【美術】ポーラ美術館のご紹介

シンニホン自由研究やるやる詐欺です。
先にこちらを書きます。

ポーラ美術館をご存じですか

ポーラ美術館という美術館が神奈川県箱根町にあります。

箱根と言えばまず思い浮かぶのが温泉ですが、実は箱根にはとてもたくさん美術館があります。

彫刻の森美術館。
岡田美術館。
星の王子様ミュージアム。
等々。

あまりに美術館が多いので少し埋もれてしまっているかもしれないのですが、このポーラ美術館、西洋絵画、特に印象派のコレクションは日本有数のようです。

電車で行くと、小田原から1時間近く箱根登山鉄道に乗り、さらにバス…というアクセスの悪さが難ですが、それを乗り越えてもまた行きたい、と思うくらいには素敵な美術館です。

また、そのアクセスの悪さゆえに、東京で開催されると大混雑な印象派の展示でも、あまり混雑していないところがメリットです。

そんなポーラ美術館で、なかなか良さそうな展覧会をやっていたので、先日訪れました。

モネとマティス。モネとマティス!

モネとマティス。この2人を結び付けて考える発想が私にはなかったので、その二人を「楽園を作った」という点で対比させる、というコンセプトがおもしろいな、と思いました。

実際の展示は、まさにモネとマティス!
こんな日本の片隅によくこんなにモネとマティスの作品を集めたなあというくらい多くの作品を見ることができました。コロナウイルスの影響で借りられなくなった絵画もあるようでしたが、それでもたっぷりとモネとマティスの「楽園」を堪能することができました。

マティスを知る

私は7年くらい前に集中的に印象派について展示を見たり本を読んだりしたので、モネについてはある程度知識があったのですが、マティスはあまり知りませんでした。この企画展によって彼について知識を得たのが、収穫でした。以下に、マティスについて新しく知ったことを記録しておきます。

・ビジネスマンを癒す絵画を目指していた
・織物が盛んな街の生まれ(それゆえに、室内の装飾が特徴的な絵が多い?)
・切り絵は絵筆を握れなくなった晩年の作品(絵を全く見ていない頃は、むしろその切り絵のイメージが強かった)
・ルノワールと親交があった

また、今月の頭に読んだ、原田マハさんの小説『ジヴェルニーの食卓』にモネとマティスが登場していたこともあり、小説内の描写を思い出しながら知識を深めることができました。

なんでもありだな

企画展を楽しんでいるうちに、ふと、「芸術ってなんでもアリだな」という思いが頭をよぎりました。これは言い古されたことですが…

昔のキリスト教芸術は、構図も書くモチーフも、その意味するところも、全て正解がありました。聖書の内容を人々に伝えるのが目的の芸術ですから、そういうものです。いろいろな解釈がうまれるようでは困ります。

ところがこの展覧会を見ていると、構図もモチーフも、同じ「楽園」を追い求めていたモネとマティスで全く違うし、画家それぞれの中でも、描く対象がどんどん変化していきます。

モネは、若いころは都市風俗を描いていましたが、その後は旅の風景を描き、最終的にはひたすら睡蓮の絵を描き続けます。

マティスは室内でモデル画を中心としますが、その表現はどんどん抽象的になっていき、また切り絵に挑戦したりもします。

正解がないから、各々が自分の正解、表したいもの、表すべきものを求めて表現を続ける。結果としてなんでもアリになる。

この、正解がなくなるというのは、今を生きる私のような一般人にも通じるところがあるかな、と少し飛躍して考えました。

昔あった正解(いい学校、いい会社、結婚、子を持つ、…)がなくなった現代。つまり何でもアリの時代。私たちは芸術家のように、自分の人生をテーマに、何が正解か、何をしたいか、すべきか、一人ひとり模索していかなければならない。そんなことを思わされました。

お気に入り

今回、特に気に入ったのはモネの『セーヌ河の日没、冬』という作品です。

セーヌ河が珍しく凍り、その解氷のさなかを切り取った一枚です。この年、ちょうど妻を亡くしたモネは悲しみに沈んでいたが、この冬の厳しい美しさを見て、また創作に駆り立てられた、と言われているそうです。

この絵は、そんな自然の厳しい美しさが良く表現されているなと思わされました。また、この日没の太陽が、代表作『印象・日の出』の太陽を思い出させる、ぼうっと浮かび上がるような色使いで、気に入りました。

マティスの影響を受けたと言われる、マルコ・デル・レ氏の作品も気になりました。こちらのwebページに載っています。

室内に布を敷き詰めてモチーフにしているところは、マティスを見たあとに見ると、はっきりと彼を意識しているなとわかります。ですがマティスのように人物を登場させることはなく、その分抽象度が増している気がします。素人目線ですが色使いが素敵で、家に飾りたいなと思う作品でした。

遠くアクセスも悪く、またコロナウイルスも猛威をふるう最中なので気軽にオススメはできませんが、素敵な展覧会でした。

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