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「#読書の秋2021」ありがとう!!!

note主催の「♯読書の秋2021」感想コンテストで、飲茶著『体験の哲学』(ポプラ社)の書評めいた感想を書いたnote記事が受賞しました。選考して下さったポプラ社の担当者さん、作者の飲茶さん、ありがとうございます!!!


本を読むのは面白い。本について書かれているのを読むのはもっと面白い。何より、課題本が設定されることで、知らなかった書籍との出会いもあり、購買意欲も高まり、執筆意欲もそそられる。出版社にとっても、note執筆者にとっても、なんと「おいしい」企画だろうか。noteに投稿したのが締め切り当日の夜だったが、受賞のような華々しい舞台とは無縁だったので、選んでいただいたことは、大きな自信と励みです。感謝の気持ちで一杯でございます!!。本当にありがとうございます!!

読書会というセレンディピティ

『体験の哲学』を知ったのは、読書普及協会のSさん主催による札幌読書会だった。この読書会は、参加メンバーによるオススメの本を紹介する形式で、一人ひとり紹介する本に対する思い入れや熱意、そして量(5冊も6冊も紹介する人がいる)もハンパでなく、予定時間の2時間以内では終わらないくらいである。コロナ禍になってから、zoomによるオンライン開催に移行し、リアルで会うことがほとんど叶わなくなってしまった。オンラインだと、仕事の都合で東京に異動した参加メンバーでも画面越しで会える嬉しいメリットもある。

過去にはラーメン屋さんを貸し切って読書会を開催したこともあった。

そんな読書会会の常連メンバーであり、HS出版のS専務が紹介していたのが『体験の哲学』である。どんな風に紹介されていたのか忘れてしまったが(汗)、「これは読まなければなるまい」という強烈な感覚が心に残った。読書会は、自分だけでは知り得ない本との出会いがある、セレンディピティの宝庫だ。地元のジュンク堂を訪れた際、人文書コーナーで『体験の哲学』が大量に並んでいるのを目撃した。そんな折にnoteで「♯読書の秋2021」コンテストを知ったのがきっかけで、慌てて『体験の哲学』を購入し、一読して衝撃を受けた。特にこの本の最大の読みどころ(というか、チェックポイント)は巻末にある膨大な体験リスト表である。まだまだ体験することは山積みだ。

「興味ない」を禁句にする

体験の哲学で書かれているように、体験を増やすためにもっとも重視することは、「『興味ない』を禁句にする」である。とくにこの考え方をこれでもかというくらい熱く説いているのが山田玲司『非属の才能』(光文社新書)である。

『体験の哲学』を読んで真っ先に思い出したのは以下に書かれていたことだ。

文学の話になったら「あっ、ボク理系なんで」と言い、ちょっと昔の話題には「時代が違いますよー」と言う。
 一番多いのが、「興味ないんで」というセリフだ。~中略~「興味ない」という壁を作ることで、自分の存在価値を守りたいだけのことだ。
 ただし、「興味ない」の生き方は、楽しみの方も圧倒的に少なくなってしまう。
 たとえば、「サッカーに興味ない」と公言する人がいかに残念な状態にあるか、サッカー好きの人にはよくわかるはずだ。同様に、日本映画に興味ない、沖縄に興味ない、ビートルズに興味ないなんて言う人に「なんてもったいない!」と感じる人はたくさんいることだろう。~中略~
「興味ない」を禁句にして、とりあえず手当たり次第に興味を持ってみる。同じ作家の本ばかりをうっと読むようなことはない。いつも新しい作家を試してみる。自分の好みと異なるジャンルの映画も見てみる。

山田玲司『非續の才能』より

体験を増やそうと試みることは、自ずと人と違うことに手を出すことになっていく。当然、人と群れることから外れて、己の道(それも獣道)を進むことになる。偉大なるリーダーや歴史に残る人物は、おしなべて体験の量も幅も桁外れである。「非属」になるのは必然のことだ。
 なおこの『非属の才能』が、開成中学校(岸田総理の母校!)の国語の入試現代文で出題(2020年度)されたと聞いて、大変納得した。これからの若者に求められるのは、非属の才能を開花させようとする潜在的人材なのだ。

同じメニューからの脱却

ささやかなエピソードだが、二年くらい前に北華飯店という中華料理屋を訪れたときのこと。北華飯店は、札幌市営地下鉄東区役所前駅から徒歩すぐに位置する。ガイドブックやタウン誌に紹介されることは全くないが、知る人ぞ知る極上の町中華店である。この店の存在を教えてくれたKさんと一緒に初めて店の暖簾をくぐった。二人揃ってオススメの回鍋肉定食を注文し、もう一つチャーメンも注文し、二人で分けた。本当にめちゃくちゃおいしく、あっという間に平らげた。以降、他の店の回鍋肉は全く受け付けなくなり、自分の中で中華料理に対する認識が全く変わってしまったほどである。

店を出たあと、Kさんに他のメニューを食べたことがあるか聞いてみた。
「ない。いつも回鍋肉定食か、たまにチャーメンだね」
「他のメニューを試したいと思ったことあります?」
「女子っぽい考え方するね。そういう『冒険』はしないなぁ」

それって女子っぽいのか?という疑問はさておき、中華料理屋のメニューでさえも「定置網」から脱却するという発想さえ持ち得ないものなのだ。行きつけの定食屋であっても、いつもと違うメニューを頼むことも「体験」を増やすことに繋がる。それこそ『世にも奇妙な物語』の名作、玉置浩二主演の「ハイヌーン」のように、メニューを注文しては完食し、また注文して完食して……とすべてのメニューを制覇するくらいの、そんな冒険心が必要になってくる。ただし、この北華飯店の回鍋肉定食はあまりにもおいしすぎるため、ついリピートしてしまうのは致し方ない。リピートの「誘惑」を断ち切るのも大変なエネルギーを要するものだ。

体験は人を介して増えていく

振り返ってみると、読書普及協会のSさんとの出会いも、「作文教室ゆう」で開催された森信三『修身教授録』の読書会(こちらは実際に読み込んでから参加するタイプの読書会である)に参加したことがきっかけであった。「作文教室ゆう」を知ったのは、イベントスペースneccoのイベントで当時存在していたコワーキングカフェ「36」のスタッフMさんが参加しており、「36」に来店を誘われたことがきっかけである。そう考えると、人生はあまりにも複雑なパズルのピースの塊で構成されており、一つでも出会いが欠けると現在の自分は存在しない。

自分ひとりだけで未知の情報を得るのは限界がある。体験を通して人と知り合い、そして人から得たことを通して、新しい体験を増やしていく。これこそが「体験の哲学」を実践する上で、大いなる秘訣なのだ。


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