小説_『守る。』
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その鮮やかな黄色を放つ、か弱い存在に、ぼくはどうしようもなく立ち尽くした。
やつらは間もなくこの存在を明らかにするだろう。
まるで土の中に埋まっている財宝を探すかのように、力強い勢いで。
そんなことは絶対にさせない。
ぼくはこの存在を守る。
手のひらには汗がにじみ出ている。
そんなことは分かっている。でも守る。
目の前には大きな橋がかかっている。
ぼくはそれを渡ってきた。
その大きな存在は、ぼくに勇気を与えてくれた。
人の気配を感じる。
足音なのか、話声なのか明確に感じ取ることができない。
ただこのか弱い存在はその者たちに狙われていることは分かる。
というか以前から分かっている。だからぼくはここに来た。
持ってきた杖はもう折れてしまっている。
途中で都合よく拾った木の枝に半分の道のりは助けられた。
木の枝だけではない。ここに来るまでに色んな人にも助けられてきた。
宿を借り、食事を与えられ、色んな話を語ってくれた。
その上でこの状況が成り立ってる。
あの事実を知ってから多くの時間が流れた。
いまだに分からないこともある。だからこそのやりがい、面白さもある。
全てが明らかになることをぼくは望んでいない。
迷路は迷うから面白い。
正しい道が分かってしまったら、それはただの作業になる。
そこになんの価値もない。
やつらはもうすぐ此処にやってくる。
ぼくは守る。角に佇む、この美しくか弱い存在を。
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