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プロレスリング・ノアのメイン変更。反目する拳王と会社の姿勢は同じ!?

最近プロレスリングノアにハマっているという話は何度かしているかと思います。

まぁとにかく面白いんですよ。

きっかけは拳王選手でしたが、試合見ていると他の選手も全部好きになっちゃうくらいクオリティが高いのと、中高生の頃に観ていた全日本プロレスとは違うんですけど、通じるところもあって。

プロレスって言うと新日本ではあるんですが、文化の違いで何度か今も観たんですがやっぱり別物で、しっくりくるのはノアの方だったということも大きかったように思います。

相撲が私にとって仕事であり、責任あるもので、言葉を選ばねばならないし、楽しいけど緊張感あるものっていう位置づけになったからこそ思い切りそういうものから解放された楽しみを求めていたのですが、まぁそんなこともあってプロレスに回帰しましてね。

この2年くらいで武藤敬司引退という特需を終えて、試練の時を迎えながらも熱気は変わらず、むしろ盛り上がってきているノアをレッスルユニバースで観つつ、ついに現場も経験しまして、本当に楽しませてもらっています。

で。
まぁどこの業界でもあることなんですけど、最近物議を醸していまして。1月2日の有明アリーナのメインイベントのカードが変更になるんです。

例え話っていうのは必ずしも状況を的確に表すものではないっていうのは承知していますけど、あくまでも私自身が分かりやすく理解するためのフレーズということでご容赦ください。

相撲で言うと「横綱の後に別の力士同士の対決が組まれる」みたいなことが行われるということなんです。

相撲とプロレスで共通しているのは格であり、相撲だと番付(横綱、大関、…)プロレスだとチャンピオンベルトということになります。

ですから、相撲の結びの一番は必ず横綱ですし、横綱が居なければ大関が取ります。

この原理で言えば一番権威のあるベルト(GHCヘビー)を賭けた戦いがメインイベントに据えられる訳で、元々は拳王対征矢学という一戦が組まれていました。

ただ、これが12月2日に丸藤正道対飯伏幸太というカードに変更になり、拳王征矢戦はその前に行われることになりました。

これがね。
もう大荒れなんですよ。

怒る気持ちも分かるけど、プロレスに戻ってきたばかりの人間からするとこれはね、言葉を選ばずに言います。

プロレスファン怖いなぁ

でしかない訳です。

これに関しては相撲でありえないことが起きちゃったら私も批判をすることがあって、外の人からしたら相撲ファン怖いなぁってことになるからお互い様なんですけどね。

とはいえそう感じたのは事実なんです。

皆さん冷静な風を装っているんですけど、もう脊髄反射ですよね。

ここまで盛り上げてきた拳王選手、そして今年波に乗って観客の支持を集めて正月のタイトルマッチまで上がってきた征矢選手に申し訳ないということやベルトの権威の失墜ということが批判の大きな理由です。

あとは今年の1月にやはり拳王選手と清宮海斗選手のタイトルマッチがセミファイナルになり、グレートムタ対中邑真輔がメインになってしまった。2年連続でこんな仕打ちを拳王選手にするってのはどうなのよ?っていう意見も大きいです。

ただ。
最近ノアを見始めて、凄く楽しんでいて。

そういう立場だから言えることもあるんじゃないかと思ったんです。

この状況を俯瞰できるのは恐らく今だけなんです。

もう少ししたら私は普通のプロレスファンになっちゃうから、プロレス界とプロレスファンの理屈で考えてしまうようになる。

これは私の解釈だし、それを皆さんに強いるようなものではありません。あくまでも「こういう見方もある」ということでお考え下さい。

だから「それは違う」とか「ファンのことを分かっていない」とか、そういう言葉で切り捨てないでほしいかなと思っています。見方が違うっていうだけの話ですからね。

さて、ようやく本題に入ります。
カード変更の是非について考えていきます。

カード変更のメリットとデメリットという視点で考えようと思いましたが、ちょっと違いますね。これは「良い・期待できる点」と「悪い・悪影響があるかもしれない点」という整理をした方がいいと思います。

ちょっと書き出してみます。

■良い・期待できる点
・集客が見込める
→結果、今のノアの良い試合を、固定ファン以外に届けられる

■悪い・悪影響があるかもしれない点
・ベルトの権威の失墜
・拳王選手ならびに征矢選手の労に報いていない
→結果、固定ファンの失望によるファン離れ

こんなところだと思います。

集客の面については、本当にノアの弱点です。

私の中でノアの弱点は ①集客 ②若手育成 ③選手の発信力 という3点と捉えていますが、今最も懸念されているのが集客ではないかと思っています。

武藤敬司引退という特需を終えて、ノア単体で興行すると後楽園ホールは11月で800人程度。最も客入りのあるN-1決勝戦でも大阪で2000人程度。

この状況だと、ノアの身内で構成したカード、つまり拳王対征矢がメインのカードでは多く見積もっても3000人程度になってしまうんですね。

今回の会場は、収容人数15000人の有明アリーナです。
これだとガラガラになっちゃうんですよね。

もし今の身の丈に合わせて興行を打つと大田区総合体育館くらいが合っているんじゃないかと思うんですよ。

つまり有明アリーナを選び、拳王征矢戦を組んだ時点で見えているんですよね。このキャパの会場でやるには、もっと集客が期待できるカードが必要であることは。

だから丸藤飯伏という、過去に対戦が流れ、ファンの支持もある対戦はその解決策になるのは間違いないです。丸藤オスプレイの時もそうでしたけど、丸藤選手と他団体の有名選手との対戦って魔法が掛かったような、試合前から期待感が出てくる。購買意欲がそそられるのは間違いないです。

