見出し画像

『GROW 本当のブランド理念について語ろう』を読んで。

こんにちは、桜井です。

『GROW 本当のブランド理念について語ろう』を読んで、印象に残った箇所と感じたことを書き残してみたいと思います。各章で気になる箇所をまとめてみたらエライ文量になってしまったので、お時間のない方はタイトルから気になるところだけかいつまんで読んでもらえたら嬉しいです。

はじめに

世界の5万以上のブランドを10年間追跡調査したデータによると、“人々の生活をよりよいものにする”ことを目指す高次のブランド理念をすべての活動の核に据えている企業は、同業他社を大きく上回る業績をあげている。

まず本書の大前提として、数あるブランドのうち“人々の生活をよりよいものにする”ことを目指す企業の多くは同業他社よりも業績がいい、といった調査データに基づいています。

ではなぜ高次なブランド理念を持つことが業績アップに繋がるのか?ブランド理念を具体的にどのようにして事業活動に落とし込めているのか?について本書を読み解いていこうと思います。


第1章 偉大なビジネスには偉大な理念がある

優れたリーダーの5つの行動原則
・人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかの側面で、“人々の生活をよりよいものにする”ことに関わるブランド理念を発見する。
・ブランド理念を軸に、企業文化を構築する。
・ブランド理念を社内外に発信し、社員と顧客の両方とそれを共有する。
・ブランド理念に沿って、理想に近い顧客体験を提供する。
・ブランド理念に照らして、ビジネスの進歩の度合いと社員の仕事ぶりを評価する。

少し省略してまとめると「ブランド理念を発見できる→理念を軸に文化をつくれる→発信し社内外のステークホルダーにシェアできる→理念を顧客が体験できる機会をつくる→結果→ビジネスの進歩度合いと仕事ぶりを評価する制度をつくる」となるわけですが、この順序だとまずは社内(スタッフ)に文化を浸透させるという意味で、社内→社外の順序でブランド理念をつくり、広めていくものだと心得ました。

どんなに素敵なブランド理念でも、それを体現するはずのスタッフが自社のブランドを理解していなければ、顧客にはそのブランドが伝えたい価値・意味は伝えられないと思います。まずは社内および関係者の理解を得ることが大切で、それと同時に、「内外への発信力・体験機会の創出・評価制度の構築」が必要になってきます。さらに、コミュニケーション戦略構築・戦術/企画立案力・HR/組織理解も必要になってくるとまとめられています(さらっとめっちゃ難しいことを羅列していると思いますが、、)。


第2章 成長するビジネスの条件

ほとんどの人は、「いい商品だから」という具合に漠然とした理由を述べるか、「役に立つから」「安いから」「品質が優れているから」などと機能面の理由を挙げる。このような回答が多くなりがちなのは、一つには、深い動機と高次元の概念が複雑で表現しづらいからだ。人間はえてして、言葉にしやすい答えに走ってしまうのである。

これはマーケティングを学び実践していく中でのあるあるだと思っているのですが、「消費者は自分が買っている本当の理由を知らない」と言われています(私自身、実際にそうだと思っています)。

では消費者が口に出す理由はどんな意味があるか?ですが、個人の見解としては「消費者が買う行為を最も正当化できる理由」を口に出していると思っています。安いから、手頃だから、近いから、便利だから、などなど。その回答は半分正解ですが、半分間違っています。なぜならその答えは本質的な(マーケティング用語でいうところの「インサイト」)ものではないからです。

認知神経科学の研究により明らかになっているように、私たちの決断と選択は、潜在意識レベルの感情的・本能的反応によって決まる面が大きいのだ。

インサイトとは上記にある通り、「消費者を感情的・本能的にさせる部分」です。本質的にはどんなことを求めているか?を探すことです。難しいのは消費者にインサイトはなんですか?と聞いても答えてくれない、ということ。なぜなら前述した通り、消費者は自分が買っている本当の理由を知らないからです。

