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寒波にせめて暖かくて柔らかい雪の結晶を(雪の結晶ブロックの説明と雪の本の紹介)

十年に一度の寒波凄いですね。
私の住んでいるところでは風が荒ぶってるだけですが、日本海側や北側の地方の方はお気を付けください。

そんな日なので雪の結晶ブロックの説明と作成時に雪の勉強に使用した本の紹介をしていきます。

雪で困ってるんだから空気読めよと言わず、どうせならこの記事を読んでちょっとでいいから雪の楽しさを味わってください。

雪の結晶ブロック

雪の結晶ブロックとは

こちらがその雪の結晶ブロックです。
そのまんま雪の結晶をモチーフにしています。
でも「そのまんまな雪の結晶って?」ということにたどり着く今回の記事です。

細かいサイズはこのようになっています。(ECにて他のブロックと合わせる際の参考にもなるように細かく載せています。)
たまに「こんな詳細に載せて大丈夫?」とお声をいただきますが、実際にはもう1桁細かく寸法を調整しており、真似しようと思えばパーツを購入してスキャンして微調整すれば簡単に真似が出来てしまうので自分の保身よりも安心して購入していただきたいので載せています。
何より特許を取得していますので、「偶然似ていた」「知らなかった」は通用しませんので(笑)

雪解け水ブロック

こちらは連作として作成した雪解け水をモチーフにしたブロックです。

作成したきっかけ

こちらは2017年に石川県の「中谷宇吉郎 雪の科学館」で行われていた「雪のデザイン賞」というデザインコンテストに応募するために作成しました。
このころは普通に売るのは難しいと考えていたためコンテスト用でしか作成していませんでした。

その名の通り雪をモチーフにしたデザイン製品のコンテストで雪というテーマも雪の結晶の形も自分のコンセプトにぴったりだと思い意気込んで応募しました。


雪解けのネックレス
雪解けのネックレス
雪積もりのスヌード
雪積もりのスヌード

この和紙製の「雪解けのネックレス」とフェルト製の「雪積もりのスヌード」の2点を応募しました。
結果は雪積もりのスヌードが入選しました。
正直いうと和紙で雪解けの儚さを表現できている雪解けのネックレスの方が本命だったので正直ちょっと釈然としない気分ではありました(笑)

評価されたポイントとしては、雪のような風合いをフェルトで表現されているにもかかわらず雪とは反して暖かいギャップと、スヌードというアイテムが雪が肩に降り積もっている様子をうまく表現されている点でしたので確かにこっちだなという印象でした。

ネックレスは普段使いも手軽に出来て、わかりやすい雪のモチーフを身に着けることで独特の雰囲気を出すことが出来、素材感も服との馴染みが良いため悪目立ちすることなく印象付けられる便利なアイテムなので今でも販売しています。(宣伝です!)
雪解けのネックレス【和紙】 | MAKOTO IWAKI(マコトイワキ)ECサイト

ちなみにこのころより使用している和紙はコンテストに関連して石川県の和紙を使用しています。
張り感や強度、厚さがちょうどよく、コンテストをきっかけに良い和紙に出会えたので今でも継続して使用しています。

スヌードの方は写真の「2段+3段」の物は特徴的過ぎて一般使いは難しいため「1段+2段」にボリュームダウンした物を販売しています。パーツ数がぐっと減ったのでお手頃にもなってます!
身に着けていると「雪の精だ」とささやかれたり、「そのマフラーなんですか?」と知らない人から声をかけていただけます。
身に着けて画家さんのライブペイントに行ったときは「(良い意味で)ただならぬ人がいるから話してみたかった」と言っていただけました。
「目立つ」とちょっとネガティブな印象がしますが、きちんと「可愛く目立つ」のでお声がけいただく人たちは基本的に肯定的で「可愛くてつい声をかけてしまいました」という方ばかりでした。
雪積もりのスヌード【フェルト】 | MAKOTO IWAKI(マコトイワキ)ECサイト⁤

ブロックの完成まで

いつもの作成するまでの流れは、
「何角形か決める」&「モチーフを決める」→「モチーフについて勉強する」→「デザイン」→「製図」&「試作品作成」→「型作成」→「組み合わせアイテム作成」
という流れで作成しています。
折角なので1つずつ簡単に説明します。

