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至福の水浴び カンボジアの暮らし方4

お風呂に入ってシャンプーしようとしたら、全然泡立たない。

朝から息子と公園に行って遊び、午後も強い風のなか、ドラッグストアに行った。

砂が髪の全部にまとわりついている。

一日中、身体にぺたっと何かが貼り付いているかんじですっきりしなかったんだよな、と振り返りながら全身きれいに洗ったらすっきりさっぱりした。

この爽快感。


暑くて赤土の砂ぼこり舞うカンボジアでは、水浴びの習慣がある。

昔ながらの方法は、大きなかめに入った水をばしゃばしゃと身体にかける方法だ。

田舎の村では、ほとんどの家が木でできた高床式のつくりで、その床下に人ひとり入れそうな大きさのかめが置いてあった。男の人ならクロマーというスカーフにも風呂敷にもなるチェックの布を腰に巻いて、女の人ならサロンという筒状に縫った布を身体に巻いて、水浴びをする。

バナナの木の大きな葉っぱ、すっと空に伸びるヤシ、柱につながれた牛、座っておしゃべりをするための台、干してあるクロマー。

村の家でも、ホームステイをした家は室内に水浴びスペースがあったし、泊まりに行った友達の実家は近所の数軒でひとつ、水浴び用の建物をつくっていた。でも、それがあったとしても、汗をかいたし疲れたからちょっとひと浴び、みたいなかんじでばしゃんと外で水浴びしたりするのだ。

日中、外は暑くて陽射しはじりじりと肌を焼くように強い。でも、日陰に入ればひんやりして涼しい風が吹き、すっと汗が引く。

水浴びをして日陰で涼むなんて、最高だ。それができれば、エアコンなんて全然いらない。特に、木の家はめちゃめちゃ風がよく通るから、夜なんて少し寒いくらいだ。


私は田舎といっても町に住んでいたので、かめで水浴びはしなかったけれど、1日に何度かシャワーを浴びた。シャワーといっても、大家さんに頼んでトイレに給湯器をつけてもらった即席のものだったから、やっぱり基本は水浴びなのだ。

午前中の仕事が終わって家に帰り、シャワーを浴びて、風が通るリビングですいかを食べる。汗ばんでいた肌はすっきりして、なのにたくさん泳いだあとのように身体が重くなり、ソファに吸い込まれてつい眠ってしまう。午後の仕事に行くのがつらい。

夕方帰ってきて、またシャワーを浴びる。Tシャツを着て腰にはバティック柄のサロンを巻き、キッチンの横のドアを開けて座る。帰りに買ってきたコーラとかトニックウォーターとかの缶にストローをさし、日本のものよりも気が抜けたようなゆるい炭酸を流し込みながら、オレンジから紫へ、だんだん暮れていく空をぼーっと眺める。

至福の時間。


日本に帰ってきて、梅雨どきの肌にまとわりつく湿度にびっくりした。さらに、夏の暑さの逃げ場のなさ。日向だろうが日陰だろうがどこでも蒸し暑い。

ちょっと水浴びできたら気分転換になっていいかもしれないけれど、仕事をしていたら朝から夜まで働きっぱなし。ちょっと会議の前にシャワー浴びてきまーす、とか絶対にない。

でも、今年の夏だけは息子とふたり、時間はたっぷりある。お昼寝の前に水浴びしよう、なんてこともできるのだ。なんならお風呂で遊んじゃうことだって。友達のSNSを見ていると、どうやらお風呂プールは夏場の定番らしい。

水鉄砲とおもちゃのじょうろと、水をかけるとくるくる回るおもちゃを買おう。

水浴びしてエアコンを弱めに効かせた部屋に戻り、窓からの暖かい陽射しに包まれて息子と一緒にお昼寝、最高。

よし。今年の夏は水浴びだ。

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