【人間にとって大切な5つの基本的価値】
・喜びを感じさせる(人々が幸せや驚き、無限の可能性を体験する後押しをする)
・結びつくことを助ける(人々がほかの人たちや世界と有意義な形で結びつく能力を高める)
・探究心を刺激する(人々が新しい世界や新しい経験に乗り出すのを助ける)
・誇りをかき立てる(人々が自信や力、安心感、活力を高めることを可能にする)
・社会に影響を及ぼす(現状を揺さぶり、新しいビジネスの枠組みを打ち出すなどして、社会全体に好ましい影響を与える)

では消費者のインサイトを刺激する場合、何を軸にすればいいのか?については上記の5つが適切ではないかと思っています。これらはすべて人が生まれながら本能的に求めている要素であると思うからです。

自分たちのブランドは上記の5つ(のいずれか)を刺激できるものになっているか?刺激できるような設計(体験機会の創出・コミュニケーション戦略の設計など)ができているか?を見直してみるといいかもしれません。


第3章 ブランド理念の木

「不適切な人物を一人雇うだけで、大きなダメージをこうむる。ビジネスを成長させたければ、まずチームの一員としてどういう人物を迎えるかを大切にしなくてはならない。逆に言えば、ビジネスをぶち壊すための最も手っ取り早い方法は、よくない人物を雇い入れること。」

ブランドを形成している大きな要素は人であり、ブランドを体現するのもまた人であると思っています。消費者の手に渡るのはプロダクト・サービスだとしても、それは人の手によってつくられたものであるからです。

だからブランド理念に合わない人が会社・組織にいてしまうと、そのブランド・事業・組織はすぐにうまくいかなくなってしまうと思います。ブランドが目指す場所はどこか、具体的にはどんな仕事を任せたいのか、仕事の評価基準はどこか、を事前にしっかりとすり合わせていきたいと感じました。

「店舗当たりの1週間の売り上げは業績評価の基準にしない」。
代わりに、メソッドはブランド理念に沿って、小売業者とのパートナー関係がどのくらい成功しているかを自社の業績評価の基準にしている。具体的には、小売業者がライバル店とどのくらい差別化できていて、企業イメージをどのくらい改善し、家庭用洗剤・トイレタリー製品の分野全体でどのくらい売り上げを伸ばし、この分野での「利益率を25〜30%」改善できているかどうかを基準にする。

個人的に1番知りたいと思っていた、ブランド理念の体現をどのようにして評価制度に落とし込んでいくのか?ですが、メソッドでは店舗の売上ではなく、小売業者とのパートナー関係がどのくらい成功しているか?を評価基準にしているそうです。

個人的に、売上・利益実績は結果論であり、結果だけで評価するのはフェアではないと思っていて、然るべきプロセスを踏んでいるかどうか?またそのプロセスは結果にどの程度結びついているか?を見ていくことが大切であると考えています。その結果、ブランド理念をどのようにして表現していくか→その表現をした結果(プロセス結果)を業績評価に落とし込む→(結果)業績が上がる・下がる→(振り返り)ブランド理念を表現する行動内容・評価基準を見直す、、、といった流れを踏むイメージです。


第4章 ブランド理念を発見する

どういうときにやる気をかき立てられ、ピザハットで働いていてよかったと思うのかと、社員とフランチャイズ加盟店、加盟店のスタッフに尋ねたところ、同じような回答が非常に多かったのだ。それは、週末にみんなで映画のDVDを見ている家族や、集まってスポーツ中継を見ている友達グループなど、日常のなかのささやかなイベントを親しい仲間と一緒に楽しんでいる人たちのところにピザを宅配したときだったり、忙しいワーキングマザーを夕食づくりから一晩解放できたときだったり、家族や友達グループで来店して食事をしている人たちと触れ合えたときだったりした。

かつてピザデリバリーは「30分で届くこと」を他社優位性として訴求していましたが、どこの会社も30分でピザを届けることができるようになると、価格訴求(ボリュームディスカウント含め)に移行していきました。ブランディングにおいて、機能で優位性を出すことは結果、ブランドの賞味期限を縮める要因になってしまうと考えています。