「モチーフを決める」に関しては特に決まりは無いのですが、基本的に自然の物やフラクタル構造のような連続性のあるものをモチーフにすることが多いです。
今回はコンテストですでに「雪」というテーマがあったため、べたに「結晶」と、新たに細長いブロックを作りたかったため連想して雪の積もった木から滴り落ちる「雪解け水」にたどり着きました。

「何角形か決める」は「どういうこと?」という感じかもしれませんが、ブロックは全て構成を分解していくと多角形になります。

左から
雪の結晶ブロック→六角形
打上花火ブロック→四角形
八重桜ブロック→五角形
虫食い葉っぱブロック→六角形
という風になっています。
雪の結晶は分かりやすく六角形ですが、簡単に言うと突起や穴の頂点を結んで出来る形です。
突起・穴の数=多角形の数を思っていただいて大丈夫です。
これでどういった組み合わせが出来るかが決まります。


「モチーフについて勉強する」は私の性格的に「なんとなくこれってそういうものだよね」という感覚では作りたくなく、「自分の印象」「他人の印象」「科学的にそれはどういうものなのか」「モチーフは絵画や文学などでどのようなものとして描かれていたか」ということを調べます。
そうすることで新しい発見が生まれより良いものを作ることが出来ます。
全てにおいて完璧にはしませんが、その時々でどういったことを重要視して作成するかを決めてそれに沿って作成します。

今回の雪に関しては科学的にどういったものかということに重点を置きました。特に雪の結晶は様々な形がありますがきちんと法則があり、ブロックの制約上ついていい嘘の範囲を知る必要があり、嘘をついていながらも雪の結晶でないといけません。
具体的に勉強の際に使った本は下の方で後述していします。

「デザイン」「製図」&「試作品作成」は勉強したことをもとにデザインをして、それを具体的に製図をして試作品を作っていくというそのままの意味です。
デザインは複数個上げた中から一番気に入ったものを選び、試作していきますが大体いつも10パターン以上試作します。
同じデザインでも0.1mm単位で微調整して、どのぐらい引っ張ったら取れてしまうのか、着け外しは大変じゃないかなどの使い勝手やサイズのバランスを調整したり、予想外に形が悪ければ次の候補のデザインで微調整を繰り返しながら制作していきます。

また、製図に関して制約を設けています。機能性や強度の使い勝手の面での制約はもちろんですが、「組み合わせたときに隙間が出来ない」ように組み合わせています。
これはどのブロックも共通です。
下のように簡単に言うと同じブロックを並べても隙間が出来ない形です。

この形にするためにどうしたらいいかというと、多角形の角ではなく辺に突起と穴を作ります。
つまり雪の結晶ブロックでいうと

形だけ見るとこういった六角形と思われますが、これだと角に突起と穴があるため実際の考え方は下図になります。

3本の青い線の真ん中が突起の付け根と穴の位置の中央で、それがブロックから飛び出していない状態です。
これであれば組み合わせても隙間が生まれない六角形の連続した図形を作ることが出来ます。

これらの制約を前提の元、雪の結晶でたしか14パターン、雪解け水で10パターンほど作成したと思います。試作の遍歴を掲載しようと思ったのですがうっかりデータを消してしまっていたようでした。

「型作成」は試作を繰り返して完成した製図データを抜型工場さんに送り作成していただきます。
ここで細かすぎたりして製造上のNGが出たり、コストが掛かりすぎたりすると、工場さんの指示の元またデータづくりをやり直して試作も作り直しです。「通れ!」と祈ります。

「組み合わせアイテム作成」は、出来上がった方で生地をブロックに加工していったら実際に組み合わせてブレスレットやネックレスなどを作っていきます。
デザイン画を描くことはあまりなく、ぼんやりと思い浮かべて作っていくことがほとんどです。
なぜかというと取り合えず組み合わせ始めた方が早いし特性をつかむことが出来るからです。
なので「完成図が思い浮かばなくてどう組み合わせていったらいいかわからなくて組み合わせ始められない」という方がよくいらっしゃいますが、安心してください、私もはじめはそうです!とりあえず組み合わせてみると、合わさったブロックが増えるごとに自然と見えてきます。

