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日々ムサビ(通信)【彫刻Ⅳ】

8月初め。6日間の彫刻Ⅳのスクーリングを受けてきました。

【彫刻Ⅳ】

◯授業の概要
抽象彫刻について、3つの課題A〜Cを通して学ぶ。
課題A:アルプの制作プロセスを学び、写真から抽象形態を導き出す実習とそれを立体にする実習。(石膏型取り)
課題B:ブランクーシの制作プロセスを学び、抽象形態を日常にあるものから見つけ出す実習。(デジタル写真)
課題C:カロの制作プロセスを学び、鉄筋を溶接して言葉(文字)を作り、空間に構築させる実習。(アーク溶接)

《課題A》
課題Aは、スマホのカメラで教室の中を撮影し、その写真からある形を導き出して、さらにその平面の形を立体にするというものです。
写真は自分が撮ったものではなく、別の人が撮ったものとシャッフルしたものを使いました。
課題Aで学んだハンス・アルプの作品は、アルプの「ダダイズ」という芸術の理念を、シュールレアリズムという方法を用いて具現化しているのだそうです。
そういうわけなので、(どういうわけなのか?)私たちも写真に写っている壁や、カーテンや、椅子や机など好きな部分を好きなように切り取ったりくっつけたりして、「見たことのない、知らない形」を見つけて具現化しようというわけなのです…!(そんなことが果たして可能なのか…?)

ハンス・アルプ「翼のついた実体」
ハンス・アルプ「鳥の骨格」


◯制作の様子
写真から作った形に沿って、粘土で壁を作って、立体にします。

石膏が固まったので取り出します。


できた作品は教室に展示して講評になります。他の方の作品と一緒に並べて、どこに置いたらいいか話し合い、教室全体を展示会場のようにしました。
個人的には、この展示が一番難しかったです…。
どうしても、他の方の作品と自分の作品との位置のバランスなどを、皆さんが何が良くて何が悪くて動かしたり向きを変えたりしているのか、全くよくわかりませんでした…。最終日にも別の作品で同じように他の方との展示があったのですが、全然わかりませんでした…。
展示風景の写真は他の方の作品も映っていたので控えます。

《課題B》
課題Bは、チェスの駒を作るという課題です。
身の回りのものから、チェスのコマになりそうなものを撮影して、写真展示で発表します。
これは、ブランクーシの「形の中に何かを見出す」という制作プロセスを踏まえた課題です。

ブランクーシ「空間の鳥」


ブランクーシ「若い男のトルソⅡ」


チェスの駒は、ポーン ルーク ナイト ビショップ クイーン キング の6種類があります。その6つそれぞれの動き方と役割、キャラクター性を考えながら撮影をします。
写真はものそのものを一つの駒として見立ててもいいし、複数の写真のパーツを切り取って組み合わせて作ってもいいということでした。私は、まず6つの駒にそれぞれ自分なりのイメージのキーワードをあてがって、それに当てはまりそうなものの形を、学校の中だけでなく、自分のとまっていたホテルなどから手当たり次第写真を撮っていって、それらを組み合わせることにして制作をしました。

ポーン:小さい。一歩一歩動く。
ルーク:壁 ガッチリ かたい
ナイト:機敏 軽やか かっこいい
ビショップ:僧正 寡黙 我が道をゆく
クイーン:えらいがよく動く。実は一番強い。
キング:どっしりと構えている。あまり動かない。

展示は上のような形で並べて行われました。私はいろいろな形を組み合わせて作ったので、それがいかに自然に見える、貼り合わせる際に気をつけるようにしました。
それぞれの駒の関係性が薄いような気がします。実際の駒のようなサイズ感に気を付けると、良かったような気がします…。


《課題C》

課題Cは、鉄の棒を材料に、4〜5文字のひらがな・カタカナの言葉を作り、それを組み合わせて自立する立体をつくりました。文字同士は2点以上で繋いで、それをどうくっつけるのか?それぞれの繋がり方がどう作用するのかを考えながら制作します。
私は「まるまり」という4文字の言葉で制作することにしました。
溶接ができる作業場所へ移動すると、まずは溶接や切断、曲げたり伸ばしたりする方法のレクチャーを受けました。
その後で、鉄の棒6mmを4本、9mmを2本もらって、作業がスタート。

まずはチョークで案を練ります。「まるまり」という言葉が、その意味通り中心に向かってまるまっていくようなイメージで、ほぼこれの通りに鉄の棒の形を変形させました。
途中の過程が抜けていますが、全ての文字を一つに組み合わせて溶接したもの。あとはどう置くかです。
横に倒してみたり。
もう一つ小さなものなら作れそうだったので、今度は「べちゃべちゃ」という言葉で同じように作りました。
なんとか二つを組み合わせておいて、かっこいい形がないか模索中。
講評するための展示する教室で、最終的な場所を決めます。
これがまた他の方の作品とのバランスを考えるのがとにかく難しくてよくわからず、どんどん隅っこに置いていくことに。

講評では、線と線の対応する形や、立体の外側の空間にもっと意識をむけることや、「こうも見えるけど、ああいうふうに見えるかも…」といったような、鑑賞する人を「飽きさせない形」になっているなど様々ご指摘いただきました。

この授業を通して印象的だったのが、
★「ある形を作る」ことと、「ある形を見出す」ことの違い
★「作りたいモノのイメージ」と、それを「表現する方法」の出会い
→具象と抽象の交互の関係
★制作とは、「表現したい!」「表現できない…」の戦い
といった先生からのお話でした。

「彫刻Ⅳ」の6日間、3つの課題をこなすハードなものではありましたが、とても実りあるスクーリングでした。


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