↑の事例ではピザハットのスタッフの声を借りれば「楽しいひと時をお手伝いしている」「忙しい誰かの手助けをしている」など、人の役に立つ仕事だと実感している瞬間こそが仕事のやりがいであり、ピザハットが本来提供すべきブランド理念の体現である、ということになります。そうなると、ピザ屋だけが競合ではなく、コカ・コーラやレシピサイトなども広義の意味では競合となるのではないかと感じました。

【ブランド理念が社内で力を失っていないかどうかを頻繁に点検する】
・ブランド理念は、ブランドの伝統と組織のDNAに沿っているか?
・ブランド理念は、人々の生活に好ましい影響を及ぼしているか?
・リーダーがブランド理念の推進に積極的に関わっているか?ブランド理念は、社員と顧客を鼓舞できているか?
・ブランド理念は、成長の源泉となる多様なイノベーションを継続的に生み出せているか?

トップが目指したいブランド理念〜具体的な行動とメンバーの浸透度合いを点検するにはいくつかの確認方法があると思っています。社内各セクションの右腕(リーダー的な存在)に聞く、コンサルタントなどの客観性を持った存在を置く、など。では社外ではなく社内に客観性を持たせるにはどうすればいいか?ですが、「Customer is boss」の通り、消費者に評価いただくことが最も大事だと思っています。消費者の意見を鵜呑みにする、ということではなく、消費者はどんな感じ方をしているのか?どのように受け取ったのか?(それはブランド側にとって意図通りなのか)を知ることが必要になってくる、という意味合いです。


第5章 ディスカバリーの「終わりのないビジネス」

【「視聴者に指図するな」という哲学】
・その番組は、視聴者の好奇心を満足させているか?
・その番組は、高い質を満たしているか?
・その番組は、視聴者の感情を揺さぶれるか?
・その番組は、視聴者に新たな疑問を抱かせることができるか?

ディスカバリーチャンネルでは視聴者に指図するな、という言葉があるらしく、それは命令ではなく感じてもらう・抱いてもらう、ことを大切にしているそうです。コンテンツが説教臭くならないよう(受動的にならないよう)、視聴者に能動的に動いてもらうためのコンテンツになっているか、という意味合いだと解釈しました。

プレファレンスを高める、という言い方もできるかと思っていて、プレファレンスを構成する要素は「製品パフォーマンス(クオリティ)」「価格(適正価格)」 「エクイティー(ブランドの持つ資質)」であると言われています。まず大前提としてコンテンツのクオリティが高く、価格が釣り合うものであり、さらに手に入れることで得られるものがある(資質がある)というのはブランディングの観点からも必要なものだと感じました。そしてこの3つがあるブランドは感情(人間の本質的な欲求)に届き、新しい行動変容を起こすトリガーとなる、ということになるんじゃないかと思います。


第6章 企業文化を構築する

リーダーは常に組織内にどのような能力を築くかという点に責任を持たなくてはならない。具体的には、まず自分の理念をはっきりさせ、それに照らして四つの問い(「わが社の未来にとって最も重要な人々のことをどの程度理解できているか?」「わが社とわがブランドは、どのような価値を実践しているのか?」「わが社とわがブランドは、どのような価値を実践したいのか?」「我が社はどのように、これらの問いに対する答えを実際の活動に反映させているのか?」)を自問する

上記の4つの問いを裏返すと、真の消費者理解、真の本質的価値の理解、真の具体的行動の理解、真の評価基準の理解ではないかと思っています。繰り返しになりますが、「消費者を理解し、消費者の価値となるアウトプットを理解し、価値となる具体的な行動を理解し、行動の結果と評価基準(社内・社外ともに)を一致させる」ことこそが求められると思っています。

【企業文化を築く10の手法】
1.人々の行動の背中を押せるブランド理念を掘り起こし、それを実践する。
2.自分がなにを大切にしているかを社内にはっきり伝える。
3.達成したい目標のために組織を設計する。
4.チームを整備する。それも迅速に。
5.あらゆるタイプのイノベーションを後押しする。
6.高い基準を設定する。
7.常にスタッフをトレーニングする。
8.象徴的な活動を行い、人々の興奮を生み出す。

