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緊急事態宣言下での不要不急の外出をSNSで報告する人たち、その心理とは

1.国難においても遊ぶ様子をSNSに投稿する人たち

新型コロナウイルス対策で、日本政府は4月16日に緊急事態宣言の対象を全国に拡大した。個人の外出について、これまでも自粛要請というかたちで縮小されてきたが、今後は一層の強化が求められることになる。そのようななか、友達とプリクラを撮って公開アカウントでインスタグラムに投稿する若年者や、こっそりと趣味の登山やハイキングに赴いたことをフェイスブックのコミュニティに投稿する例が後を絶たない。彼らの心理とはどのようなものなのだろうか。そこで、今回はフェイスブックの「登山 山登り 山歩き トレッキング ハイキング」コミュニティにおいて、彼らの心理を推測するアンケート調査をおこなった。

このアンケートは発起人が選択肢を作成した後に、他の回答者も選択肢を作成・追加することができる。そこでは、興味深い結果が浮かび上がった。

2.自治体やマスメディアの呼びかけと個人の受け止めに見る温度差

下のグラフは、4月16日~4月17日の集計結果である。

当初に設けた選択肢は4つだが、報道に対する個人の受け止め方がより強く表れている「要請は強制力がなく従う必要のないものなので普段通りの行動をしている」及び「感染拡大についての知識不足」をグラフに計上する。

なお、「その他」と回答した人の内訳は次の通り(原文ママ)。

・ルールとかモラルとかを守れないから(39票)
・自己満足の公表(17票)
・あくまで自粛要請だから、カラスの勝手でしょ…(12票)
・所詮SNSですので他人の気持ちはまではわかりません。どう思うかは見る側の気持ちの次第だと思います。みんなが優しくなりますよーに。(8票)
・美しい写真や動画で、ここの皆を勇気づけたいから(但し、自分の行動が誰かの命を奪う可能性は考えたくないor気が付かない)(8票)
・おバカさん(6票)
・散歩はいいというのを登山にまで拡大解釈している(6票)
・その他(5票)
・皆さんの投稿拝見してるだけで登山してる気になれて楽しいです。(2票)
・無知(2票)
・山のグループなので(1票)
・京都(1票)
・このアンケートこそ無意味!人各々の考え方があって良いのでは!?(1票)

今回の緊急事態宣言は、あくまで不要不急の外出を控えるようにお願いされているにとどまり、罰則規定はない。それゆえ、彼らの中では、登山をしてからコミュニティに投稿するまでの一連の流れが「普段通りの行動」として扱われていることが伺える。しかし、強制力がなく従う必要がないものだからと言って、緊急事態宣言が出ている中での不要不急の外出は、反社会的であり超個人主義的との見方もできよう。罰則がないから何をしても自由という解釈は、考え方の根っこの部分では、マスクや紙製品を高額転売していた人々の考え方となんら変わらない。

民主主義国家ゆえに、多様性を尊重することが重んじられる戦後日本社会では、たやすく彼らを非難することはできない。しかし、新型コロナウイルス感染症対策条例を制定した東京都をはじめ、自治体が住民に対し、感染症予防に努めるとともに感染症対策に協力するよう努めなければならないことを責務とした、この点を踏まえたうえで彼らについて言及するならば、彼らは条例違反行為を積極的にSNSで公表していることになる。

彼らの中では、3密を避けていれば遊びに行っても良い、という間違った解釈がされている。この点を強調しないメディアや自治体にも責任はあるが、最終的に損をするのは、その点に気付けずにみずからの社会的評価を下げている彼ら自身なのである。

3.外出先で事故に遭った場合

仮に健康保菌者だったとして、彼らが入山して遭難した場合にはどうなるだろうか。

登山をするには、それぞれの山域を所轄する警察本部の地域課もしくは警察署に登山計画書を提出する必要がある。届出人が遭難した、あるいは近親者から捜索願を出された場合に、この計画書を基に捜索隊が出動することになる。届出人の怪我や容体によっては救急車を手配しなければならないが、医療崩壊が懸念されている今は、急患の受け入れにも手が回らない病院が多く、受け入れ先の取り付けが困難になることも視野に入れたい。

さらには、健康保菌者が山岳救助隊の一人と接触してしまえば、その後に隊員内で一気に感染が広がってしまう恐れがある。マスクや防護具などの医療物資を増産する一方で、感染症患者が爆発的に増えてしまえば、発症者の多くが助からないだろう。そのなかに健康保菌者のあなたがいずれ含まれることも考えてみよう。決して他人事だと思ってはならない。

4.ワンランク上の外出自粛指示は発出可能か

東京都の小池百合子知事は4月2日、新型コロナウイルスの感染拡大で、国が緊急事態宣言を出した場合について、報道陣に「(外出自粛要請から)指示という形になる。国と共に(外出)自粛ということでご協力の意識を高めてもらえば。週末、夜の外出をお控えいただく、ぜひ協力を」と呼びかけた。

しかし、新型コロナ対応の特別措置法では、首相が「緊急事態宣言」を出した後、該当する地域の都道府県知事は外出自粛の「要請」をできると定めるが、外出自粛の「指示」の規定はない。これは、日本人が有する規律性や協調性の強さという国民性、日本社会の力が、反社会的行為を抑え込むことができると判断しているためと思われる。

小池都知事は、都内の感染者数の減少もしくは横ばい傾向が見られなければ、さらに強い措置を講じざるを得ないとしている。その場合は条例の内容がさらに具体化されて、パトロールが強化される旨の規定が盛り込まれるかもしれない。もっとも、強硬策に出なければ、超個人主義者の自由行動に待ったをかけることはできないのかもしれない。


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