ただ、実際どの程度売れるかは分からないです。ムタ中邑だと確実に売れるとは思いましたが、こちらのカードだと分からない部分もあります。7年前だったらかなり違ったと思いますが…。

では、丸藤飯伏をメインに据えることによるメリットです。

これはもう、拳王征矢を始めとするノアの選手たちの試合を、普段ノアを見ない人たちに届けられるという1点に尽きます。

ベルトの権威の件については会社だって分かっていない筈がありません。だって、私だって分かることをプロレスの興行を打つ会社が理解していないなんてことはあり得ないですからね。

ですから当然、メリットとリスクを考慮してカード変更を考えているとは思うんですよ。

となると、このカード変更は得られるメリットと現在ノアが抱える問題点を考慮してのことと推測します。

丸藤飯伏を組むならセミファイナルにすればいい、という方も多いと思いますが、これでは今の世の中まるでメリットが無いんですよ。

恐らく会社として普段プロレスを観ない方に見せたいのは、間違いなく拳王征矢戦なんです。

拳王と征矢の凄さを見せたければ、飯伏の相手は二人のうちのどちらかにすればいいんです。でも丸藤を選んでいるというのは、過去の因縁があることや天才対決ということもありますが、純プロレスリングノアの最高峰の対戦を丸藤飯伏目当てで観に来た人に見せられるということを重んじている。

仮に丸藤飯伏をセミにすると何が起こるか。

Abemaを観ている人はメインの試合で脱落する人もかなりの数現れることが考えられます。

丸藤飯伏に興味はあっても拳王征矢にはそこまで興味が無い人を、このカード変更で巻き込むことができるんですよ。プロレスは競馬みたいにあらかじめ試合開始時間が決められている訳ではないですからね。

つまり。
つまりですよ。

拳王征矢を会社はないがしろには全くしていない。むしろ大事にしているからこその降格ではないかと思うんです。

いや、

これはもはや「降格」というネガティブな表現ではなく、単に「変更」と言ったほうがいいような気がします。

私個人としては、丸藤飯伏目当てで観ている人が去った後に行われるGHCヘビーよりも、丸藤飯伏目当ての人が驚くような試合をして、引き付けられている方が絶景なんですよ。

身内だけじゃなくて、普段見ない人にもプロレスを届ける。

そうでなければノアの今の実力に見合った会場で、純ノアを今のお客様に届けるような形の興行にしている筈なんですよ。

ただ。
それをノアはしなかった。
そこに大きな意味があると思うんです。

でね。
私は面白いことに気づきました。

この会社の姿勢って、拳王選手の姿勢とそっくりなんですよ。

拳王選手は6月に金剛を解散するときに

「安定望めば進化なし」

と言いました。

金剛というユニットも2022年からの新日本プロレスとの抗争で知名度を上げ、ファンの支持を獲得しましたが、これからというところで突如解散しました。

それは、これからの成長を望んだからです。

それまでと異なるアプローチや刺激的な試みをすると、当然賛否両論出てきます。プロレスのような、それぞれがそれぞれの想いを抱いている業界では最初は否が強くなる傾向にあります。

拳王選手は世間を巻き込み、他の選手にも発信や行動を促しています。

その姿勢を最も体現しているのが、ノアという団体ではないかと私は感じました。

正直なところ、プロレスファンは筋が通らないところに激しく反応を示します。ですから、守りに入って既存ファンを満足させたかったらそれなりのキャパの会場で興行をすれば皆満足し、拳王征矢の対戦を楽しんで正月が終わっていきます。

しかし、それをノアは望まなかった。

「身内だけじゃなくて、普段見ない人にもプロレスを届ける」ということは、奇しくも拳王選手がYoutubeを始める動機でもありました。

唯一にして最大の問題こそが、ベルトの権威という点です。

これに関してはもう、理解を求められるものではないと思います。そして、拳王選手の苦労に報いられるものでもない。両立できるのが一番いいんですけど、そんな方法はありません。

だから、批判覚悟でノアがこれからの成長を見込んでこの選択をした。私はそう捉えたし、そんなに悪いものではないと思えたんですよね。

大きな会場を用意するには費用も掛かります。純ノアの興行にすればそこも抑えられる。でも、少なくない費用も負担し、今後を見据えてバックアップもしてくれている。

素晴しい支援だと思います。

そして、ファンがあまりに激しい反応を会社に示し過ぎてしまうことによって、賛否両論ある闘いをこれから避ける、低成長路線に舵を切るとしたらこれは勿体無いとも感じました。

ベルトの権威をないがしろにして2年連続このようなカード変更をする、そして、この数年支えてきた選手を裏切っていると捉える方が多いことも知っています。そんな気持ちを選手や会社にぶつけている方が大勢いることも知っています。

ただ。

悪いことばかりではないし、実は会社の姿勢っていうのも捉え方によっては受け入れられるものじゃないかなとも思ったんです。私はね。

繰り返しになりますけど、この見方が正解っていうことではないんですよ。あくまでも見方のひとつです。

ただ多様な見方が存在することが分かると、今は怒り一辺倒かもしれないけど少し冷静になれるかもしれないし、気づくこともある。そんな次元の話として読んでいただけると嬉しいかなと思うんです。

1人のファンとして、1月2日が待ち遠しくて仕方ありません。

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