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渋谷とは 〜喧騒の街が居心地良い理由

渋谷が嫌いだった。

汚れた地面に汚れた空気。車の騒音やお店のネオンで、街を歩くだけで目眩がする。

渋谷にいる人たちも苦手だった。クラブに行ったり、ナンパをしたり。住む世界の違う住人ばかりだと思っていた。

しかし2年ほど前から渋谷近郊に住み、何をするにも渋谷に行くようになってから、渋谷が好きになった。今では渋谷ほど居心地の良い街はないんじゃないかと思う。

渋谷に住み、働き、そして遊ぶ。全てを渋谷で完結させている僕が、渋谷の魅力を紹介する。


**街:エリアで違う顔を見せる **

まずはじめに、渋谷駅周辺の地域差について。同じ渋谷でも地域によって雰囲気が全然違う。さすがは東京でも屈指のターミナル駅。本当に様々な人たちが24時間365日往来している。

私なりの観察(主に飲み屋の印象)から、渋谷駅周辺を大きく4つのエリアに分けて解説してみよう。

【メイン of 渋谷】センター街〜宇田川町周辺

渋谷と聞いて一番最初に思い浮かべるのはここだろう。駅前のスクランブル交差点からTSUTAYA方面一帯を指す。多くの有名チェーン店が軒を連ね、全体的に地方から遊びに来た10代の若い子が多い印象がある。

夜も10代~20代が中心で、ファッションは「渋谷系」のイケイケな人が増える。

**【サラリーマン街】宮益坂〜東急再開発エリア **

センター街の駅を挟んで反対側。常に再開発をしている地域一帯は、サラリーマンが多い印象だ。ヒカリエをはじめ、様々な企業ビルがある。また最近新たなビルが2棟建設されており、その一つにはGoogleが移転してくるそうだ。今後ますますサラリーマンの数は増えるろ思われる。

飲み屋はセンター街と同じようにチェーン系居酒屋や格安居酒屋などが軒を連ねるが、若者ではなくサラリーマンが集う。

**【しっぽり雰囲気】桜ヶ丘 **

JR南口から出て、歩道橋を渡った先。大きな桜並木が並ぶ地域が桜ヶ丘だ。渋谷でしっぽり飲みをするのであれば桜ヶ丘が良い。隠れ家的な雰囲気のお店も多く、こじんまりとした店舗が軒を連ねる。美味しいお店も多い。

渋谷の飲みで桜ヶ丘に来る若者は多くはなく、少し落ち着いた歳の大人が多い印象だ。

**【大人の遊び場】マークシティ周辺〜道玄坂 **

渋谷の歓楽街といえば道玄坂だろう。そして意外と知られていないが、マークシティ周辺もピンクなお店が軒を連ねている。さらに道玄坂エリアには有名クラブが複数あるためか、ウェイウェイした方々が四六時中いるし、ウザいほど声をかけてくる人たちがいる。

しかし「虎穴に入らずんば虎子を得ず」というべきか、この奥に美味しいお店が多い(奥渋谷と呼ばれる地域)。


**人:誰もが少し「若返る」 **

エリアによって全然違う渋谷だが、裏を返せば、誰でも受け入れてくれるのが渋谷である。渋谷の街で人間観察をしていると面白い。老若男女、人種など様々な人々がいる。

だが、何となく全員が「渋谷らしさ」を持ち合わせている。決してイマドキだとか、オシャレだとかいう訳ではない。どことなく少し「若返った」感じを醸し出している。

きっと家を出る時に「今日は渋谷に行く」ということが着ていく服を選ぶ時に脳裏によぎることだったり、街中のギラギラした電光掲示板や看板、宣伝車の騒音などの「雑多な感じ」が人々を内側から若返らせているのかもしれない。

先日還暦の父が渋谷に来たので色々と案内をしたのだが、移動する度に「渋谷はいつもより疲れる」と口では言っていたものの、表情はどこか若々しく足取りは軽やかだった。


飲食店:今じゃなんだか安心する

いろいろと渋谷について述べたが、本当にここだけは伝えたい。

渋谷のお店は居心地が良い。もちろん全てのお店がそうだとは言わないが、初めて入った店でも、なぜか居心地が良い。

その理由に意外なところで気がついた。関西に旅行をした時だ。旅行に行った時もチェーン店はなるべく使わず、地元の個人経営の飲み屋に行くのだが、そこで洗礼を受けた。

決してヨソ者だから嫌がらせを受けたとか、身内ネタばかりで疎外感を受けたとかではない。色々と質問してくれたり、話をしてくれたりしたのだが、それが逆に気を使うことになり疲れたのだった。

そこには東京(外)/地元(内)という隔たりがあり、外は内の中に入ることは出来ない。きっとこれは関西に限らず日本全国どこの地域でも当てはまると思う。

ところが渋谷は違う。なぜならお店の人も、常連さんも、誰も渋谷が地元でないということが良くあるからだ。だからヨソ者が来ても、外/内の関係は成立しない。全員が外にもなり、内にもなるのだ。初めてのお店でも急に内使いをされることさえある。

例を挙げよう。

渋谷であるお店に初めて入った。店内には常連さんらしき人が1人と店員が2人。すでに常連と店員で3人の空間が出来上がっている。

すると飲み始めたところで、店員が不意に声をかけてくれた。

「どちらからお越しですか?」
岩手と答えると、なんと店員2人も岩手出身とのこと。そこからは急に岩手3人の空気が出来るのだ。(ちなみにこの時に割りを食った「常連さんらしき人」が僕だった。でもそれもまた楽しい)

この外にも内にも縛られず、雑多に話したり話さなかったりと、ちょうど良い距離感を保てるところが居心地の良さを生んでいる。これは恐らく地方では起きない。

お店だけでなく、街中には色々な人が溢れている。ちょっとだけ若返って好奇心が旺盛になっているからこそ、心地よい距離感を保ちながら、人々が交差しているのだ。

SHIBUYA KOSATEN 大嫌いだった
今じゃなんだか安心する
(DAOKO -ShibuyaKより)


さあ、渋谷に繰り出そう

さてここまで読んで、少しでも渋谷に興味が湧いたあなた。あとは実践あるのみだ、渋谷に繰り出そう

尻込みする必要はない。渋谷の人たちは誰もあなたのことを知らない。だけど、どこかあなたに似ている人たちばかりだから。きっとすぐに馴染めるはずだ。

渋谷はいつでもあなたのことを待っている。

編集:円(えん)


#日刊かきあつめ #とは #渋谷 #地方 #都市論

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