どうしても唐揚げが食べたい
今日は時間がない。たまにある「昼間の仕事→夜飲み屋を手伝う」の日だから。
お手伝いとはいえ時間に遅れることはできない。一人の戦力としてお店を支えねばならないし、そもそも社会人として時間を守れないのは駄目だし。
会社を出て、自宅に帰って着替えて、お店に行く。その間は「1時間」。チンタラしてる暇はないのである。
そしてこの時間に夕飯も食べる。家で作る時間はないので、外食で済ませる。ファストフードや牛丼チェーンなど色々試した結果、「駅前蕎麦屋」が最速だったので、ここ最近は毎回蕎麦屋に行く。
今日も今日とて蕎麦を食らい、足早に駅に向かう。と、その途中に唐揚げ屋さんの前を通った時に、思わず足を止めてしまった。
「唐揚げが美味しそう過ぎる・・・!」
カラッと上がった鶏の唐揚げの写真が、艶やかにライトアップされている。店の奥からは油の臭いがお店の前まで漂っており、お店の中ではサラリーマンたちが唐揚げを食べながら角ハイボールを飲んでいる。
なんて美味しそうな・・・。しかし今日は唐揚げハイボールを楽しむ余裕はない。後ろ髪を引かれながら、急いで電車に飛び乗る。席に座ってYouTubeをザッピングしていると、最近ハマっているYouTuberが、揚げ物を爆食いしている動画が目に入る。美味しそう過ぎる。
駅について自宅に帰ってから出るまで15分の余裕はある。その前に駅前のスーパーで唐揚げを買って帰ろう。そして5分で食べればお手伝いに間に合う。うん、そうしよう。最寄り駅につくまでに脳内シミュレーションをしっかりして、唐揚げを買って自宅に帰った。
誰にでも無性に食べたいモノに出会う時はある。それが食べなれたもので、もしくは食べたことがないものでも。「どうしてもあのピザが食べたい・・・!」と子供たちが奮闘する映画が『ピザ!』である。
貧しいため学校に行くこともできず、貨物列車から零れ落ちる石炭を売って生活費にしている兄弟たちが、ピザを食べるためだけに知恵を絞って頑張るハートフルなコメディ映画・・・と思いきや、実は結構社会派の映画。貧富の差が大きいインドでなく、日本に生活する我々でも思わず共感してしまうような展開になっている。彼らがピザを食べられるのか・・・は、ぜひ映画をご覧いただきたい。
自宅について、買ってきた唐揚げを電子レンジに入れ、急いで身支度を済ませる。いつでも出られる準備を整えて、念願の唐揚げに食らいつく・・・のだが、あれ、大して美味しくないぞ。想像していたあのカラッとした触感が、電子レンジではまるで再現できていない。渋々唐揚げのお皿にラップをかけて、一緒に飲もうと思っていたビールと共に、冷蔵庫にしまう。
そしてモヤモヤした思いを抱えながら、飲み屋のお手伝いに向かうのであった。
文章:真央
編集:べみん
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