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『英単語学習の科学』を読んでわかった語彙を増やすための方法と道筋 ー まずは3000語,理想は9000語

『英単語学習の科学』を読みました.

この本を読んだことで,語彙を増やすための方法と道筋がかなり明確になりました.

特に参考になったのは以下の点です.

・全単語を「高頻度語」,「中頻度語」,「低頻度語」に分ける分類法
・会話やテキストの理解に必要な語彙数
・自分の語彙数の調べ方
・語彙学習の種類と特徴(意図的学習と付随的学習)
・「多読」のポイントと,読む量の目安
・「多読」のためのテキストの語彙レベルの調べ方
・「単語カード」が有効な理由と効果を高めるポイント
・「語源学習法」が有効な理由

それぞれ,説明していきます.

全単語を「高頻度語」,「中頻度語」,「低頻度語」に分ける

英単語は一般的に,「高頻度語」,「中頻度語」,「低頻度語」の3つのグループに分類されます.

「高頻度語」とは,出現頻度の順位が1~3000位の3000語で構成されるグループです.「高頻度語」だけで,会話やテキストの約93~94%がカバーできます.ただし,「高頻度語」には,基本動詞や前置詞など,多義語や文法と密接に関わる単語が多いため,完全な習得には時間がかかります.

「中頻度語」とは,出現頻度の順位が3001~9000位の6000語で構成されるグループです.「高頻度語」と「中頻度語」で,会話やテキストの約98%がカバーできます.会話やテキストを理解するには98%以上の単語を知っている必要があると言われています.なぜなら,前後の文脈から未知の単語の意味を推測できる可能性が高まるからです.よって,会話やテキストの理解には「中頻度語」まで習得する必要があります.

「低頻度語」とは,出現頻度の順位が9001位以降の全ての単語のグループで,出現頻度が著しく低いため,自分の専門分野の用語など必要に応じて習得していきましょう.

高頻度語
出現頻度が1~3000位の3000語
・多義語や文法と密接に関わる単語が多い
・カバー率:約93~94%(会話やテキストの 94%をカバーできる.)
中頻度語
 ・出現頻度が3001~9000位の6000語
・会話やテキストの理解に必要
・カバー率:約3~4%
低頻度語
・出現頻度が9001位以降の全ての単語
・会話やテキストの理解に必須ではない
・カバー率:約2%

会話やテキストの理解に必要な語彙数

会話やテキストを理解するためには,使用されている98%以上の単語を知っている必要があるため,「高頻度語」と「中頻度語」をあわせた9000語の習得が必要です.高校卒業までに習得すべき英単語は3000語(2020年に4000~5000語に増えた)なので,大学受験で英語を勉強していたとしても,その後に地道に語彙を増やしていく必要があります.

自分の語彙数の調べ方

自分の語彙数は以下のサイトで調べられます.私の結果は6300語でした.どうりで,洋書が読めたり読めなかったりするわけだと思いました.

自分の語彙数の調べ方
Vocablary Size Testhttps://my.vocabularysize.com/
・140問の単語テスト
・結果のword familiesは上記で使用している語と同じ単位

語彙学習の種類と特徴(意図的学習と付随的学習)

語彙学習法は,意図的学習と付随的学習の2つに分けられます.意図的学習とは,「単語カード」のように語彙の習得を目的にした方法です.付随的学習とは,「多読」のように文脈から自然に語彙を習得する方法です.意図的学習は,出現頻度の少ない「中頻度語」の習得に向いています.一方,付随的学習は,多義語や文法に密接に関連のある「高頻度語」の学習に向いています.そのため,意図的学習と付随的学習の両方を取り入れることが,効率良く語彙を学習するためには重要です.

以下では,意図的学習の効果的な手法である「単語カード」と「語源学習法」ならびに,付随的学習の効果的な手法である「多読」の効率的なやり方を説明します.説明の都合上,「多読」,「単語カード」,「語源学習法」の順に説明します.

「多読」のポイントと,読む量の目安

「多読」による語彙習得とは,たくさんの英文を読むことで,文脈から自然に単語を習得する方法です.

「多読」の特徴は以下の2つです.

1.多義語や文法と密接に関連する単語の習得に向いている.
2.出現頻度が低い「中頻度語」を学ぶ効率が悪い.

「多読」による単語習得の成功率を上げるには2つのポイントがあります.

