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粉よふけ、肌よ荒れろ|日々の雑記#19

会社からの帰り道、車窓に映る顔が怖い。年齢のせいもあるけれど、仕事で面倒に巻き込まれ、苦い目に合ったからである。

都合のいいことに明日は休日、少しばかり深酒しても問題はない。ひとつ前のバス停で降りて、閉店間際のスーパーを自棄っぱちな気分でうろつく。眉間にシワを寄せ、険しい表情で店内を物色する。ロングなビールと缶チューハイ、半額になったアンガス牛ガーリックステーキを買うあたり、危険な匂いがする。マスクに隠れているが口元には不適な笑みをたたえているのだから、我ながら恐ろしい。

帰宅をしてまずはシャワー、給湯温度を38℃から39℃に爆上げする。ガス代に糸目はつけない男である。いつもはシャワーの後に無印のオールインワンジェル(エイジングケアシリーズ)を塗るけれど、今夜はケアなんて気にしない。明日の朝、粉をふいているから何だっていうのか?肌よりも、今荒れているのは俺の心だ。

寝静まった家族もお構いなしにレンジを使う無法。しかもプラスチックトレーのまま「あたため」スタート。トレーが柔らかくなるほどの加熱、環境ホルモンを体に入れたい夜だってある。カウント残り1秒で「とりけし」ボタンを押す。レンジであろうと俺に指図することは許さない。

そして、こんな夜は大音量で音楽を聴きたくなる。プレーヤーを起動してボリュームを上げれば、イヤフォンから「俺の話を聞けぇ」とタイガー&ドラゴン。驚いて思わず変な声を出すのもご愛嬌。話を聞いて欲しいのはこっちの方だけど、剣さんが言うなら従うまでだ。

そんな風にしてビールを流し込み、大きく息を吐く。強張った心にアルコールが隙間を作り、流れる音楽で満たされていく。たかぶった気持ちがだんだんと鎮まっていくのが分かる。

気がつけば買ってきたロング缶は空になっていた。まだ少し飲み足りなくて、半纏を羽織って近所の自販機に買いに行く。フィッシュマンズを聴きながらのナイトクルージング、酔っ払った体に冷たい空気が気持ちいい。空の上の方では風が轟々と鳴っていて、気分はもうすっかり入れ替わっているのだから単純なもんだ。

部屋に戻ってあと一本を飲んだら、歯を磨いて眠ろう。後片付けと、やっぱりエイジングケアも忘れずに。

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