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家族そろって中国へ行く。はずが・・・

エルサルバドル人の夫が在中国エルサルバドル大使館に勤めることになった。中国への引っ越しが決まったのは2021年の11月。ちょうどオミクロン株が話題となっていた時期だ。
家族そろって引越しを予定しており、もちろんフライトも夫と私、子ども二人分のチケットを買っていた。

現時点での最新情報がどうなっているかはわからないが、当時エルサルバドルから中国渡航の際には渡航前に2回のPCR検査を受け2つの陰性証明を提出する必要があった。
エルサルバドルのコロナ感染状況は比較的落ち着いており、家族の中で誰も感染者が出なかったのが何よりも有り難い。夫婦一緒に同じタイミングでPCR検査を受け24時間以内に出る結果を待つことに。夫の結果は陰性。私の検査結果も陰性であることは疑いもしなかった。

"POSITIVO" スペイン語でそう表記された結果はつまり陽性を意味する。一瞬息が止まるような感覚と同時に、瞬時に夫と渡航をともにすることができないと頭が切り替わった。
それが一回目の検査結果だった。では2回目はというと、私も夫も陰性だった。無症状の陽性も疑ったが、どうやらいわゆる擬陽性の可能性が濃厚だ。
というのも、ラテン諸国のPCR検査の精度は日本に比べ正確さが劣り、矛盾する2つの異なる検査結果が出るのは私たちの身近な知り合いやご近所でもたまに耳にしていた。しかしまさか自分の身に降りかかってるくるとは思ってもいなかった。
きっとコロナに感染していたとしても同じことをも思ったに違いない。「まさか自分が」何事においても、人間はほんとうに楽観的で無責任なもんだなあと自分を俯瞰した。

2回のPCR検査は1回目を渡航前72時間以内、2回目を渡航前48時間以内に受ける必要がある。1回目の検査結果が出たのが既にフライト前日で、新たに受け直して陰性を証明しようにも間に合わないという状況だった。

エルサルバドルから中国までの飛行時間は約14時間。オミクロンがU.Sで拡大しつつある最中キャンセルが相次ぐフライト。乗り継ぎも必要なのでアメリカのどこかで一泊してさらに渡航前にまたPCRテストを受け陰性が確定した後渡航が許される。
飛行時間が何時間かかろうと何回PCRを受ける必要があろうと、私一人ではなんの問題はない。問題は当時2歳と1歳に満たない子ども二人を、夫が去ってからフライトが確保できるまでのエルサルバドルでの生活と、その道中が完全ワンオペになることだ。更に追い打ちをかけるように、中国へ着いてからも3週間の隔離期間という地獄が待っている。

ちなみに。日本からエルサルバドルに引っ越してから3カ月ほどしか経っておらず、夫の転勤は割とすぐに決まった。今回子どもにとってはもちろん私にとっても初めてのエルサルバドルであった。公共語ははスペイン語。私のスペイン語レベルと、夫の日本語レベルはどちらも赤ちゃん。英語でコミュニケーションを取っている。スペイン語を話す人は英語も大体わかるだろうと考えていたが甘かった。想像していたより英語話者は少なく思うようにコミュニケーションが取れない。
夫を介しての共通の知り合いはいるものの、私自身はエルサルバドルになんのつても知り合いもいない。夫の両親は夫が若い時に他界しており、頼れる親類も限られている。しかもその中で英語話者も限られている。
つまり私にとって、住み慣れて十分に整った環境では決してないわけだ。

夫は大使館で上司である大使が待つ中国へ行かなければならない。数時間後には家族と離れ一人旅路へ向かうのだ。
色々な考えが頭の中を過ったが、考えたところでどうにもならないし、なるようにしかならないと腹をくくった。
どちらかというと夫の方がショックが大きく心配と不安と行き場のない怒りの対処に困っていたように記憶している。家族をおいて一人遠く離れた中国へ向かうのだからそれはそうだろう。

先が思いやられるスタートとなってしまった。。。


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