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「人の気持ちがわからない」悩みを持つ子の保護者にお伝えしていること

「人の気持ちがわからない」「感情のコントロールが苦手」
ということを保護者の方が心配されて受診して来られる患者さんが結構いらっしゃいます。

そういうお子さんの話を聞いてみると、
人の気持ちの前に、「自分の気持ちがわからない」
ということが大半です。
自閉スペクトラム症の人に多いのですが、
そもそも気持ちというものに目を向けることが苦手だから、
自分の中の負の感情について
「なんか嫌な感じ」
で全部まとめてしまって、言語化できない。
そうなると、もやもやした気持ちがたまりにたまって爆発してしまう。
一度爆発すると、スイッチが入りやすくなってしまうので悪循環です。


こうした場合、診察室で言語化を促したいのですが、
元々気持ちに目を向ける習慣がついていないので、なかなか難しいです。
ですから、まずは感情に目を向ける習慣を持つことから始めるようお勧めしています。
普段の会話の中で、わざわざ口にしないけれど、
相手の気持ちを思って行動することって、よくあると思います。
それをあえて口にするのです。
「疲れたね」「寂しかったかな」「つまんなかった?」
そんな何気ない一言でも、投げかけられることが増えることで、
「今、自分はこんな気持ちだったのかな」
と気持ちに目を向けるきっかけができます。
また、親からこうした言葉をかけられることで子どもは
「私の気持ちをわかろうとしてるんだな」と思えます。


よく心理士の先生によるアドバイスで目にされるかもしれませんが、
「感情のラベリング」
を意識していくのがよいです。
もやもやした気持ちが、何の感情だったのか、
さっきの感情にラベリングしていくのです。

気持ちに目を向けるのが苦手な人はいきなり負の感情は難しいですから、
楽しいこと、嬉しいこと、ワクワクしたことなど、
正の感情から取り組んでいくといいでしょう。

楽しいこと日記をつけるのもお勧めです。


といっても、気持ちに目を向けていない子が、
いきなり「楽しいことを書こう」なんて言われても難しいです。
楽しいことを書こうと言われても、それを評価されることを意識してしまう子もいます。

そもそも負の感情を持つことにネガティブな気持ちを持っている子の場合、
それを意識するのも嫌なのです。
まずは感情というものに「こんな気持ちになってもいいんだ」
と思うところから始めた方が良いです。

そこで私がお勧めするのは、
「こころキャラ図鑑」という本です。



この本には、様々な感情をモチーフとしたキャラクターが描かれています。
さらに、そのキャラクターがいすぎると困るところ、いないと困るところ、
といった説明もあることが、その感情を持つ自分を否定しやすい子にとって、
安心して振り返りやすくなるんじゃないかなと思っています。
「さっき怒ってたよね」と言われるより
「さっき、おこるじょ出てたよね」と言われる方が、
指摘されて嫌な気持ちもしにくいので、
感情について客観的に考えやすくなると思います。
キャラクターを使って感情と向き合うというのは、すごくいいアイディアですね。


自閉スペクトラム症の人は、気持ちに目を向けるのが苦手なケースが多いですが、
学んで経験していくと理解できる人たちです。
そこで、彼らには小説を読むことをお勧めしています。
小説を読むと、主人公の気持ちを後追い体験でき、経験値を増やすことができます。
幼児期から沢山絵本の読み聞かせをして、主人公の気持ちに目を向けていくといいですね。
そこに「こころキャラ図鑑」のような本を使うと、より効果的だと思います。

感情のコントロールのことで問題を感じる前の幼児期から、
発達特性を疑われて受診された子の保護者の方には、
上記のようなやり方で、気持ちに目を向けることを意識して、
声かけを行っていくことをお勧めしています。

小学生以降ではSST(ソーシャルスキルトレーニング)も有効ですが、
ご家庭でも出来る事から取り組まれると、より効果的だと思います。

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