身体感覚と共感〜落ちる感覚と恐怖のつながりを通じて〜
高い場所に登るのが怖い。ジェットコースターやフリーフォールなどの乗り物に乗ることが怖い。高い場所に感じる恐怖の源泉は何なのでしょうか?
その要因の一つは、高いところから「落ちる」という身体感覚。普段は地に足がついて身体が支えられていることによる安心感があるわけですが、落下している時間は支えが外れて自分の身体をコントロールできなくなります。
その「フワッ…」とした身体感覚が記憶され、高い場所に登ることが引き金となって内側から落ちている感覚が蘇ってくる。そのような蘇る身体感覚が落下する可能性のある状況を回避する信号として作用するのではないでしょうか。
実際に、発達研究において、自発的な移動運動の経験が多い幼児ほど高さへの恐怖から視覚的断崖(=崖だと視覚的に認知される場所)を横切ることを恐れることが示されているようです。
少し話は横道に逸れますが、だとすると人間のような生身の肉体、神経系を持たない人工知能が「人間と同様の恐怖の感覚」を持つことはないのかもしれないと思えます。その先にある深い共感も生まれないのかもしれない。
むしろ、人と人との間に生まれ得る「共感」というのは、共通の身体的経験や身体感覚に下支えられているのかもしれませんし、さらに言えば頭(脳)に偏った思考ばかりしていると「他者への共感」が閉ざされてしまうのかもしれないとも思えてきます。
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