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空虚の祭り

彷徨(うろつ)く天使のような燦然たる泥棒
秋の日は釣瓶落とし
ああ、鐘の鳴る時間だ

オルフェウスが詩で虎やライオンを手なずけた、と
ホラティウスは語った
黄金時代の話だ
今は錆びついた鉄の時代
詩は何万光年も離れた星のモノローグ

海が落ちてくる
鳥は見えない
空白に星を穿つ
未来と、現在の喧騒の中で
調律されたメロディーはない

恐竜は鳥の仲間なのだという
恐竜は絶滅したが、鳥がそのヴィジョンを受け継いだ
人類はその鳥たちを見て
空に憧れた
恐竜のヴィジョンは人類に引き継がれたのではないか

はだざむい
秋の早朝
そらがはれて
さざなみのような雲がおよいでいる
その雲の名は知らない
ベランダに干した洗濯ものが
早くかわかないだろうか?
あらしはこなくていい
神は路傍の石にすら御眼を注がれている

暑い十月
生温いコーヒー
グラスの夜に入れて
飲みつつ
空虚の祭りを見る
砂上の楼閣に
きみはいう
すべてはうつろう

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