ブランド理念〜行動〜評価のプロセスは理解したとして、ではそれをどのようにして社内文化にして浸透させていくか?というフェーズがとても難しいと思います。ここでは10の手法として取り上げられています。

とてもシンプルな話ですが「自分が実践する」「周りに(うんざりするほど)言い続ける」は大前提として、そこから「具体的な目標に落とし込む」「最適なヒト・モノ・カネを整備する」となり、「新しい発想を生み出せる風土をつくる」「高いオーダーに向かってトレーニングを行う」といった具体的な戦術・ルール決めを行なっていく流れとなるかと思います。とはいえ、まだまだ概念的な話が多いため、次の章ではP&G(パンパース)をリアルケースとし、どのようにしてブランドが生まれ変わったのか?を解釈していきたいと思います。


第7章 パンパースはこうして世界を変えた

「機械がボス」だった時代には女性社員に不親切な企業文化が蔓延っていたが、妊娠中の社員のための専用駐車場や託児施設を設けたり、子どもが生まれた社員にプレゼントを贈ったりするようになったのだ。消費者調査の一環として、毎日のように赤ちゃんと母親をオフィスに招き、社員と交流させることも始めた。オフィスの内装の色彩や装飾品も変わった。赤ちゃんと親にやさしい環境を求めて、オフィスの移転まで行った。

消費者がボスになってから、パンパースは変わったと聞いています。P&Gの社内にも消費者がいるはずで、パンパースではまず社内にいるママ(=消費者)を対象に徹底した変革を行いました。ファンマーケティングの原理原則は「働く人の満足度を高めること」です。

商品・サービスを提供しているのは「人」であるため、人のパフォーマンスによって商品・サービスの評価は大きく変わってくるのではないかと思っています。提供側の働く人に寄り添い、満足度を最大限高めることでまず、「成果を上げる前提条件」を満たしていったと感じました。

ウェブサイトでは、単にパンパースを宣伝するだけではなく、赤ちゃんや子供のケアと発育に関する有益な情報提供を行った。安全な妊婦と出産がその後の母子の健康と赤ちゃんの発育にいかに重要な影響を及ぼすかという情報も載せた。妊娠中の女性向けに、妊娠と分娩の段階別のアドバイスと注意事項を盛り込んだ無料のメールマガジンも発行した。そのメールマガジンを購読した中に、イギリス在住のある初産の妊婦がいた。メールマガジンで早産の自覚症状に関する記述を読んで(それはこの妊婦が初めて知る情報だった)、自分に当てはまる点が多いと感じた。そこで御助成はただちに助けを求め、おかげで母子は必要な応急処置を受けられた。ことなきを得たあと、彼女はパンパースのウェブサイトにお礼の電子メールを送ってきた。パンパースのスタッフはこれに感激し、やる気をかき立てられた。今後も世界中の母親と赤ちゃんの生活を改善するために努力を続けようという思いを新たにできたのだ。

この話も最もいいなぁと思うポイントは、パンパースが消費者に寄り添うコンテンツを提供している、ということだけではなく「消費者がパンパースのウェブサイトにお礼のメールをお送りしていること」

普通、消費者の不を解消したところで、消費者がブランドに対してお礼を伝えることってそうそうないと思うんです。しかし、この消費者はわざわざメールをお送りしている、面倒と思われる行為を能動的に行なっている、そのことがとても素敵だと感じました。それだけ消費者のパンパースへのエンゲージメントが高い証拠だと言えます。

多くの大企業がそうであるように、それまでP&Gは、まったく無関係の部署を2年ごとに移動させていく人事システムを採用していた。しかし、2年では短すぎる。これでは、担当した事業を長期の成長に導き、本人が大きく成長するために際立った成果を残すことは難しい。そのため、社員がなにをやり遂げたかではなく、なにに着手したかを基準に個人評価をおこなうケースが多くなっていた。

これは大手、中小問わずサラリーマンであればよくあるジョブローテーションなのですが、私自身、この仕組みが良いと思ったことは今まで一度もありません。多くは2〜3年で異動となってしまうため、仕事が慣れてきて本腰を入れるぞ、というタイミングで異動となってしまいます。そうして多くの「総合職」という名の器用貧乏を生み出し、明確なジョブディスクリプションを描けない人材を多数生み出してしまう、、という流れになります。

