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奇想と狂気は紙一重

学割が効く最後の締めにと姉が誘ってくれた『奇想のモード展』に行ってきた。

会場はアール・デコ様式の旧邸が美術館になっている珍しい美術館。入った瞬間まるでタイプスリップしたかのような、ここだけ時間が止まっている気がする不思議な空間で、厳かで豪華で優雅な感じが隅々から伝わってくる。そんな会場内だからなのか余計に異彩を放つ展示物。人毛で編まれたドレスや纏足、発光する絹の糸で作られたドレス。どの作品も題名通りの奇想さ。いや、むしろ想像の倍以上の奇想だった。姉も学校で先生から「ぶっ飛んでる展示内容」とは言われていたらしいが、そのぶっ飛んでいるベクトルがまた奇想。美しいけど気味が悪い。不気味だけど目が惹かれる。ずっと観てるとくらくらと目眩がしてきそう。美しさでは希釈しきれない狂気が漂う。そんな展示内容だからか、これまでの美術館鑑賞で感じたことがない常にどこか落ち着かないような気持ちで会場を巡る。

以前同じくファッション関係の『ファッションインジャパン』という展示を観に行った際も、「万人に愛されるものなんてないから好きな服装しよう」と思ったが、今回の展示を観てさらにその思いを強くした。むしろファッションに正解なんてないから、万人に愛されるのなんて無理だと思った。

薄ら立った鳥肌をさすりながら会場を出る。この鳥肌が興奮からなのか恐怖からなのか分からないのがまた怖い。でも、観ない方が良かったとは思わない。むしろこういう機会がないと一生触れないことに触れられて良かったと思う。今日観た奇想はいつまで奇想と言われるか。それが今一番気になるところだ。


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