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弁証法

前回、不登校児への対応を書いた流れで、
今回も不登校児支援で川谷先生から学び、
私が実践している対応について書きます。

不登校児は、学校に「行く」「行かない」で悩み苦しんでいます。
親は苦しみを取り除いてあげたくて、
「それじゃあ、行かなきゃいいんじゃない?」と言うものの、
そんなことを言うと逆に怒り出す・・・
かといって、行く事を親が決めようとすると、それはそれで泣き叫ぶ・・・
なんていうことが、よくあります。

それは、行きたい気持ちと行きたくない気持ちとで葛藤している状態の中、
親から一方に決められると、他方の気持ちが強くなって反発したくなるからです。

それでは、どうしたらよいでしょうか。

そこで役に立つのが「弁証法」です。

弁証法とは、簡単に言うと
「対立する2つのこと/考えから、
どちらかに偏るのではなく、新しいこと/考えを創り出すこと」です。
この「新しいこと/考えを創り出すこと」をアウフヘーベンと言います。

不登校を例に挙げて考えてみましょう。
学校に行くと先生に怒られるのではないかという不安があって登校できずにいる子がいるとします。
学校に行くのは怖いけれども、行かないと友達と遊ぶことができない。
その「行く」「行かない」で悩みながら、
「保健室なら行けそう」と本人が言ったとします。
この「保健室に行く」ということがアウフヘーベンです。

ここで、アウフヘーベンは、親が指示するものではなく、
自分自身で創り出すことが大切です。


物事には必ず相反する2つの側面があります。
「蜂は刺すかもしれないから怖い」けれども、「蜂蜜を作ってくれる大切な存在」だし、
「花は美しい」けれども、「枯れたりしおれたりすると汚くもなる」。
「子どもは可愛い」けれども、「親を悩ませる」。
子どもにとっては、「優しいお母さんは大好き」だけど、
「怒ったお母さんは大嫌い」でしょう。
必ず相反する側面があるので、人は悩むわけです。
悩みを持たなくていいように、割り切る、という選択もあります。
「花は枯れてしおれると、後の処理も面倒だから、飾らない」というように。

ただ、こうした葛藤は、人生の中で繰り返し経験されていくものです。
なぜなら、全てのものには相反する側面があるからです。
そして、割り切れない物事に直面して、結局人は悩まされるわけです。

子どものうちにアウフヘーベンする力を身につけておくと、
その後、こうした問題に直面した際に、それを乗り越える力を身につけることができます。
それはその人にとって、大きな強みとなります。


不登校の子が抱える葛藤はとても苦しいので、
本人も周りも、その苦しみを取り除くにはどうしたらよいかと、
つい考えてしまいます。
そして、葛藤を抱えないように働きかけてしまいがちです。
ですが、それが問題の解決にならないことは、
本人が一番よくわかっているので、その矛盾に対する苦しみは残ります。
そしてどんどん、問題を回避する思考に陥ってしまいます。
そうなると、本人の持っている力を引き出すことはできません。


ですから、親や周りの大人たちは、
本人が葛藤する苦しみに寄り添いながら、
本人が悩んで、アウフヘーベンすることを支えていく、
というのが大切だと私は考えています。

寄り添い方として大切なことは、
「その子はどんな悩みを抱えているのか、苦しんでいるのか、
と考えながら、理解しようとする姿勢」です。
いわゆる「共感」ですが、
ここで気をつけて頂きたいことが、
「シンクロ」ではないということです。
シンクロしてしまうと、聞いている側も同じ気持ち、
あるいはそれ以上の苦しみを抱えてしまうので、
逆に悩んでいるその子にとって「あぁ、自分の苦しみはそんなに大きなものなんだ」と、
悩みを強化させることにもつながってしまいます。
シンクロされることで、より不安になってしまう人もいます。
「気持ちがわからない」という親御さんもいらっしゃいますが、
子どもとはいえ、他者なのですから、わからなくて当然です。
大切なのは「わかろうとする姿勢」を子どもに伝えることです。
大人が子どもに真剣に、自分のことをわかろうとしてくれる姿勢を見ると、
子どもはそれだけでも安心を得、不安が小さくなることだってあります。

本人がアウフヘーベンする力を支えるには、
以前お話しした「能動性」を引き出すことを意識することがまず重要です。
その上で、できるだけ本人の悩みを親が請け負ってしまわないよう注意しつつ、
両方の部分があることに一緒に目を向け、
どちらも一長一短で選ぶことは難しい、と話し合いながら、
本人が過去に似たような場面でどんな選択をしてきたか思い返しながら、
悩むことをサポートしていくのがいいと思います。


能動性に関する記事はこちら→
https://note.com/mam01/n/n4cf1a4b835be?magazine_key=md07d1f2f2ce3

https://note.com/mam01/n/nf66d95d05eff?magazine_key=md07d1f2f2ce3


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