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おかえり、私。

先日、アマゾンプライムで配信されている「シンデレラ」を観た。

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周囲から評判は聞いていたので、それなりに期待して視聴したのだけど。
素晴らしかった!
見終えた後、誰かに勧めたくなる映画。

主人公もさることながら、本当に歌が素晴らしくて、頭からぐいぐい引き込まれる。
ヒットソングのアレンジがとても良かった。
ダンスや演出も最高。
キャラクターやストーリーのアレンジも良かったし、
衣装も楽しめたなぁ。

ミュージカルの楽しさをふんだんに味わえる作品。
これぞエンタメ!という、かゆいところに手の届く作品だった。

私はこの作品を観て、泣いた。
といっても、泣いたのは、作品を観ていた最中ではなくて、
その日の夜遅く。

普段、見終えた作品についてメモを残すようにしているのだけど、
涙が出たのは、そのメモを書き残していた時。

この作品を思い返して、はー面白かったと満足する気持ちとともに、
継母役を演じていたイディナ・メンゼルさんの残した強い印象が脳裏に色濃くよみがえり、
遠い昔のときめきを思い出したからだと思う。

今からもう十数年前、
結婚するまで働いていた会社の仕事で、よく世界中を飛び回っていた。

初めてイディナ・メンゼルを見たのは、ブロードフェイミュージカル『ウィキッド』。
舞台上のイディナは圧倒的なオーラを放っていて、
とにかく素晴らしかった。
イディナの歌っている間、私は鳥肌が立ちっぱなしだった。
あまりにも素晴らしくて、その数年後に再び舞台を見に行ったのだけれど、その時は他のキャストの舞台だったためか、それとも二度目でストーリーを知っていたからか、
あの時のような感動は味わえなかった。

ああ、ブロードウェイミュージカル、好きだったなぁ。
ニューヨークもロンドンも、よく歩き回った。
これまでたくさんの舞台を観たけど、やっぱりあの時の「ウィキッド」が一番。
この先の人生で、きっと何度も思い出す舞台なんだろうな。
ああ、本場のミュージカルが観たい。
世界中を自由に闊歩したい。
あの肌をつんざくようなニューヨークの寒さ、懐かしい。
買い物をして、街を歩いて、景色を楽しんで。
たくさんの出会いがあったな。
たくさんの思い出を作ったな。
あの頃の、妻でもない、母でもない私は、
その時抱えていた悩みや不満を見るので忙しかったけれど、
本当に幸せだったね。

そう思ったら、うっかり涙があふれだしてきて、びっくりした。
その時、思ったんだ。

『妻でもない、母でもない、ただの私が、久しぶりに帰って来た。
 おかえり、私』

今は、あの頃の私が夢見ていた仕事をして、
夢見ていた夫と結婚をして、
子どもたちに出会えて、一緒に暮らしてる。
妻として、母として、とても幸せな私がいる。
今の私だって、まぎれもない私。

だけどこんな風に、ふとした涙があふれる時、
懐かしさと嬉しさで、胸がいっぱいになる。

妻になる前の、母になる前の、ただの私が感じていたときめきを、
充実した日々の中で、いつしか忘れかけていた自分のかけらを、
一つ一つ取り戻しているような気持ちになるのだ。

大切な私のときめきを思い出し、またそっと心にしまう幸せ。
たまにはこういう夜も、いいものだ。
おかえり、私。