見出し画像

声優ビジネス 今昔物語

声優オーディションに挑戦中という件は、何度か既に執筆した。その過程で、かつて約30年前に声優や舞台俳優を目指して修行を積んだ当時と今とでは、声優ビジネスも新しい形が加わったと感じている。

かつての姿を簡単にまとめよう。まず一般的に、声優志望者は声優養成スクールに入る。卒業時にオーディションが開催される。合格すると、声優プロダクションの運営する養成所へ、ないしはプロダクションそのものに配属される。つまり、声優志望者はプロダクション所属を目指し、所属後は勉強を続けながら、仕事の斡旋を待つ。プロダクション側も未来のタレント(プロダクションにとっては収入源)を発掘するために、養成ビジネスをするという形である。私が通ったスクールは東京アナウンス・アカデミーで、週2回半期で13万、オーディション資格を得る1年で26万程度だった。決して安くはないが、お金を払う腹落ち感があった。(少ないとはいえ、NHK等から仕事がきたのもある)

SNSや広告を見ると、声優オーディションのお知らせがかなりある。私が挑戦中のものは、オーディションとは言っても、目的が「フリーランサーの自立を支援する」プロジェクトという形を取っている。オーディションを受ける→合否が決まる→合格者にはフリーランサーとして、YouTuber、VTuber、各種ナレーションの仕事が務まるように(自身をセルフプロデュースして、自立できるように)、研修用資料が送られる、ないしはワークショップ参加を促されるというものだ。プロダクションへの所属という形式ではなく、仕事の斡旋を約束するものでもない。仕事を得るためのオーディションの紹介はあるかもっしれないというもの(無論、倍率は高い)。オーディションを主催する会社によっては、研修費、支援費として百万円近く請求される。安くて3か月で10万程度。

かつて養成所で学んだ経験のある私にとっては、とてもリーズナブルな値段には思えず、金額を支払う納得感が湧かない。おそらく、仕事の斡旋を約束するものではないという点からだろう。単に、声優を志望する夢に付け込んだアコギなビジネスに思えるが、それも一つの形なのか。それだけの金額を投資して回収するには、相当の能力が必要と思うのだが。私なぞは、マージンを30%程度あげるから、仕事をあっせんしてくれたほうが嬉しい。しかし、会社側にとっては、能力未知数のタレントのために仕事を獲得する労力よりは、声優になりたいグループ群に金を吐き出させるほうが、ビジネスとしては簡単なのだろう。

そう簡単に、声優になれるものではありません。地道に自身で、声の作品をYouTubeなりに発表していくほうが心の安寧を感じられるのかもしれない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?