パンパースでは「やり遂げた」ではなく「なにに着手したか」を評価に盛り込んだとしていますが、これは与えられたミッションを遂行するのではなく新しい価値を生み出しているか?をポイントにしているのはとても面白いと思います。日本企業でももっと真似をする必要があると思うし、私自身の仕事でも意識しなければならないなぁと思うポイントです。


第8章 理念を伝達し、共有する

「消費者は、イノセントのことなんて忘れてしまうときもあるだろう。人々が企業やブランドのことを意識的に考える時間なんて、たかがしれている。だからこそ、消費者の役に立ち、おもしろい存在であり、消費者の友達であり続けることが、長い目で見た場合に有効な戦略なのです。お店の棚の前に立ったときや、オンラインショッピングで買い物をしようとしたとき、消費者が選ぶのは親しみのあるブランド。そういうブランドは、新製品も買ってもらいやすい」

ここの章では親しみのあるブランドであることが買ってもらいやすい条件であるとイノセントの事例をもとに書いてあります。SNSでは人気(ひとけ)が大切である、と言われることもありますが、乾いた情報ではなく人柄が滲み出るような発信を行うことでブランドに親近感を感じてもらう、という手法だと読み解きました。

これはブランドだけではなく、「人」にも言えることだと思いますが、「良いギャップ」と「悪いギャップ」があると思っていて、予想外の嬉しい裏切りなら良いギャップなのですが、「(悪い意味で)そんなキャラだとは思わなかった」「(重厚・信頼あるブランドだと思ったのに)ちょっと軽い印象がある」ということもあると思います。客観性を持ちながら自分たちのブランドキャラクターとしてどんな振る舞いをすべきなのか?を考えていきたいと思いました。

企業のあらゆる行動は「メディア」である。企業が行うあらゆる行動が「メディア」である以上、必要とされるのは高度なコミュニケーション能力だ。

企業の行動はメディアである、という考え方はとても共感しました。よく自ブランドはどんなメディアが合っているのか?と議論することがあると思いますが、それ以前に企業そのものがメディアになっている、という考え方です。

メディアには一貫性が求められます。例えば、ホットペッパーはクーポンメディアなのでプレミアムなサービス提供はあまり求められていません。その企業・自ブランドがどんなスタンスを持っているのか?ブランドをメディアとして考えたときに、どんな一貫性を持ち続けたいか?については企業それぞれが考えられるといいなぁと思います。

今後は広告代理店やPR会社向けにコミュニケーション戦略用資料を作成する能力を個人評価の基準に加えると言い渡した。

これも上記の企業・ブランドは1メディアである、という思想に似ていて、代理店やPR会社へのコミュニケーションの取り方も、気をつけなければおかしな伝わり方となってしまいます。メディアから消費者へのコミュニケーションを図るとき、どんな表現方法がいいのか、コンテンツは、クリエイティブはどうか?一貫性はあるか?を理解できる代理店・PR会社を選ぶべきだし、企業側も要件定義をしっかりとできなければならない、ということだと思います。


第9章 理念に沿った顧客体験を提供する

【ネットフリックスの止まらないイノベーション】
この会社のサービスの特徴は、3種類のイノベーションを巧みに組み合わせていることだ。1つは、持続的イノベーション(製品やサービスの日常的・継続的改良を行う)。もう1つは、商業的イノベーション(製品やサービスそのものは変更せず、マーケティングによって新しい需要を生み出す。既存製品の新しい用途や新しい使用局面を提案するなど)。そして3つ目は、破壊的イノベーション(新しいビジネスのジャンルを発明・再発明し、ビジネスモデルを変更する)である。

ネトフリいわく、イノベーションには3つあると定義し、持続的(クオリティ担保のため)なもの、コミュニケーション(売り方を変える)で解決できるもの、そして最後に破壊的(まったく新しい発見)なもの、の3つです。同じ部署ですべてを行うことは不可能だと思っています。それぞれが部署ごとにミッションを掲げ、ゴール・目的に沿って進めていけるといいかな、と思います。

