪能する時間はひたすらに尊くそして愛おしく、完成され尽くした上映時間とストーリー構成は正に「劇場版」という言葉を冠するに相応しい一品。シリーズ最初期では、この関係の恋愛への発展性について懐疑主義な自分はそう簡単には認めないぞという心構えでいたはずだったのだが、もはやそこに疑いの余地は一片も残されておらず、「『元』高木さん」の世界線まで鮮やかにバージンロードを繋げられてしまった日にはグゥの音も出てこない(一応、『元』の世界線は未来の可能性の一つであると考えていた派)。本作品においては、高木さんはやはりヒロインであり真の主人公は西片である。その相手の気持ちを慮って、実直にそして素直に行動できる大きな優しさを通じて高木さんからの想いも存分に伝わってくる二人の姿に、末長くお幸せにという最大級の祝福を贈りたい。


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