正直上記で紹介した雪解けのネックレスと雪積もりのスヌードも「なんかネックレス」「なんかスヌード」が良いからとりあえず作ってみよう!と出来上がったものです。
ネックレスは「とりあえず雪解け水をつなげてチェーンにして、雪の結晶は1つだといまいちだからもう一つ組み合わせてみよう。3つ並ぶと大きすぎるから2つくらいなサイズがいいけど物足りない。重ねて立体的にしてみるか。」という風な具合で出来ていきました。
スヌードも同様に「とりあえず長さ決めるために1列作ってみよう。長さは決まったけどまっすぐ並ぶよりジグザグしてた方がよさそうだな。ボリュームが少ないから1段+2段にしてみよう。まとまりはいいけどコンテストとしてはまとまり過ぎてる気がするから2+3に増やそう。」みたいな感じです。

イベントの時などであればその場でお好みの物をお作りしていただけますが、ネットだといくつ買ったらいいかわからなくて不安かと思いますので、「こんなのを作りたい」というのがありましたら漠然とでもいいのでDMやメールなどでお伝えください。
そうしましたら作るうえでのアドバイスや、大量に買われる場合はサービスなども行える場合があります。
コンセプトに「着て、作って、楽しんで」を掲げているため楽しくない買い物をしていただきたくありませんのでお気軽にご連絡ください。


雪の勉強に使用した本の紹介

では実際に雪の勉強のために使用した本を紹介していきます。

大きく分けて「科学的な雪の本」「雪の結晶集」「雪景色の作品」に分かれています。

科学的な雪の本

まずは応募した雪のデザイン賞の「中谷宇吉郎 雪の科学館」の「中谷宇吉郎」さん著書の本。
中谷宇吉郎さんは物理学者で雪の第一人者として有名な方です。
中谷宇吉郎 - Wikipedia
色々と著書を出されていますが私が所持しているのは2点です。

こちらは中谷宇吉郎さんの雪の研究の経過や結果をわかりやすくまとめたものとなります。
ポケットサイズで読みやすく、中谷宇吉郎さんがどのような人だったかということが分かる本となっています。
科学的に最新の雪の知識を得たい方には適していませんが雪の第一人者について知りたい方にはちょうど良いかと思います。

次の「中谷宇吉郎の森羅万象帖」は中谷宇吉郎さんの雪の研究とその写真が掲載された本でどちらかというとビジュアルメインです。
なので上の「雪」と合わせて見るとそれぞれが保管しあえて良いかと思います。
ビジュアルとしてもきれいでおすすめです。
ただ、やはりこれも雪について具体的に知りたいという方には少し物足りないかもしれません。
また、おしゃれに作りすぎていて読みづらいのがいまいちなところです。
「今買うか?」と問われたらある程度雪の本を買った後に中谷宇吉郎さんに興味があれば買うかと思います。

こちらの「雪の結晶 小さな神秘の世界」は雪の結晶の勉強をしたいと思う方の1冊目におすすめです。
立体的に雪の結晶をとらえて、様々な形の雪の結晶が「なぜその形になるのか?どういう環境だとどういうものが出来るのか?どういうプロセスで形成されるのか?」といったことをわかりやすく詳しく書かれています。
面白いのが形が一部だけ違っている不規則なものも、なぜそうなっているのかがきちんと書かれていて体系的に理解しやすいです。
途中までは一定の規則で作られていたけど環境が途中で変わったりすると規則が乱れて不規則な結晶が出来上がったりするそうです。でもその不規則にもきちんとルールがあったりと面白いです。

「自然界の秘められたデザイン 雪の結晶はなぜ六角形なのか?」は雪だけではなく蜂の巣のハニカム構造や砂漠に出来る規則的な砂模様、貝殻の模様、植物の実り方などの自然界にある不思議な規則性に注目して記された本です。
図解などは少なく、読み物で少し難しい内容なので人を選ぶかもしれません。
ですが、「これにもきちんと理由があったの!?」という面白い発見がたくさんで自然を見る目が変わります。
読み物が苦手では無ければこれをきっかけに興味を膨らませるのにおすすめの一冊です。


雪の結晶集

これからは様々な雪の結晶を記された本を紹介していきます。

様々な種類の雪の結晶を種類ごとに簡単な説明と複数の写真で紹介されています。
正直イメージするようなきれいな形の雪の結晶の形は少ないです。
ですがそれはこの本の良さでもあります。
雪の結晶というのは自然現象が作るもので工芸品ではありません。
「自然の雪の結晶はこんなにも個性があり表情豊かなのか」
ということがわかる魅力的な内容です。
(もちろんそれなりにきれいなものも紹介されています)
上で紹介した「雪の結晶 小さな神秘の世界」と合わせて読むとその不規則性が理解できてより面白いと思います。