ザッポスは、無条件の返品補償と、購入と返品の際の送料無料制度、そして顧客への電話対応に十分な時間を割く姿勢を原動力に、飛躍的成長を遂げてきた。同社の特徴の1つは、顧客1人あたりの売り上げが非常に大きいこと。この会社の最大のマーケティング上の資産は極めて忠実なリピート客層だが、顧客基盤の規模そのものは比較的小さいのである。しかしそれは裏を返せば、顧客基盤を拡大させる余地がまだ大きいことを意味する。
【ザッポスの10のコアバリュー】
1.サービスを通じて、ワォ!を届けろ。
2.変化を受け入れ、変化を推し進めろ。
3.楽しいことを生み出せ。それと、ちょっとヘンテコなことも。ことも。
4.冒険しろ。創造的であれ。やわらかい頭をもて。
5.成長と学習を追い求めろ。
6.コミュニケーションを通じて、オープンで嘘のない関係を築け。
7.前向きなチームをつくり、家族のような関係をはぐくめ。
8.少ない資源で、多くのことをやり遂げよ。
9.情熱的であれ。強い意志を持て。
10.謙虚であれ。

↑はザッポスを体現するバリューや具体的な行動事例が羅列されていますが、この辺りはスタートアップ・ベンチャーではある種「当たり前基準」として掲げていると思います。私自身がとてもいいマネジメントだな、と思ったのは以下の事例です。

もしスタッフがコアバリューに反することをすれば、その時は上層部が待ったをかける。ただし、「オレは上司で、お前は部下だ。オレのいうことは正しくて、お前のいうことは間違っている」という態度では接しない。次のような態度で臨む。「君の意図は素晴らしいと思う。その精神は間違っていない。私たちが知りたいのは、この行動がどうしてザッポスのコアバリューに合致すると、君が思ったのかという点だ。私たちとしては、それがコアバリューに反していると思っているから」

上司部下の関係ではなく、行動の結果が会社またはブランドのコアバリューに則っているのか?(または間違っているのか?)に照らし合わせて議論ができている、という点です。よく議論にならない・平行線になってしまう話し合いに共通しているのは「前提条件が違う」ということです。解釈が違う、ともいうときもあります。しかしコアバリューがクレドなどの具体的な行動事例として落とし込めているのであれば前提の違い、というのはあり得ないため、行き違いを止めることができます。コアバリューを設定しているか?コアバリューが具体的な行動事例に落とし込めているか?行動事例に則って客観的な評価ができる議論ができているのか?を私自身、振り返って考えてみたいと思います。


第10章 理念に照らしてビジネスと社員を評価する

【ブランド理念の達成度】
1.そのブランドの未来にとって最も重要な顧客や利害関係との関係で、ブランド理念の実現状況を評価する。
2.ブランド理念を基準に、重要業績評価の指標を選ぶ。
3.ブランド理念の推進に貢献することを全社員の職務計画の一部とするよう義務付け、ブランド理念に照らして個人成績を評価する。
4.顧客や消費者と接する時間を測定し、そういう活動を奨励する。

何度も繰り返しとなりますが、ブランド理念は評価制度と紐づいていなければなんの拘束力もないと思っています。なぜなら、スタッフはどんなに良い仕事をしていても社内でそれが評価されなければ(自分が必要だと思ってくれなければ)やりがいを感じられず、その場を離れてしまうからです。だからこそ、ブランド理念に照らし合わせた具体的な行動事例の落とし込みだけではなく、それを評価する仕組みまでを作る必要があると思っています。

トヨタのブランド理念は、ひとことで言えば、一見すると矛盾するように感じられる2つのアイデアを両立させることにある。その2つのアイデアとは、興奮を届けることと、他を寄せ付けない高度な信頼性を提供することだ。
【トヨタが重んじる指標について】
・販売店は夢中になっているか?
・社員は夢中になっているか?
・製品そのものや、販売店での店員とのやり取り、購入後のアフターサービスなどを通じて、顧客の望んでいるものを提供できているか?

