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個室はいいの? (1)

 最近の新しい施設では、個室が多くなってきています。

 僕が最初に就職したのは「ユニット型特別養護老人ホーム」。その当時では「ユニットケア」はあまりなかったので、惹かれて就職しました。僕自身が大学で『高齢者の居住環境』について、興味が出ていたのも影響しています。

 まず、このコラムの前提として「『ユニットケア』とは何か」を説明しておいたほうが良いですね。

そもそも「ユニットケア」とは何なのでしょうか。
「ユニットケア」とは、自宅に近い環境の介護施設において、他の入居者や介護スタッフと共同生活をしながら、入居者一人ひとりの個性や生活リズムに応じて暮らしていけるようにサポートする介護手法のことを指します。
 特別養護老人ホームなどの介護施設は、常時入居者を見守りながら必要に応じて介護できる体制をとっています。そのことによって、入居者に対して365日・24時間体制の安心・安全を実現しています。しかし、その一方で、多くの要介護状態の高齢者を介護するという施設の性格上、多くの人を効率的に介護しようとして、「集団ケア」にならざるを得ない面がありました。
 しかし今後は、入居者の尊厳ある生活を保障していくためには、一人ひとりの個性と生活リズムを尊重した「個別ケア」が求められています。「個別ケア」を実現する一つの手法が「ユニットケア」なのです。
 「ユニットケア」の最大の特徴は、入居者個人のプライバシーが守られる「個室」と、他の入居者や介護スタッフと交流するための「居間」(共同生活室)があることです。入居者10人前後を一つの「ユニット」として位置づけ、各ユニットに固定配置された顔なじみの介護スタッフが、入居者の個性や生活リズムを尊重した暮らしをサポートします。
 新たに建設される特別養護老人ホームでは、「ユニットケア」を導入する施設が毎年増えてきていますが、まだ施設全体の3割程度です。しかし、ユニットケアを導入する介護施設は、これからますます増えていくことが予想されています。(一般社団法人日本ユニットケア推進センター HPより)
 ※太字は僕が引きました。

 僕は、脳血管性認知症の方が多く生活するユニットに配属。他にも、アルツハイマー型認知症の方が多いユニット、医療のケアがいる方のユニット、ショートステイなどがある。

 いざ働いてみると、個室の良いところや悪いところか見えてくる。上にも書かれているものではなく、僕自身が感じたところです。

①居室に生活が表れやすい。
 家庭的な雰囲気を大事にしているから、慣れ親しんだ家具を持ち込むことが可能。人によっては、おしゃれなタンスや鏡台を持ち込んでいる。だけど、衣類や洗面用具など最低限の物しか持ってきておらず、タンスは施設からの借り物で、殺風景になることもある。

②部屋の管理
 基本的には、個室であり、本人の部屋だから、やたらとは入ることはできない。きちんとノックしてから入る。本人がいないときでも同じで、本人には一言言ってから入る。
 掃除は、本人がすることもあるが、スタッフが行なうことが多い。ただ、物が多すぎて掃除が大変になることもある。ベッドの下にも物がたっぷりあったり、ゴミが多かったりする。

③鍵の管理
 マスターキーはあるけれど、居室の内側から鍵をかけることが可能。
ということは、部屋の中を覗く小窓があるにしても、部屋で本人が何をしているかは分かりにくいときがある。部屋で倒れているかもしれない。糖尿病があるのに黙ってお菓子を食べているかもしれない(実体験あり)。

④ひきこもり
 他人との関わりが苦手な場合だと、内側から鍵をかけて、居室から出てこないこともある。何か用事があるときは、ドア越しに伝える。
 共同生活室(リビング)でみんながレクリエーションをしている時でも、部屋でテレビを見ている。

⑤ペットはいいの?
 「慣れ親しんだ環境」で「家庭的な雰囲気」となると、自宅とはあまり変わらない方がいいとは思うが、ペットについては別問題。僕が働いていた時では、ペットについては「応相談」とはなっていたけれど、結局、しつけや餌の管理、衛生面でダメということになる。そうなると、ペットは保健所での殺処分か、家族や知り合いでの保護となる。

⑥家族の面会に差がある
 ユニットケアでなくても、面会はある。ただ、時間は決まっておらず、面会に来る頻度では、毎日来る家族も、泊まりに来る家族もいました。
 個室であるから、家族が来た時には他の入居者に気兼ねなく、居室でゆっくり話ができる。

 ★★★

 働いてみると、利用者の生活に合わせていて、利用者やスタッフとのコミュニケーションもこまめにとれていたので、「働きやすかった」というのが感想です。

 「ユニットケア」について、大学時代に参考にしていた書籍を載せておきます。

 今回のコラムは、「高齢者施設での個室」という観点で書きましたが、「障害者施設での個室」という観点でも書きたいので(2)に続きます。
 興味があれば次回も読んでくださいね。

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