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子どもたちに精神科・心療内科の受診を勧めるタイミング

「もっと早く受診すればよかった」
「どのタイミングで相談したらいいかわからなかった」
という言葉を受診された保護者の方から、よく聞きます。
そこで、私がお勧めする受診のタイミングについて、書くことにしました。

まず、発達の凸凹に関する相談か、心の問題か、で分けてご説明します。

① 発達の凸凹に関する相談
<未就学児の場合>
言葉や運動発達の遅れについて、様子をみてよいかどうか、ということは、
専門家のアドバイスに従った方がよいです。
発達の遅れが内科的疾患によるケースの場合、治療で疾患の進行を防げる可能性があり、早期発見の必要性があるからです。
内科的疾患でなくても、発達の遅れがある子には、その子に合う対応を親が知り、
適切な時期に療育を開始することは、発達を促す環境を作るという意味で重要です。
発達の凸凹があるお子さんの場合、そうでない子のように「自然と身につく」ことが難しいこともありますし、
うまくできないことを怒られてばかりでいると、自己肯定感が育たず二次障害をきたしてしまう恐れがあるからです。
専門機関での療育を必要とするのか、家庭での取り組みでよいのか、
といった療育の必要性についての見立ては、専門家の判断を仰ぐ必要があります。
したがって、気付いた時点で、かかりつけの小児科や、
お住まいの保健センターなどの発達相談などに一度相談してみて下さい。
情緒の問題についても、家庭での対応を工夫してもなかなか解決しない場合は、
専門家に相談することをお勧めします。


<小学生以降の場合>
勉強が苦手、空気を読みにくい、集団行動を取ることが苦痛・・・などは発達の凸凹のサインです。
ただ、発達の凸凹はその人の個性の1つですから、
周囲と合わない部分があるからといって、診断を求める必要はないと私は思います。
凸凹が故に、友達とのトラブルが絶えない、友達関係を築きにくく本人が悩んでいる、
周りの人や物、自分自身を傷つける行動がみられる、
登校困難、情緒不安定などといった二次障害があって、
学校や家庭で対応を考えてもうまくいかない場合は受診をお勧めします。
発達特性を踏まえた環境調整や、本人の困りについて一緒に見直すお手伝いができると思います。
また、就学前に既に療育を行われていたり、支援学級に所属していたりするなど、
支援が必要である事が既にわかっている発達の凸凹があるお子さんも、
心の発達過程で本人も家族も悩みを抱える事が多いため、受診をお勧めします。
こうした場合、私は落ち着いていても長期休暇のタイミングで経過をみさせてもらいながら、
困った時に追加で予約を入れて貰う、という形でフォローをしています。

② 心の問題
子どもの心の問題は、親が変われば解決する、という一部の専門家の意見もあります。
確かに、親や学校などの環境が本人を受容するものに変わることで、
本人の心の問題が解決する場合もありますし、
どんなケースでも、こうした環境調整は必須だと思います。
ただ、同じ事を体験しても心の問題を抱える子とそうでない子がいるように、
環境だけで物事は発生するわけではありません。
本人の気質、発達特性、これまでの環境から作られた考え方に、
精神的な負荷がかかる出来事が加わって、心の問題は発生します。
従って、環境だけではなく、本人に対するアプローチも必要になると川谷医院では考えています。

では、どのタイミングで受診したらよいのでしょうか。
「幻聴が聞こえる」「死にたいと思い詰めている」「食事を摂ろうとしない」などは、
親が連れて行こうと思いやすい状態だと思いますが、
「眠れない」「落ち込んでいる」「イライラしている」といった状態は、
どこからが病院に連れていったらいいのかわからない、と保護者の方が悩むと思います。
前回「心の健康のバロメーター」で書きましたように、
「食う寝る遊ぶ」ができない状態があるということは、
1つの目安になるかなと思います。
迷ったら、かかりつけの小児科や、スクールカウンセラーの先生に相談されてみるといいでしょう。

心の問題の発生については、川谷先生の臨床ダイアリー「心の病は治るのでしょうか」に詳しく解説がありますので、ご覧下さい。
http://kawatani.sblo.jp/article/176030395.html


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