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「かたち」のデザイン〜伝えると伝わる。そして、かたちと情報〜

生物の根幹である「有機的なつながり」は細胞による「物理的なつながり」と「情報的なつながり」の両立によって成り立っていること。

「つながりって何だろう? つながるってどいうことだろう?」

思い浮かぶ範囲での具体的なつながりがあるものの、概念としてのつながりはその具体の範囲には収まらないはず。読書を通じての本の向こう側にいる著者とのふれあいは、自分の枠の外に出る機会をもたらしてくれます。

書籍『生命誌とは何か』のなかで「免疫、がんなどという現象のいずれもが結局は同じシグナルの伝達系につながる」と書かれていました。

この言葉にふれた時に頭に思い浮かんできたのは「伝えると伝わる」という言葉でした。

身振り手振り、文字、声、言葉など。

人は「かたち」の表現を通じて伝えたいこと、想いや情報を届けています。

一方、発信した人の言葉は、必ずしもその人が意図したように受け取られるとはかぎりません。いや、そもそも「全く同じが伝わっていくこと」を期待することに無理があるのかもしれません。

細胞の世界では、物質がシグナルの役割を果たします。ゆえに情報伝達物質と呼ばれるわけです。「物質」は意味よりも確実に情報を伝えてゆく、つまり発信する側と受信する側が等価な情報を伝えあう印象がありますがはたして本当でしょうか。

細胞も一定の確率で複製誤りが起きて、受け取り方が変わってしまう可能性があります。

「かたち」が情報の役割を果たしているのは、「かたち」と「情報」が一意に対応しているからかもしれません。かたちのユニークさ(一意性)が伝えると伝わるをつなぐ大切な要素だということです。

とすると、どのような「かたち」をデザインするのか。伝えると伝わるの間にある違いを可能なかぎり小さくしていこうとする営み、創意工夫。

誰もが「伝えると伝わる」を一致させようと努める土台を耕していくことが大切なのかもしれません。

このように、それぞれの細胞に特定の受容体ができることは、それぞれの細胞が特定の役割をもつことであり、ここに細胞の役割分担、つまり分化が見られるわけです。分化は、細胞間のコミュニケーションとセットで起きています。もちろん、こうして細胞に受けとられた情報は、細胞の中で必要な場所に届けられなければなりません。今回はその詳細は省きますが、ここでのシグナル伝達は、あらゆる生命現象の基本ですから、今盛んに研究されています。そこで興味深いのは、免疫、がんなどという現象のいずれもが結局は同じシグナルの伝達系につながることです。どうも基本は同じようです。

中村桂子『生命誌とは何か』

こうしてみると、私たちの体は"モノ"でできているということを実感します。小さな物質の微妙な構造の違いを巧みに使って、お互いを区別したり、話し合ったりするのですから。私たちはよく、生きものを"モノ"のように扱ってはいけないといいます。その意味はよくわかる一方で、生きものが"モノ"のもつみごとな能力を使っているのだということに驚き、そこに目を向けないと、人工物をどのようにつくるかという基本ができ上がらないと思うのです。化学物質の使い方など、この延長上で考えて生態系にうまく合う系をつくっていく必要があります。

中村桂子『生命誌とは何か』

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