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個室はいいの? (2)

 障がい者の生活支援や個室化について書いていく上で押さえておきたい言葉がある。

脱施設化とは、施設内生活では自立性や社会参加の機会が損なわれやすいことから、地域福祉(地域ケア)を充実させることにより、障害のある人も在宅で生活出来るようにするという考えをいう。

 よく「大規模収容施設からの脱却」とも言われることでもあり、「処遇」という考えを改めるきっかけの一つにもなった言葉です。

 最近では、障がい者の地域生活にも「個室化」は進んできている。障害者総合支援法での「共同生活援助」「施設入所支援」でも導入されてきています。

 介護保険法での認知症対応型共同生活介護との違いで言うと『地域の中で暮らす』こと。高齢者の場合でも言えますが、ますます『地域との関わり』が重要になってきます。 
 住宅地にあるマンション1部屋や一戸建てを借り切ってのシェアハウスみたいなもの、大規模住居(だとしても20名くらいまでのところが多いです)での寮生活みたいなものを想像してみてください。
 また、暮らしている障がい者も様々で、障害者総合支援法のできたばかりでは知的・精神障がいが大半だったが、その後、身体障がい者も追加されています。だから、支援の方法も多岐にわたります。

 僕も、前職の相談員として、利用者の計画を立てていく中での情報収集や面談、それと共同生活援助での宿直の経験を踏まえて思うところを述べたいと思います。

(1)入居者によっての積極性に差が出る。
 共同生活をする中で、料理や掃除などで当番制をしている場合、進んで行なう人、そうでない人が分かれる。やるやらないは支援員の好き嫌いはあるかもしれません。(ちゃんとやっているところを見せたいので)
 また、調子の悪い利用者の代わりに行なおうという優しい人もいるが、時々お節介になるかもしれない。
(2)対人関係に気を遣うことが多い。
 障害の種別関係なく、共同生活をしている場合があるので、多動の知的障害者と周りに敏感な精神障害者が同居していると、スタッフが気を遣うことが多くなる。
 他人と暮らすというか、支援されながら生活するという経験がなかったことでのストレスが溜まったり、同居人と対人関係がうまく築けないと、施設からの脱走ということもありうる。
(3)整理整頓が苦手なことがある。
 元々の生活習慣で片付けが苦手な人や、収集癖のある人は、個室であってもモノを失くすことがある。個室のカギをかけている場合、カギをなくすこともある。ちなみに、部屋の管理は「本人」に任せられていることが多いが、スタッフが関わらないと自分から進んではしないことがある。
 そして、逆にモノに執着がなかったり、同じものばかりで殺風景になることもある。
(4)生活習慣を最初から改める必要が出てくる。
 
自由気ままな生活ではなく、個室だとしても時間を守らないといけなくなる。このことは、一人暮らしをするためにも必要なことだよ、と伝えたとしても本人が改める態度がないと困る。今のままでいいと思っているのかな。

 支援をしていて「本当にこの人は個室でいいんだろうか」と思うことはある。プライバシーの空間であり、なかなか個室に監視カメラみたいなものはつけられない。だけど、施設内では「禁煙」「盗難」はもちろんダメ!でも、手元にあるおこづかいでタバコを買い、居室で吸っている。本人は「吸っていない」と言うこともあるけど、部屋や服などには臭いが染みついている。だから、分かる。
 また、他人に迷惑をかけることがある時には余計に気を遣う。共同住居内だったらスタッフの目が届くことがある。だけど、近隣住民からのクレームや苦情(騒音、大声、徘徊等)が出てきてしまうと対応が地域を巻き込むようになる。地域との関わりだったり、防犯や安全の確保として「出入口の電子錠」をつけていました。僕としては、すべてを管理することはしたくはないのだけど、管理せざるを得ない。

話を戻して

 個室で生活するうえで『利用者が居室を自分の生活空間』だと認識しているかが重要だと感じます。要するに、管理されて病室のようになっていると、本人もそう感じてしまう。また、障害者の場合だと、これまで一人暮らしをして失敗してしてしまった人の再挑戦の場として、ひとり暮らしに不安のある人の一人暮らしへのステップとしてとらえていることが多い。だからこそ、支援員も厳しくしてしまうこともある。
 「一人が嫌だ」と不安を述べることもありますが、「嫌だ」と思う原因が自分の能力に関することだったら、できることを増やして、自信を持ってもらうことで、次に進める。

 「このままずっとここで暮らすんだ・・・」と共同生活を決められているような発言をする人もいるが、なんだかここから出た時の不安も含めた発言のような気もしています。

 何だか「個室」というより「共同生活」に重点を置いてしまった記事になってしまいました。

 補足説明も含めて(3)に続けたいと思います。 

 僕は、以下の参考文献で、生活空間や生活環境を学びました。参考にしてみてください。ただし、厚い本です。


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