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消費者心理学とマーケティング

以前、マーケティングに関する学術雑誌について紹介しました。

今回は、マーケティングと隣接する分野でもある、消費者行動論に関して紹介したいと思います。

消費者行動論においても、マーケティングと同様に様々な学術雑誌が発刊されています。

有名な学術雑誌としては、以前の記事でも紹介したJournal of Consumer Research誌をはじめ、Journal of Consumer Psychology誌やPsychology and Marketing誌といった雑誌が挙げられます。

また、日本では、日本消費者行動研究学会が発行している「消費者行動研究」などに、論文が掲載されています。

マーケティングと消費者行動論

消費者行動論とマーケティングは似ているようですが、異なる点も多くあります。

例えば、マーケティング研究においては、企業活動への影響(=実務的なインプリケーション)が必ずと言っていい程記載されています。査読などにおいても、この点を指摘されることもあります。

一方で、消費者行動論に関する学術論文では、必ずしも実務的なインプリケーションが記載されているわけではありません。むしろ、消費者の心理面の理解に対するインプリケーションに、重きが置かれています。

また、分析手法に関しても、違いが見られます。
消費者行動研究においては、アンケートや実験の手法が用いられることが多くあります。一方で、マーケティング研究では消費者行動研究と比較し、多様なデータが用いられる印象です。

だからといって、消費者行動の研究が簡単なわけではなく、むしろ近年ではハードルが高くなっています。特に海外誌において、求められる実験の質や回数が高まっている傾向があり、一つの論文の中で、5つ以上の実験をおこなっている研究も散見されます

何回も実験を実施しようとすると、時間的・金銭的コストが非常に大きいことは想像でき、消費者行動研究は大変そうだな、といつも思います。

消費者行動論の研究

では、消費者行動論の研究には、どのようなものがあるのでしょうか?
個人的に最近読んだ中で面白かった研究を、いくつか紹介しておきます。

●Bellezza, S., Gino, F., & Keinan, A. (2014). The red sneakers effect: Inferring status and competence from signals of nonconformity. Journal of consumer research, 41(1), 35-54.

この論文では、「不適合な行動」をとった際、どのような印象を抱かれるのかを検証しています。不適合な行動とは、ラグジュアリーブランドのブティックで買い物をする際、きちんとした服を着るのではなく、ジムに行くような非常にラフな格好で行くことが例として挙げられます。
この論文では、実は後者(ラフな格好をしている人)の方が、ブティックの店員さんから「ステータスの高い人」と思われることが分かりました。

●Bellezza, S., Paharia, N., & Keinan, A. (2017). Conspicuous consumption of time: When busyness and lack of leisure time become a status symbol. Journal of Consumer Research, 44(1), 118-138.

この研究で検証していることは、「忙しそうな人ほど、優秀に思われるのか?」という問題です。実験の一つでは、SNSに忙しそうな投稿をする人は、レジャーを楽しんでいる投稿をする人に比べて、ステータスが高いと思われやすいという結果が出ました。

今回紹介した研究は、どちらもステータスに関するものになります。
当然ながら、他にも色々な研究があり、マーケティング系の研究とは違った面白さがあるので、ぜひ色々と論文を読んでいただければと思います。

最後に、消費者行動論に関心を持っているものの、「いきなり論文はちょっと・・・」という方向けの本を紹介しておきます。以下の本は非常に分かりやすく、初学者の方にオススメです。
特に学生の方は、春休みの勉強のお供にどうでしょうか?







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