1つ目のポイントは,95~98%が既知語であるテキストを使用することです.95~98%が既知語であれば,前後の文脈から未知語の意味を推測できる可能性が高まり,未知の単語を習得しやすくなります.

2つ目のポイントは,同じ単語に少なくとも12回は接触することです.回数には諸説ありますが,最低12回は必要だと考えられています.最低12回接触するには,「高頻度語」の場合は30万語を読む必要があります.また「中頻度語」の場合は出現頻度が低いため300万語を読む必要があります.「中頻度語」との接触回数を増やす方法は2つあります.同じテキストを複数回読むことと「narrow reading」です.「narrow reading」とは,読むテキストの分野を一つに絞ることで,その分野で使用される単語との接触を増やすことです.例えば,アメリカの大統領選に関する記事を1~2週間読み続けることで,選挙や議会などに関連する単語との接触を増やすことができます.

ちなみに,毎分100語のスピードで読める人ならば,毎日30分読めば,100日で30万語,1000日で300万語に達することができます.つまり,「毎日30分の多読を3年間」が9000語レベルの語彙習得の目安になりそうです.

多読の特徴
1.多義語や文法と密接に関連する単語の習得に向いている.
2.出現頻度が低い「中頻度語」を学ぶ効率が悪い.

多読のポイント
1.95~98%が既知語であるテキストを使用する
2.同じ単語に少なくとも12回は接触する
  ・「高頻度語」は30万語,「中頻度語」は300万語が目安
  ・「中頻度語」は「narrow reading」で接触回数を増やす

「多読」のためのテキストの語彙レベルの調べ方

テキストに使用されている語彙のレベルは,VocabProfilersというサイトで調べることができます.使い方は以下の通りです.

VocabProfilersの使い方
1.BNC 1-20k,Famsを選択
2.テキストを枠内に貼り付ける
3.SUBMIT_windowボタンを押す

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昨年話題になったビジネス書『Factfulness』のAmazonの試し読み部分を分析してみました.結果を以下に示します.K-1,K-2,K-3はそれぞれ,1000語レベル,2000語レベル,3000語レベルをあらわしています.Comul.taken (%)の数値をみることで,カバー率を知ることができます.この本は,3000語(k-3)までで96.1%を,5000語(k-5)まで98.4%をカバーできます.つまり,語彙数が3000語の人ならギリギリ読める,5000語の人なら問題なく読めるということです.

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「単語カード」が有効な理由と効果を高めるポイント

「単語カード」は学生に人気の学習法で,アメリカの大学生の7割が単語カードで学習しているという調査結果があります.「単語カード」による暗記は「すぐ忘れてしまう」,「役に立たない」などと批判されることもあるようですが,学術的な根拠はなく,むしろ非常に効果的であることが研究結果からあきらかになっています.ただし,「単語カード」による学習だけでは,多義語のように文脈が重要な語彙の習得が難しいため「多読」と組み合わせる必要があります.

「単語カード」による学習の特徴は以下の2つです.

1.効率的(1時間に60~100個習得可能.「多読」は1時間に4語.)
2.多義語や文法と密接に関連した単語に向いていない.

「単語カード」の効果を高めるポイントは以下の4つです.

1.最初はミニマムに,スペリング,意味,発音を覚える.

単語は活用形や派生形や用例など学ぶべきことがたくさんありますが,新出語を学ぶ際はスペリング,意味,発音の3つに絞ることをおすすめします.理由は,一度に様々なことを学ぶと脳のリソースが足りなくなり記憶に定着しにくくなるためです.例えば,新出語を学ぶ際に,その単語を用いた英作文させたら記憶への定着が半減したという研究結果があります.そのため,まずはスペリング,意味,発音の3つの習得に注力し,その後に活用形や派生形や用例などの知識を肉付けしていくことをおすすめします.

2.単語の意味は日本語で書く.

英単語の意味は英語でなく日本語で覚えたほうが長期的な記憶に結びつくことがわかっています.photosynthesis(光合成)や hydrogen(水素)など日本語と英語の意味が1対1対応してる語も多いため,日本語の語彙力を活かして効率的に学習できます.

3.単語の中心的な意味(コアミーニング)をつかむ.

単語によっては意味が複数あることがあります.例えば,drawは意味が20以上あります.その場合は,単語の中心的な意味であるコアミーニングを最初に覚えることで効率的に学習できます.コアミーニングを調べたい場合は,以下のようにWeblioで検索することできます.

