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悪い男(野沢菜牛肉炒め)|酒と肴 その五十一

信州、長野県にご縁がありますが、アレルギー持ちのため蕎麦が食べられません。彼の地で働いた7年間、うまそうにズルズルする人の横で、野沢菜をポリポリしてました。

小さい頃は問題なく、むしろ蕎麦好きの子供だったのです。周囲から「こいつはきっと酒呑みになる」ともてはやされ、実際に呑める大人になり転勤した長野。仕方のない事ですが、本場の信州蕎麦で飲れないのは心底残念でした。
正直に告白するとワンチャン期待して、冒険したことがあります。だけど、口と喉が腫れてエライ目にあったので、それからはもうチャレンジしていません。「九死に一生」の方のワンチャンだったのでしょう。

そんな訳で自分にとって「野沢菜漬け」が信州の味。そのままはもちろん、おやきに天ぷら、パスタも美味しいですが、お薦めは牛肉と炒めたものです。

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野沢菜と牛の切り落とし(あれば信州牛)、長野県産のエリンギを油で炒め、醤油で味付けすればお酒泥棒の出来上がり。これはもう善光寺も真っ青*のおいしさです。

*善光寺も真っ青
ここ数年、善光寺は度々ライトアップ、プロジェクションマッピングされ、赤や青に染まっています。おかげで夜の参道が賑わって、呑み歩く言い訳が増えた思い出。

そしてこの料理のポイントは、野沢菜の味わいと牛肉の旨味を吸ったエリンギでしょう。

控え目な印象のエリンギ。白い肌にミルクティーベージュの髪色なんて、優しそうな見た目です。だけどこいつが、なかなかの手練手管なんです。
野沢菜の姉さんがコツコツ蓄えてきた美味しさ、これを貢がせたと思えば、牛肉のお嬢が持つ溢れる旨味、そいつも巻き上げるロクデナシ。どう考えても三角関係なのに、丸く収まってしまう不思議な魅力。何というか、心の隙間にするりと入ってくる、そんなタイプです。

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まあ、酒の肴になればこちらは問題無いわけで、ウイスキーソーダのお供に美味しく頂きました。野沢菜の、ちょっと古漬かりで酸味が出てきたところと牛肉の脂っ気。ともするとぶつかり合う特徴を、エリンギが結び引き立て合う、そんな味わいです。これがまた〆の白飯にもよくあって、その旨油うまあぶらを吸ったご飯粒は、かつて登った北アルプスの星空よろしく輝くのでした。

もしも蕎麦が食べられたら、野沢菜にそこまで興味は持たなかったかも知れません。夢に見た「蕎麦屋で昼酒」は叶いませんけれど、結果として野沢菜レシピは充実しました。

貰い事故のエリンギは散々な言われ様ですが、それも含めて信州食材への愛ということで。

メニューと材料
・野沢菜牛肉炒め(野沢菜、牛肉、エリンギ、ニンニク、唐辛子、醤油、油)

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