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100年の子

秋の空に落書きしたのは誰だろう? この辺は商用機の航路にはなっていないと思うので、自衛隊かな? 音が聞こえなかったけどなぁ。

浦河の良いところ

人口1万人ほどの浦河町には渋滞はない。渋滞どころか、前にも後ろにも反対車線にも車が見えなくて、あれ、今何時だっけ? と不安になったりする。東京では時間が読めないから、常に公共交通機関を使っていたが、ここでは車で予定通りの時間に目的地に着ける。

図書館で人気の小説を予約すると、東京では平気で700人待ち(本当にあったんです。2年くらい待った)なんてこともあるが、浦河では新着図書コーナーで新刊をすぐに借りられたりする。話題の時に読みたい本ってあるからね。これは本当に嬉しい。

古内一絵

以前、このnoteでも紹介したが、競馬の小説でTVで実写のドラマにもなった『風の向こうへ駆け抜けろ』が大好きで、著者の古内一絵さんの本をよく読む。

先日、図書館の新着コーナーに『100年の子』というこの著者の本を見つけて、借りてきた。不思議なタイトルで、内容が想像できなかった。どんな話だろうと読み始めると、ぐいぐいと引き込まれていった。

小学館

今は大人も子供も年齢に関係なく、雑誌を読まなくなっているのではないだろうか。発売日を待って買う人は絶滅危惧種くらいの感覚だ。私も美容室や待合室で雑誌のページをめくることはあっても、図書館ですら、あまり雑誌を借りて読むことはないなぁ。だからすっかり忘れていたのだが、そういえば小学校のときに『小学x年生』という雑誌があって、発売日に町の本屋さんが自転車の荷台の箱にたくさんの雑誌を乗せて、予約している家に届けていた。そしてそれを心待ちに待っていた子供がたくさんいたのではないかしら。あの雑誌を発行していた小学館をモデルにした小説だった。

この会社の100年史の編纂室に異動となった現代の女性とその母と主にその祖母が紡ぐ100年のストーリーと会社の100年史が絡み合った話だった。

戦争中

登場する祖母は、私の母より少し上の世代だと思う。私の母は東京に住んでいたので、集団疎開をした年齢。『ガラスのうさぎ』という本が課題図書になったとき、母がこれは自分と同じ学校の人だと食い入るように読んでいたのを覚えている。戦争中の話はつらいことが多く、特にひもじい思いをしたと時々話してくれた。集団疎開に持って行ったお手玉の中身が小豆だったから、没収されて皆で食べるはずが、引率の先生が食べてしまった話は強烈な印象が残っている。

この本を読みながら、すでに他界している母や母の話を思い出していた。

付録

『小学x年生』という雑誌には付録があって、工作して色々なものが作れるようになっていた。その付録を企画する場面なども出て来る。はさみとのりがあればできるような工作だったが、不器用な私は決して上手にできたことがなかった。だから、あまり興味がなかったのだが、こんな風に苦労して、毎号、付録を考案し、作っていたのだと興味深く読んだ。あの雑誌には漫画も掲載されていたし、勉強のページもあって、年号の暗記の仕方とかも載っていたと思う。それに男女ともに買うような雑誌だったと思う。祖父母とか親とかが安心して買い与えられる雑誌だったのかもしれない。漫画オンリーの雑誌は、少年漫画、少女漫画と別れていて、親が読むことを許さない家庭があったように記憶している。

職場

この100年で職場も随分とかわったのだなぁと改めて思ったし、仕事の内容も、仕事の仕方も。子供を取り巻く環境も。何か走馬灯のような感じで、母の時代、私の小学生時代のことを色々と思い出しながら、今とのつながりを感じてみたり、違いを感じてみたり、と感じるところ、考えることの多い小説だった。ストーリーも面白くて引き込まれたが、IT的に言うとバックグラウンドでメモリー(思い出)というか、ストレージの中でもアーカイブしてあったデータ(忘れていた記憶)にアクセスして色々アウトプットして脳内劇場に映像を映し出すパラレル処理が走って、そのどちらも楽しみながら読み進めていた感じがする。同年代の著者がこんな本を書いて上梓してくれたことに心から感謝した1冊だった。

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