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アウトドアから環境考えるーえっ!? 2週間溜めて持ち運ぶの!!?

こんにちは。
さて、早速ですが、まずはこちらの写真をご覧ください。

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  この「緑の缶」は、去年アラスカの「デナリ」という山を登山しに行ったときに、チェックインで国立公園局から一人一つ持たされたものです。デナリは昔「マッキンリー」と呼ばれていて、植村直己さんが最後に挑んだ山として有名です。日本ではこちらの呼び名の方がなじみがあるかもしれません。通常登山は2週間~1か月かけて行われる場所であります。

 さて、話をもどして、この缶は何につかうものでしょうか…!?
3択クイズにしてみました(笑)

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さて…正解はというと…。。。

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③のトイレ。。。当たりました!? (*´▽`*)

 そう、デナリ山では、登山期間中全ての排泄物(大)を持ち帰ることが決められており、そのためのトイレが1人1つ、渡されるわけです。
 クライマーはキャンプ地などで「もよおしたとき」には、緑のカンを開け、中の袋を広げ、上に座ってポトン!っとするわけです。氷河の大パノラマを楽しむ、ある意味「世界一贅沢なトイレ」かもしれません。笑

 デナリ山は山全体が雪と氷河に覆われており、夏でもー20℃を下回る過酷で無機質な環境であり、「排泄物が分解されない」のです。どうやら昔は穴を掘って直接埋めていたそうですが、そのまま排泄物は凍って、その上に雪が積もって処理された…ということにしていたそうです…。
 ところが、近年地球の温暖化も相まって、デナリも雪が解け、昔埋めた排泄物が溶け出してくる…という問題も発生してきているようです。また、水道のないデナリでは、キャンプ地周辺の雪を溶かして水やお湯を得ます。
 そこから先は想像するにしても…なんか恐ろしくないですか…!?( ;∀;)

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 1980年代から環境への配慮「Leave No Trace」という考え方が浸透し始め、ゴミを完全に持ち帰るところから着手したそうですが、2000年代に登場したのが今回の主役、「緑のカン」なんだそうです。

 その名も「 Clean Mountain Can (CMC) 」

 チェックインで渡された後は、登山中ずっと一緒。ハイキャンプと呼ばれる5,200mの最終キャンプまで必ず持っていかねばなりません。そう、自分の装備を途中でデポ(埋めておく)したとしても、CMCはもっていかねばならないのです。どんな傾斜でも、どんな天候でも…。こんな具合に。

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 ハイシーズン、主要なキャンプ地には国立公園局レンジャーが巡回していて、やってくるクライマーに順番に声をかけます。
 一言目は「ヘイ!順調かい!?」。そして二言目は「CMC持ってるか!?」。これくらい現地では重要視されているアイテムです。
 近くにCMCを下のキャンプに忘れてしまったクライマーがいたのですが、それはそれは激怒されており、場合によっては登山許可が取り消されるほどだそうで…。それくらい深刻な問題であり、大切なことと捉えているようでした。

 日本では氷河はほとんどなく、多くは有機質の土を含む樹林帯。高山や雪山、一部有機質のない地形に関しては排泄物の分解が遅い、あるいはできないこともあるので、トイレがない場合は原則持ち帰りで、そのためのMy CMC(つまり携帯トイレ)が必要ですね。
 有機質の土を有する場所でも、まずはトイレを探す。次いで携帯トイレで持ち帰る。それが許されない場所ではLeave No Traceのテクニックを使って、地表にローインパクトな排泄を心がけるのが妥協点になるでしょう。

【LNTテクニック実践例】
①有機質の土を20-30センチ掘る(赤土ゾーンまで掘らない程度に深く)
②排泄物を出す。
③お尻を拭いた紙は持ち帰る
④落ち葉などを穴に入れ、土を入れながら棒で混ぜる。
⑤最後に混ぜた棒を目印に刺す。(もちろん、人が通らない安全な所で)

 海外の山のトイレ事情を紹介してみましたが、いつまでも持続可能でキレイな自然と遊びたいですね!
 デナリでは今、1箇所だけ排泄物で一杯になった袋を山中のクレバスに投棄していい場所が決まっています。しかしそれは半永久的な残地を意味するもの。あくまで原則が持ち帰りです。(現状排泄物小は、雪上にそのまま)
 麓のレンジャーステーションまで全ての排泄物を持って帰ると、レンジャーから登頂よりも大きな祝福と、こんなステッカーがもらえます。クレバスで投棄した人には絶対くれません。

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 “Keep Denali Clean”
 意味するところ「登山者の誇り」ですね。

参考文献

参考文献2 National Park Service HP(英語です)


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