「雪の結晶をとりあえずいっぱい見たい!」という方におすすめです。
洋書ですがほとんど写真なので気にしなくて大丈夫です。
というか冒頭に少し文があるだけで解説はほとんどありません。
見ごたえのある雪の結晶の写真が多数掲載されており、雪の結晶ブロックを制作する際に一番参考にした本です。
きちんと知りたい方は1冊目にはおすすめしませんが、何も知らない状態で「雪の結晶ってこんなにいっぱいあるんだ!」と楽しまれるのも良いかもしれません。
雪の結晶の資料が欲しい方にはとりあえず持っておいて損はないかと思います。

写真家の「鈴木理策」さんの作品集の「雪華図」。
雪の結晶をマクロ撮影?で写したもので雪の結晶が織り成す美しい情景がとらえられています。
美しいです。
小さく薄い本ですが鈴木理策さんの作品集としては安いので好きな方はおすすめです。資料性を語るのは野暮ってもんです(=資料性は低いです)。


雪景色の作品

前回の「雪積もりのドレスの解説(雪とロココな18世紀~の服の本の紹介)|MAKOTO IWAKI|note」で紹介した本と一部かぶりますが追加でいくつか紹介します。

まずは前回とおなじもの

雪と氷が作り出す景色がどのような仕組みで出来ているかを科学的に教えてくれる本です。

「こんなこと起きるの!?」と思えるような不思議な景色の仕組みをわかりやすく教えてくれて薄い本ですがとても読みごたえがあります。

写真だけ見ても面白い本で、雪と氷にまつわる現象を知りたい広い年代の方におすすめできます。

写真家「吉村和敏」さんの東北・北海道の町中の日常の風景の雪景色を写した写真集です。

最後に、私の好きな写真家の一人の「鈴木理策」さんの作品集2冊です。

1冊目は名前の通り「熊野」「雪」「桜」3つのテーマで撮影された写真をまとめられた1冊です。
熊野の美しい山、川、神事の風景、静かで幻想的な雪景色、春の朗らかな日差しを感じる暖かな桜。
鈴木理策さんの作品集の中ではお手頃なのでおすすめです。

2冊目の「White」は雪景色のみの写真集です。(これは値段はこんなものです)
Whiteというタイトルにふさわしい、真っ白な雪山の景色で、雪の白とかすかな空の青、雪が降り積もる木々の茶だけで構成された美しい1冊です。

White | 鈴木理策 | Risaku Suzuki | 鈴木理策 | Risaku Suzuki

こちらのページで作品の一部を見ることが出来ます。
製本も鈴木理策さんの作品集独特な製本で、気に入られてお金に余裕がある方であればお勧めしたい1冊です。


そして前回になかった川瀬巴水の作品集。(正直忘れてました。)
明治~昭和に活躍した日本の木版画家で知っている方も多いかと思います。
スティーブ・ジョブズが愛した木版画家としても有名ですね。
吉田博などこのころの木版画が好きで作品集を集めているのですが、雪景色が多いのもこの作家の特徴です。

「名前は知らないけどなんか見たことある」という方もいるかと思います。
当時の町並みの静かな美しさを描かれており、様々な情景の雪景色があるため川瀬巴水好きでなくとも雪景色の資料として使うことが出来ると思います。
この本は10年前の物ですし単に川瀬巴水が好きでもっていたため、川瀬巴水の作品集は他にもあるので雪景色の資料として使う場合は他の方が掲載作品が多かったりするかもしれません。
上記の画像は全てパブリックドメイン(著作権フリー)の物なので本の形で持つ必要が無ければネットで探されても十分出てくると思います。


おわり

以上が雪の結晶ブロック・雪解け水ブロックを作成する際の内容と勉強した本たちです。
もうだいぶ間が空いてしまっているので忘れてしまったところも多いですがおおむねこのような内容です。
もし、紹介した本で、「この本についてもっと知りたい!」というのがあればお気軽にDMなどください。
写真も著作権違反はしたくないのでパブリックドメインの絵画以外の掲載は控えていますが個別であれば一部お見せできると思います。

こういった説明をいままでしてこなかったので、こういった深堀が好きな方もいらっしゃる方思うので楽しんでいただけていたら幸いです。

寒波に気を付けてお過ごしください!


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