乳白色♯1
私は白いものが好きだ。
白いワイピース、白いパンプス、白い鞄。白いものならなんでも買い、お金を注ぎ込んででもなんとしても書いたい衝動に駆られてしまう。
それほど白いものが好きだ。
だが、幼き時に目の前で白い綺麗な毛並みの飼い猫が白いワゴンに轢かれる場面を見てしまった。
戦慄が自分の中で走った。
その時から白いものは儚いものであり、生き物を殺すものであるという概念が私を支配し白が嫌いになった。
それから約十二年間私は白いものを見に纏うことはなくなり見ることさえ嫌になったが今は母の勧めで結婚式場に勤務している。
初期の頃は吐きそうになるくらい仕事が嫌で嫌で仕方がなかったが、今となってはもう慣れたものだ。
「とてもお綺麗でございます。」
思ってもいないこともさらっと口に出せるようになり、人間はいつか死ぬものでありただでさえ脆いものであるのだから白ぐらい着るだろう。
という考えに至ってからは特に仕事に影響することも無くなった。ただ、近頃よく先輩に注意されてしまうことが一つある。
『笑顔の不器用さ』だ。
結婚式といういわば祝いの場で笑顔が不器用になることは相手に対しての信頼度も下がるということだ。
「ここの結婚式場は綺麗ではないのでは」「ここの結婚式場は自分達の想う結婚式をしてくれないのでは」など考えられては商売も上がったりだ。と思いながらもお客様がいない状態ではとても綺麗に笑えているし、チームの女の子に見てもらったが何の問題もないらしい。
先輩の虚言か、それとも見間違えか、それとも…と思いお客様にお越しいただいた際、こそっと近くの窓ガラスに反射している自分を見た。
はっとした。
全く笑えていない。
自分の中では最大限に口角を上げあと少しで八重歯が見えるのではと思えるほど笑っていると感じていたが、実際笑えていないのだから笑えていないのだ。
これで先輩の虚言も見間違えも全て否定され私の表情筋の問題になった。
続く、、、
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