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4.単語学習ソフトウェアを使う

「単語カード」で学習する際は,単語学習ソフトウェアの使用をおすすめします.その理由は以下の3点です.

・画像や動画などの視覚情報を使える.
・単語の発音を聞くことができる.
・苦手な単語を重点的に学習できる.

単語学習ソフトウェアとしては,Quizletがおすすめです.単語カード作成時の補助機能が優秀で,単語を入力すると関連画像を表示してくれます.また,音声の自動再生機能もあるため発音の習得にも役立ちます.

単語カードの特徴
1.効率的(1時間に60~100個習得可能.「多読」は1時間に4語.)
2.多義語や文法と密接に関連した単語に向いていない.

単語カードのポイント
1.最初はミニマムに,スペリング,意味,発音を覚える.
2.単語の意味は日本語で書く.
3.単語の中心的な意味(コアミーニング)をつかむ.
4.単語学習ソフトウェアを使う.(Quizletがおすすめ)

「語源学習法」が有効な理由

意図的学習を加速させる方法として,「語源学習法」があります.「語源学習法」とは,単語を接頭辞,接尾辞,語根などのパーツに分解し,パーツの意味を組み立てることで,単語の意味を理解する学習法のことです.「中頻度語」や「低頻度語」の約3分の2はラテン語・ギリシア語起源の言語のため「語源学習法」が効果的です.一方で,「高頻度語」の多くはゲルマン語起源の短い単語のためあまり役に立ちません.本書では,3000~10000語レベルの英単語を分析した結果の「最も役に立つ25のパーツ」を紹介してあり参考になりました.

語源学習法の特徴
・「中頻度語」や「低頻度語」の約3分の2に有効.
・「高頻度語」には役立たない.

語源学習法のポイント
・「最も役に立つ25のパーツ」を参考にする.

まとめ

上記をまとめると,「高頻度語」の3000語は,多義語や文法と密接に関連する単語が多いため「多読」で習得し,「中頻度語」の6000語は出現頻度が低いため「単語カード」と「語源学習法」で習得するというシンプルな戦略が立てられます.以下に「高頻度語」と「中頻度語」に対する,「多読」「単語カード」「語源学習法」の効果をまとめました.

高頻度語(3000語,カバー率:約93~94%)
・「多読」は有効.(多義語や文法と密接に関連する単語が多いため)
・「単語カード」はコアミーニングを覚える際に有効.
・「語源学習法」は役立たない.(ゲルマン語起源の短い単語が多いため)

中頻度語(6000語,カバー率:約3~4%)
・「多読」は非効率.(「narrow reading」など接触回数を増やす工夫が必要)
・「単語カード」は有効.(1時間に60~100個習得可能.「多読」は1時間に4語.)
・「語源学習法」は有効.(約3分の2はラテン語・ギリシア語起源の言語のため)

おわりに〜私の語彙習得計画〜

最後に,私の語彙習得計画を参考までに紹介します.

やることはシンプルで,単語カード30分,多読30分を毎日続けることです.一年かけて語彙数が6300語から9000語になればいいなと思っています.

「単語カード」は,iKnowというサービスを利用しています(DMM英会話の会員のため無料).私の場合,1単語1分で学習できています.毎日30分で,新規を6語,復習を24語で学習しているため,1年で2190語習得できる計算です.

「多読」は,毎分100語くらいのスピードで読めるので,毎日30分で1年で109.5万語読める計算です.「narrow reading」で,関心のある分野の単語を増やしていこうと思っています.読むテキストは,自分の語彙レベルで98%以上がカバーできるものを選んでいます.95%だと理解できないことが多いためです.また,文脈から未知語を推測しやすいテキストを選ぶようにしています.そのため,小説より自分が精通している分野の記事を読むようにしています.以下のサイトに分野ごとの記事サイトがまとまっているので参考にしてください.

「語源学習法」は,今は手を出さないことにしました.書店で,何冊か「語源学習法」の本を読んでみましたが,パーツの意味から単語の意味への飛躍が大きい単語が多く,使いこなせないと感じました.とはいえ語源学習法は「中頻度語」と「低頻度語」の約3分の2をカバーできるポテンシャルを持っているようなので,飛躍が少なく納得感のある単語だけ集めた本が見つかれば取り組もうと思っています.

以上です.最後まで読んでいただきありがとうございました.少しでもご参考になれば幸いです.

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