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イヴサンローラン展で感じたこと。革命者は素晴らしいが、後進はその影響から逃れられない

イヴサンローラン展に行きました。

普段投げやりキッチンをやっているような人間がファッションの展示に足を運ぶことに違和感を覚えた方も多いと思うんです。

何を隠そう、私自身がそうです。

まぁ妻に誘われたから、というのが今回の動機なのですが、興味がないことっていうのは案外受け身な理由であっても行ってみると発見があって面白いんですよ。

ということで行ってきました。
結果は、、本当に面白かったです。

そもそも私、イヴサンローランという人が何者で、どんな功績があるか?ってことをほとんど知らなくて。たまたまこの展示の直前に「美の巨人たち」をアド街の後にそのままつけていたことで受動的に知ったんですよ。

で。
この方。
本当にすげーなぁって思いました。

女性向けのファッションの可能性を限りなく広げたという意味で、展示がもはやエジソン展じゃねえのか?ってくらいのものでして。

ネイビーファッションとか、トレンチコートとか、ピーコートみたいな、今じゃ普通の服を作ったのもイヴサンローラン。

海外の様々な民族衣装をファッションに採り入れたのもイヴサンローラン。

そしてそれらを用いて舞台衣装にしたのもイヴサンローラン。

だから、その辺で今でも着られているような服の多くがイヴサンローラン発祥ってことになる訳ですよ。奥さん。

だから、彼の功績をまとめて展示すると今普通に着ているものが所狭しと並んじゃう結果になる訳です。

こりゃすげえ

って思いましたけど、60年前~30年前に掛けて作られたものが出ているからファッション的には基礎ではあるけど、少し古い部分もあって。逆にそれがレトロという見方もありますが、当然最新鋭ってことではない。

だから、その辺を歩いている女性が

わー素敵!!

って言っているのを見ると、いやいやそういうことじゃねえよ、今のセンスで素晴らしいものを観るっていうのがポイントではないのよ、って思ったのは事実です。

エジソン展で、電球があるのを見てわー凄い!にはならないじゃないですか。それを作ったことがすげえんだよ、っていうね。

てな感じで毒づいてもみたんですけど、私気づいたんですよね。

もしかしたら、イヴサンローラン以降ファッションってそんなに変わっていないんじゃないのか?

って。

多分大きな枠で見たらものすごいスピードで変化している業界だとは思うんです。友人が大手のファッション企業で販売戦略とか担当する部門に居ましたけど、いわゆる流行を作りながらも一方でファストファッションも販売しなければならない。

時間の遷移が早すぎて、トレンドが日々変わっていって、消耗しすぎて、そんなファッション業界に見切りをつけて辞めていった。

ただ、さっきの女性が言うことも意外とその通りで、多少センスは違うけど、今だってイヴサンローランが作った当初の服は全然観られる。

これだけ変わりゆく業界の中で、何十周もしている筈なんですよ。今展示されている服っていうのは。

それなのに、素敵という言葉が出てくることが本当にすごいことだ。ということに気づいたんですね。それだけ誰が見ても、時代がかわっても良いと思えるものを作れたということは本当に素晴らしい。

一方で、こうも思いました。

ファッションって、イヴサンローランにやり尽くされた部分、無い?

2023年に、イヴサンローランみたいなファッション界の巨人と言うべき存在は居ないんですよね。そして、ファッションって革命はそんなに起きていないように感じます。

っていうか、私が知らないだけでイヴサンローラン的な人が居るのかもしれないですけど、この発明すげえなっていう服って目には入っていないんですよ。

だから「ファッションの流行は30年周期」なんて言葉が生まれていて、私が中学生くらいの頃に流行ったものが今また来たりもしている。そもそもこの言葉を知ったのは私が中学生くらいの頃で、母が教えてくれたんですけど。

案外それってどんなエンターテイメント業界でも言えることだったりするんですよ。

とあるギタリストが確か

「およそ考えられるギターのリフの70%はジミーペイジ(レッドツェッペリンのギタリスト)にやり尽くされてしまった」

という趣旨の発言をしていたこともありました。誰だったな?エクストリームのヌーノベッティンコート辺りだった気がします。

誰か革新的なことをすると、皆その影響を受けてしまうということもさることながら、可能性あるフィールドはある程度開拓されつくしてしまう。

あとはそれをマイナーチェンジしたり、異なる要素を付けたり外したりするみたいな感じになりがちではあると思うんですね。

考えてみるとゲーム業界とか、料理なんかもそうだと思います。既存のテンプレートが伝統的に存在しているか、全くのゼロというところから作り始めて、それが爆発的に広がって、模倣とマイナーチェンジと洗練という段階に移行している。

イヴサンローランは既存のファッションをアレンジすることの天才で、アレンジするフィールドを探し、見つけ、そして現代人の生理に合う形で展開した偉人だと感じました。

が、その影響下に生きる後進はそこから逃れることは出来ない。そんな怖さも覚えたイヴサンローラン展でした。


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