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熱量の低い天国、幸福論|日々の雑記#60

暦の上では明けていますが、夏休みが遅れた関係で、私のお盆は絶賛継続中です。

行動制限のない今年の盂蘭盆会。帰路に着いていたご先祖様には恐縮ですけれど、せっかくなのでUターンして今週末まで滞在頂けたら、不出来な子孫としては感謝の極みです。
何ならあの世・・・への戻りが遅れる旨、私から先方に説明差し上げますが、天国と地獄、どちらに連絡するかで悩みます。

ご本人たちに直接聞くのは不躾ですし、一族郎党の手前、地獄だった日には、微妙な空気で顔向けできません。また、気を利かせて天国に連絡しても、

「あいにく、こちらには在籍していないようですが……」

なんて言われたら、気まずくて草葉の陰に隠れるレベルです。

こんなことを考える罰当たりですから、十中八九、私は地獄行きでしょう(ワンチャンは残しておきます)。
だからですかね、身近で、お手頃に味わえる天国って大事だと思うんです。

何故なら、亡くなったあとに行ける保証はないですし、そもそも本場の天国があったとして、その存在をはっきりさせないあたり、自分本位な、しみったれた連中が運営してるに決まってます。

仮に、そんなにいいところなら、人を選ぶなんてケチな了見はいただけません。

「ええ、手前どもはいつでもやってございます。どなた様もご都合の宜しい時に、安心してお越しくださいませ。もちろんお代は結構です。なんでしたら、こちらからお迎えにあがります」

ぐらいに言ってくれないと、浮き世に暮らす人類としては、胡散臭い、妙な教えに手を出し苦労するのです。

それにですね、死んでからあっちにこっちにと振り分けるなんて、まったくもって非効率。政府が推進するデジタル化にも反してます。
もういっそ、神様も仏様もバンバンこの世に現れて、縁なき衆生を片っ端から救ってくれりゃあ、話が早いんですけどね。

随分と前置きが長くなりました。
そんな訳で、ここ池袋にある西武百貨店の屋上は、私にとっての天国なんです。

食と緑の空中庭園。色とりどりの花が咲き乱れ、池には睡蓮が浮かびます。世界の料理を肴に明るいうちから一杯やれて、入場は無料。こんな極楽が現世にあるんですから、来世を祈るより、今を楽しむことって大事だと思うんです。

テラス席、生暖かい風に吹かれながら食べる冷やしきつね。昼間っからビールを呑みつつ、亡くなった人たちを偲ぶ穏やかな時間。

これぐらいの熱量の低い幸福が、たまさかにあれば充分です。

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