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走る 息子よ。。。

息子は 小学5年生の時、初めて箱根駅伝のゴールを まじかで観た。
太鼓がなり、大歓声と人ごみの中、小柄な息子は父親に肩車をしてもらい、
選手たちの姿を 観た。

彼らは、皆、小柄で、華奢だ。
そして、皆、馬のように 体から蒸気を発し、輝いている。。。
彼らの 放つ 輝きを 見ると 心が 躍動する。

息子は走り出した。。。いつか、箱根路を走ることを夢見て。

中学3年の冬、突然、息子は県内の公立高校ではなく、
駅伝部の強い 私立高校に行き、そこから、大学の駅伝部に入りたい
と言い出した。。。

その高校は運動部も活発だが、偏差値も高かった。
受験日、3カ月前に、本格的に私立に向けての勉強を始めたが、
スタートが遅いだけに、不安は、大きかった。
しかし、彼の挑戦を、応援することにした。

受験日前、1週間だけ、私は息子に英語を教えた。
中学3年間に学んだことは理解している。しかし、私立は範囲が違う。
学んでいない文法や、長文も大学入試ほどの量がある。。。

申し訳ない。。。
もっと、早くに見てあがれば良かった。。。
不安で胸が押しつぶされそうになった。

試験の日、私は引率した。
試験会場を見回すと、親子で来ている人は少なかった。

都内から来ているのが、わかる。
試験が終わると、彼らは、すぐに予定表を見ながら、
「明日は、〇〇高校だね、、」と
話している声が聞こえた。
今日の試験の結果など、気にしている風ではない。。。

「都会の子だなぁ。。。」

私立を 何校も 受けるのが当たり前の 子供達。
気合をいれて、坊主頭にしていた 我が子の脇を、
さらさらヘアで、ランドセル風の バックを背負う 子供達が、
なんだか、とても、大人びて 見えた。

帰りの電車の中で、真っ青になって、気分の悪い様子の息子を
気遣いながらも、採点した。。。
血の気が引いてゆくのがわかった。。。

 息子は、出来たつもりだが、、、無理だ。。。

1週間後には、公立高校の試験がある。
そこは、今日受験した高校と偏差値がほぼ、同じ、、、
このままでは、公立も無理だ、、、なんとか、気持ちを立て直し、、

 顔色の悪い息子を見て、、、私は、心臓がバクバクした。。。

息子は自宅に着くなり、熱が出た。

私は、家の外を、放心状態で歩いた。。。
 落ちている。。。次の公立も 落ちるかも しれない。。。
  そうしたら、滑り止めの 高校に行く事になり、、、
   息子は、力を失い、、生きる気力を失うかも、

そして、人から聞いた 高校受験の 失敗の話を 思い出し、、、
     次から、次へと、、、
                     話が、過去に、未来へと 彷徨った。。。

涙を拭いて、、、意を決し 
私は、ソファーで 横になっている息子に、、、
「残念だけど、、、落ちてると思う。。。
 だから、公立のランクを下げた方が、、、良いと思う。。」と告げた。

すると、息子は、顔をゆがめて 叫ぶように 言った。

   「どうして、僕を信じてくれないの?
    どうして、勝手に採点なんかするの?
    点を見るんじゃなくて、僕を見てよ。。。

  ずっと、ずっと、塾で、他の人のことばっかり見て、
       僕のこと、ちゃんと、見てなかったでしょ!

  たとえ、全世界の人が、無理だって言っても、
  信じてほしかったよ!

  点数じゃなくて、僕を信じてよ!」


私は、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた! 


