人は誰でも矛盾を抱えて生きている。


人は誰でも矛盾を抱えて生きている。
当たり前のことだが、あえて。


最近、アート関係の仕事をしている日本人の知人が、かつてニューヨークで自分以外全員白人の食事会の席にて、目の前に座った初対面の年配の人に最初から最後までまるでいないかのように無視された体験をどこかに書いていた。
その年配の人が、SNSでこの数ヶ月、連日「#Black Lives Matter」をつけて差別反対の投稿をしているということも。
(一回読んだだけなので、詳細はちょっと違っているかも知れないが)


だいぶ昔、まだ若手だった頃、私はある仕事の現場でパワハラを長期に渡って受けた経験がある。あまり面白い内容ではないので詳細は控えるが、その人は周囲に自分が上だとアピールする行動を取ること、それ自体に快感を覚えているように見えた。しかし度が過ぎた。最終的に私は我慢の限界を超えたのか、理不尽に小突かれた時、その直接的な暴力に対して反射的に体が勝手に動き、相手の胸ぐらを掴んで怒鳴っていた。若かったとはいえ、大人で、仕事中にもかかわらず、だ。結局、その私の行動が発端で、他の関係者が次々と彼のパワハラ言動を現場にはいない上に報告し、その人は現場を去ることになった。しかし、最後まで謝罪はなかった。
時々、FBで「友達かも」とその人があがってくることがある。そのニヤついた顔を見るだけで当時の記憶がそのまま蘇り、怒りで体が震える。
その人は、自分の理念として「大切なのは仕事仲間との信頼、友情、そして愛」というような内容を掲げていた。それにイイネがたくさん付いていた。


もちろん、これらはあくまで私(と知人)の主観なのが前提だ。


その白人の無視した人もパワハラした人も、それぞれ本気で「差別反対」「一番大切なのは仕事仲間との信頼と友情と愛」と思っているのだろう。むしろその考えとこちらを傷つけた行動は彼らの中では一致しているのかもしれない。


そしてそれらの行動は、私(と知人)に何らかの原因があるのかもしれないし、これを読んで私のことを「お前がそれを言うか?」と憎しみを持って思う人もいるかもしれない。


私も自分の気づかないところで矛盾した行動を取っているだろうし、誰かを知らない間に傷つけている、かもしれない。


先日の浅井さんの謝罪文を受けて、パワハラを訴えた原告側は「とうてい受け入れられるのものではない」と返答した。

https://www.cinra.net/news/20200622-uplink


私はその浅井さんの謝罪文を読み、アップリンクは良い方に変わるのを確信した、と先日SNSに投稿した。
今でもそう思っている。

私は浅井さん本人を深くはないが知っている。
それを踏まえて、あの謝罪文は本心だし、浅井さんなりの誠意がある行動だと感じた。
(そういう風に受け取る馬鹿が多くて驚いた、甘い、原告が謝罪と捉えてないから謝罪ではない、いつもの外面だけが良いやり方にまんまと騙されておめでたい、仲間でかばいあっている、これだから業界は・・などなどSNSを通してそういった意見も多く見られる。そうかもしれないが、私の受け取り方はあくまで私の経験に基づいたものなので。私は自分と違う意見を否定はしないし、納得すれば数日後には賛同しているかもしれない。ここで私が言っている「謝罪」は、その意を示したファクトのことだ)


他者から暴力的に付けられた心の傷が癒えることはそんなに簡単ではない。
私もいまだにそのパワハラをした人を思い出し、その度に自分の中にある負のエネルギーと対峙するが、それは気分が良いものではない。


浅井さんは、その自分の無自覚な「暴力」がどれだけ深いものか、これから、さらに身を以って知り、省みて、彼らに償っていくだろうし、そうするべきだ。そしてそれはとてつもなく長い過酷な日々になるだろう。
それをこれだけ多くの人を巻き込み、ほぼリアルタイムで知られている。


少なくとも浅井さんはすぐに自分の非を認め謝罪した。
相手にまだその誠意が伝わってないが、その行動は事実だ。
もちろん、謝罪の意が相手に伝わらないと意味がないし、保身のため、この騒動を早く鎮火したいから、かもしれない。
それでも0か1では大きく違うと私は思う(私はパワハラした人から謝罪の意すら伝えられていない。それどころか去り際に悪態をつかれたくらいだ)。


今回のことは、浅井さんを、アップリンクを、映画業界を、それぞれ痛みを伴うが、良い方向へと変えるはずだし、もちろん、パワハラを許してきた世の中全体に広がれば良いと思う。


あらためて原告の方たちの勇気ある行動に敬意を表したい。
彼らの怒りと傷が少しでも癒えることを願っているし応援していこうと思う。


同時にアップリンクのことも当然、引き続き応援していく。


これは特に矛盾はしていないと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?