トヨタ系販売店をいくつか知っている身として、メーカー側と販売側のギャップが大きいと私自身感じています。理由として現在、車をつくる会社と売る会社が別々になっているから、というのもありますが、それぞれの見えている景色・目指したい姿が一致していないなぁという印象です。

これは携帯販売にも似たようなことが言えるかもしれませんが、販売側が「メーカーが持っている熱意・情熱・理想」といったものをきちんと引き継ぎ、消費者に伝える義務があるのではないかと思います。もしカーディーラーが伝えることができないなら、メーカーが販売店をつくらなければならないし、販売する権限を明文化して、レベルに満たない場合は販売権を剥奪される、という制度を作っても良いかもしれません。

大切なのはなぁなぁにならず、ブランド理念を真摯に届けることができるのか?その気概はあるのか?だと思っています。

ビザのマネージャーたちの個人評価の50%は、どのように人々に接し、どのように企業文化を築き、どのように業務を遂行し、「よりよい暮らしのために、より優れたマネーを」というブランド理念をどのように推進しているかによって決まるのだ。私の経験から言うと、マネージャーの個人評価で、どのように仕事を行っているかという側面に半分の比重を置くのは極めて珍しい。圧倒的多数の企業では、ビジネス上の成果に半分以上比重を置いている。というより、大半の企業はこちらの側面だけを基準に個人評価を行っているのが現状だ。

クレジットカードのVISAのマネージャーへの評価の50%は、部下であるスタッフがブランド理念に沿った具体的行動を取れているか?の評価で決まるそうです。この制度は本当に素敵だと思っています。しかし、もしこの制度を日本企業に当てはめようものなら、パワーマネジメントが横行し「俺の言った通りに従え」といったエラーも出てしまいそうなのですが、、、。

制度だけを整えるのではなく、人・文化をつくっていき、それらを体現するメンターのような存在がブランドに必要ではないのかな、と思います(P&Gでいうところのブランド・マネージャーのような存在)。


【最後に:ジム・ステンゲル氏によるCMO5つの機能・原則】

1.組織におけるマーケティングの役割を明確化し、定義すること。
2.マーケティングWAYを開発し企業内に展開すること。
3.個人的に自らが先頭に立って、みんなをリードしていくこと。
4.ベストパートナー(広告会社等)を選び、一緒に働くこと。
5.将来に向けての準備をすること(マーケティング改革やパイロット組織の創造等)。

本書を通じて一貫したメッセージだと思いますが、「要件定義して戦略立案→具体的な戦術に落とし込む→率先垂範する→外部を含めて信頼できる仲間を増やす→中長期の種まきを行う」のサイクルを回していくことが求められるかと思います。

別の本ですが、私が大好きな小霜和也さんの「恐れながら社長マーケティングの本当の話をします。」の書籍内にCMOの条件について細かく記載されています。

(本文より)CMOも、ちょっとこれに似た匂いがするんです。「4P全部まかせとけ」なんて言える人、どれくらいいるんでしょうか。商品の上市を成功に導くためにはこれだけの能力が求められるはずです。

・市場動向、生活者インサイト動向の洞察力
・STPの戦略立案力
・投資計画、予測P/L策定の財務知識
・商品製造の原価計算、リクープライン(投資回収のタイミング)の知見
・パッケージデザインの知見
・稟議をトップへ通し納得を得るためのプレゼンテーション力
・多部門を率いるマネジメント力
・各部門から協力を引き出すファシリテーション力
・プロモーション全般、コミュニケーション設計、広告表現についての構築力・判断力
・流通支援、店頭での販売促進の知見
・営業との折衝力
・社外パートナーの力を引き出すマネジメント力
・マーケティング施策全体のモニタリング力
・法改正などルール変更への対応力

マーケティングはブランドの理解、ファイナンスへの理解、HR(ヒューマンリソース)への理解、マネジメントへの理解など、さまざま領域のスキルセットが求められますが、自分が成し遂げたいゴールに向かって一貫性を持って取り組んでいけば、道は開けると思っています。

以上、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?