息子の脇には、姪が居る。
息子の様子を心配して、来てくれていた。
姪も泣いている。

 「そうだよ。 きーちゃん、どうして、信じてあげないの!」

信じるって、、、
だって、だって、、、
私は、点数をつける世界で仕事をしてきて、
子供たちの成績を上げることが仕事で、、、

 でも、でも、でも、、、

   本当に、そうだ。。。 


   「ごめ ん  ね。。。」 


息子は、言った。

 「明日の発表は、一人で電車に乗って見に行ってくる。。。」


次の日、息子は、一人で電車に乗って、合格発表を見に行った。


 結果は不合格だった。 


帰宅するなり、息子は、熱を出した。
インフルエンザだった。
1週間後には、試験がある。。。

息子は、ふとんから、顔だけだして、聞いてきた。

    「受けてもいい?」

    「受けてもいいよ」、と 私は 答えた。

息子は、、、、かすれた声で 言った。 

    「今回、ダメでも、後期、また、同じ学校を 受けるよ。
                  進路は変えない。
     後期、落ちたら、受かっている所に 行くよ。。。」

    「わかった」 と、私は 答えた。

息子は、 小さな 蚊の鳴くような声で 言った。

    「信じてくれる・・・?」

    「・・・信じているよ。」、と 蚊の鳴くような声で 答えた。

1週間後、熱は下がり、息子は受験した。


今回は、同じ学校の 生徒と 数人で、行った。
息子は、帰ってきた、真っ青な 顔 だった。。。
結果が 出るのは、1週間後。。。


長い、長い、トンネルを歩くような、1週間だった。



発表当日、私は、電話の前で 正座して 待っていた。



10時発表。。。10時15分、電話がなった。


「合格したよ!」


あれから、12年。。。 


その間に、大学受験、そして、陸上大会、入社試験、、と、
長く暗い トンネルを歩み、結果を 待つことを 繰り返した。

その度に、思い出す 息子の言葉を。。。


 僕を 信じてる・・・?


子育ては、皆、同じだけ手がかかると、誰かが 言った。
息子が小さい頃、私は 産後の肥立ちが、悪かった。
手のかかる所は、従兄弟や母親や、幼稚園の先生、やママ友、
学生時代からの友人、姉の家族の手を かりていた。


しかし、どうしても、母親の手が 必要な所が ある。。。


 それは、子を無条件に信じることだ。。。


 全世界が、ダメだと言っても、、、
 それでも、信じる。。。


無条件とは、、、考える余地がないことだ。。。

 知性、知識、常識、、、 頭で考えることでは ない
 ただ、ただ、ただ、、、 思考 なしに、受け 取る。。。

  親業 とは 苦行? 修行? 巡礼の旅。。。

そして、この親業は、 死を迎える時 まで続く、、
 いや、もしかしたら、、、死を超えて 続くかもしれない。。。


今、また、私は、問われてる。。。

 「信じている・・・」か、と

涙が、こぼれる。。。。

 「信じてるよ。。。」と 簡単には、言えない。。。

年ととも 蓄積した 知識、常識、思い込み、、、が 
 皺のように 増えてしまった。。。が


  にも かかわらず・・・


私は また、「信じる」という 深い海に 身を委ねる。。。


  怖い 怖い と 頭は 叫ぶ・・・


しかし、


   ありのままの 現実は 一瞬の出来事

ただ、ただ、 あるがまま 受け取る だけだ。。。


 信じきれない、と 思う、、、
 信じている、と 思い切った、、、 
 信じる も 信じきらないも どちらでも ない、、、

 その一瞬 一瞬 を 
  あるがまま に 
        受け 
          手放す の 繰り返しだ。。。

      河の流れを 眺めるように 自分を 眺める。。。

        それが 今 
            走る 息子へ 
               私が 出来る事。。。

あきやまやすこさんが書いた記事を読み、、、 それから、40日間、
私の中で、「信じている・・・」の言葉が鳴り響いていた。
40日、心の中に閉じ込めていた思いを、言葉にした。。。
涙と共に、緊張が体から抜ける経験をした。。。

40日前、KAさんが、背中を押してくれた、この記事、
これは、心の揺らぎの記録、
そして、
親として与えられた「仕事」の記録。。。

#息子 #信じる #今 #ここ #私が出来る事




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